"名門野球部で、僕らは声を失った" 第9話
規律違反による脱です。へ編入しても、野連の規定で1は公式戦にできませんし、実君の学代の輩たちの推薦枠にも……響がかねませんよ」
それは、あからさまな脅迫だった。 輩たちのを質に取り、息子のを塞ごうとする組織の論理。 居の空気が凍りつく、襖の奥から野寺が静かに姿を現した。
「部」 野寺の瞳は、のでっていた昨夜とは違い、静まり返ったのように澄んでいた。 「輩の推薦を質にするのはやめてください。俺が辞めるのは、規律違反だからでも、練習についていけなくなったからでもありません」 野寺は卓へみて、自ら用していた退学届を部の目のに叩きつけた。 「をとして扱わない所に、俺のはありません。甲子園にけなくても、プロになれなくてもいい。俺は、俺の命とを、あんたたちに売り渡すつもりはありません」
部は顔を真っ赤にしてちがり、机を蹴るようにして玄関へ向かった。 「悔するぞ、野寺! 度と野球のは踏めんとえ!」 荒々しく閉ざされた玄関の扉の向こうで、の発音が響いた。 嵐がった居で、父親は息子の肩を力く掴み、ただ言、「よう言った」と呟いた。
GL学園を正式に退学した野寺は、休みがけた9から、阪府内の公へと編入した。
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坊主からしずつ髪が伸び、普通のたちが笑いい、放課に喫茶へ寄る姿を、野寺はどこかい世界の来事のように眺めていた。
編入したにも野球部はあった。だが、野連の規定により、転は1、公式戦への資格を剥奪される。 夕暮れのグラウンド。錆びたバックネットの向こうで、い球を追う部員たちの姿を見つめながら、野寺はを踏み入れることができなかった。 (俺の野球は……本当に終わったんやな)
胸にぽっかりと空いた巨な穴。 きる目標を失った虚無に苛まれていたあるの夕方、学のので、見覚えのある柄ながち尽くしていた。
「……実」 声の主は、あの豪の夜に置いてきたはずの同期・倉田だった。 学ランの襟元から覗く首筋には、しい打撲の痕があり、その顔はかつての精悍さを失い、痛々しいほどやつれ果てていた。
駅のさなうどんの奥の席。 倉田は湯気のつうどんをにしながら、箸をつけようとしなかった。 「おが逃げた、獄やったぞ」 倉田が掠れた声で言った。 「野寺の脱の引きをしたやろって、2全員が体育館の裏に集められて、朝までたされた。……俺も、何度も辞めようとった。何回も荷物をまとめて、あのフェンスをび越えようとした」
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「倉田……お、まだあそこに残るんか?」 野寺がを乗りすと、倉田は自嘲するように目を伏せた。
「残るしかないやろ。俺には、野球しかないんや。親父が町を担保に入れてまで、俺の征費や寮費を払ってくれてる。甲子園にて、プロに入って契約を親父に渡すまでは……んでも辞められへんのや」 倉田の目から、粒の涙が落ちて汁のに波紋を作った。 「実が羨ましかったよ。あのを置いて、で逃げせたおが、正直めしかった。……でもな、おが正しかったんやとう。残った俺らは、もうが麻痺してもうて、何が正しくて何が狂ってるのかも分からんようになってる」
倉田は懐から、通の封筒を取りして野寺のに置いた。 「これ、坂井から預かってたや。あいつ、実に帰った、俺にだけ連絡くれたんや。『野寺に会うことがあったら渡してくれ』って」
封筒をくと、あの夜マヨネーズを舐めたことで連された坂井の、力い跡が並んでいた。 『野寺へ。 おが寮をたと聞いた。よくき延びたな。 俺の兄貴は、今、子の活を送りながら、元の野球のコーチをしている。 兄貴が言ってたよ。「野球は、誰かに殴られてやるもんじゃない。子どもが最初にボールを投げたの、あの楽しさを取り戻すためにやるもんだ」
って。 野寺、おの打球の鋭さは本物だった。あの監獄の記憶で、野球そのものを嫌いにならないでくれ。
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