みかん小説
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"両親を亡くした私が旅行から帰ると、実家が消えていた" 第4話

「美穂、この1の母さんの病、本当にお疲れ様だったな」 雄は静かに温かいお茶をすすりながら言った。 「俺は州にもあるし、実を継ぐつもりはない。おが最まで母さんの面倒を見てくれたんだ。預貯も産も、全部おが引き取ってくれて構わないんだぞ」

私は首を横に振った。 「いいえ、お兄ちゃん。それはできないわ。私はこれまで父と母からたくさんのをもらったし、介護は娘として当たりのことをしただけ。預貯や価証券は、男であるお兄ちゃんがすべて相続して。その代わり……」 私は窓のの庭を見つめた。 「このとだけを、私に相続させてほしいの。父が入れしていた柿のも、母が好きだった庭のも、全部ここにある。雅也さんとの関係がどうなるかは分からないけれど、このだけは私の名義にして、守り続けたいの」

雄はく頷いた。 「わかった。法な続きは、俺のりいの司法士に頼んで正式にめよう。産の名義変更には母さんのからの戸籍謄本や印鑑証が必だから、類が揃い次第、美穂の単独名義にする形で遺産分割協議を作成する」

その方針が固まった翌、音信通だった雅也が、何事もなかったかのような顔で実に戻ってきた。 には、旅代理の封筒が握られていた。

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「おい、美穂。これ、受け取れよ」 ぶっきらぼうに差しされた封筒をくと、には級温泉旅館の宿泊券と、幹線の特急券が入っていた。 「……これは何?」 「お、この1ろくに休んでねえだろ。母さんの病で疲れた顔してるからな。修夜や彩も誘って、気分転換に温泉でもってこいよ。子どもたちのアパートにも寄って、ゆっくり羽根を伸ばしてくるといい」

信じられないいだった。 26の結婚活で、雅也が自発に旅をプレゼントしてくれたことなど度もなかった。母の葬儀で暴言を吐いたことへの、彼なりの器用な反省と罪滅ぼしなのだろうか。 「……まさか、あなたがこんなことをしてくれるなんて」 私の目からわず涙がこぼれ落ちた。の苦しみが、この枚のチケットでわずかに報われたような錯覚を抱いてしまったのだ。

「いいから、慮すんな。せっかくだから1週くらい、子どもたちのところで泊まり込んで事でも伝ってやれよ。俺の飯なら配いらん。俺もたまには自分の実で羽を伸ばすから、の鍵を閉めてゆっくりってこい」

雅也の笑顔には、これまでに見たことのない奇妙な爽やかさがあった。 私はその提案を疑うこともなく受け入れた。彩と修夜に連絡を取ると、とも「お父さんがそんな気を利かせるなんて変異の触れじゃない?」

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と驚きながらも、私の休養をからんでくれた。

発の、私は作り置きの惣菜を蔵庫に詰め、実の玄関の鍵をしっかりと施錠した。 「ってくるわね。戸締まり、よろしくね」 「ああ、任せとけ。温泉を楽しんでこいよ」 笑顔で見送る雅也の姿に、胸のつかえがしだけ取れたような気がしていた。

子どもたちの暮らしのアパートを訪れ、溜まっていた洗濯や常備菜作りを伝い、そのの温泉宿では、母をくしたしみを子どもたちと語りいながら癒やした。ともに満たされた6泊7の旅程はあっというに過ぎり、私はお産の温泉饅をに、久しぶりのがへと向かうに揺られていた。

これから雅也と、もう度向きってみよう。彼が反省をで示してくれたのだから、私も過のわだかまりを捨てて、しい夫婦の形を模索すべきなのかもしれない——。 そんな淡い期待を胸に抱きながら、私は最寄りのバスをり、懐かしい宅の角を曲がった。

だが、角を曲がった瞬に界にび込んできた景に、私のはアスファルトのに縫い付けられた。

「……え?」

そこにあるはずのものが、なかった。 垣に囲まれた造2階建ての本。父が定退職の退職で根を葺き替え、母が丹精込めて入れしていたサツキの植え込み。

私がまれ育ち、数まで暮らしていたはずのが——。

跡形もなく消え失せていた。

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