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"両親を亡くした私が旅行から帰ると、実家が消えていた" 第2話

俺はおの実に『んでやる』だけだ。文句を言うなよ」

胸の奥に刺さるものがあったが、病の母をにしないためには、その屈辱な条件を呑むしかなかった。 「……ありがとう。助かるわ」 拳をく握りしめ、爪が掌にい込む痛みに耐えながら、私は絞りすようにお礼を言った。

こうして私と雅也は、私の実で母との同居を始めた。 もともと暮らしていたのは雅也の勤務先が提供する社宅だった。雅也は息子であり、将来は彼の両親と同居する約束になっていたため、これまで持ちを購入する計画はてていなかった。 実への転居により、々3万円ほど引かれていた社宅の賃負担はゼロになり、部の広さも格段に広がった。経済にも環境にも、雅也にとって決して悪い話ではなかったはずだった。

だが、雅也の宣言に偽りはなかった。彼は本当に何つ指本かそうとはしなかった。 仕事から帰れば居でふんぞり返り、母の病状など気にも留めず、酒をあおってはプロ野球の試を見て鳴り声をげた。母が痛みに耐えかねて自でさく呻いていても、気遣う言葉ひとつかけることはなかった。

「美穂、本当にすまないねえ……。雅也さんにも肩の狭いいをさせてしまって。お母さんがこんな体になったばかりに」

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抗がん剤の副作用でやつれた母は、申し訳なさそうに何度も私にをわせた。 「お母さん、そんなこと気にしなくていいのよ。私が緒にいたくてここにいるんだから」 雅也が引っ越し初に放った暴言の数々は、母のには絶対に入れまいとに誓っていた。

同居から半が過ぎた頃、母の容態について医師から抗がん剤の変更を打診された夜のことだった。 帰宅した雅也に夕の姜焼きを配膳しながら、私はすがるようないで相談を持ちかけた。 「ねえ、雅也さん。実はお医者様から、しい薬の選択肢を提示されたの。副作用がしくなるみたいで、どう判断すべきか迷っていて……しだけ話を聞いてくれないかしら」

だが、雅也は箸を止め、忌々しそうに私を睨みつけた。 「あ? そんなこと俺に言われてもるかよ。最初に言っただろ、病には切関しないって。疲れて帰ってきてるのに、病の湿っぽい話なんかすんな。飯がくなる」 「……し相談に乗ってくれるだけでいいのよ。私だって、で抱え込むのは限界があるの」 「るか! 同居してやっただけでもありがたくえ! 俺に甘えるな!」

机を拳で叩いて吐き捨てられた声に、私の喉は完全に凍りついた。 この男にとって、私と母の苦痛はただの「鬱陶しい雑音」でしかないのだ。

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それ以来、私は雅也に母の容態を切話さなくなった。夫婦という名の同居は、完全にえ切ったへと変貌していった。

余命宣告からちょうど1が経過したの初め、母の容態は坂を転がり落ちるように悪化した。 緊急入院からわずか3、識の混濁した母は、私のを々しく握り返したのを最に、眠るように息を引き取った。享71歳。

父のからわずか1余りのに、両親の双方を失ってしまった。 通夜の準備のため、州から駆けつけた兄の雄や、社会として忙な々を送る息子の修夜、娘の彩が駆けつけてくれ、私の痛を涙ながらに支えてくれた。 だが、その輪のに、夫である雅也の居所はなかった。

葬儀の控で、雅也は私の実からで駆けつけた義父の正蔵、義母の敏子とテーブルを囲み、笑いを響かせていた。 「いやあ親父、あそこのゴルフはグリーンの芝が最でさ」 「そうか、今度連れてってくれよ。今はタダ飯がえるとって腹を空かせてきたんだ」 典袋の確認や供の配に追われる私たちのすぐ横で、彼らはまるで居酒にいるかのようにくつろいでいた。

葬儀の式直、遺族席の配置を確認していた私が、親族席の最列に座ろうとする雅也を呼び止めた。 「雅也さん、あなたはこちらよ。

娘婿として遺族席に座ってちょうだい」 すると雅也は、面倒そうにを振って拒絶した。 「嫌だよ、俺はここで分だ。別に血のつながった親戚でもねえんだからさ」

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