"両親を亡くした私が旅行から帰ると、実家が消えていた" 第6話
義母の敏子も血相を変えて傘を放りし、私に詰め寄ってきた。 「そうよ! 美穂さん、私たちを騙そうとしたって無駄よ! あのとだけでも数千万円の価値があるのよ! それに預貯だって数千万円はあるはずでしょ! それを嫁ぎ先にさないなんて、非のすることよ!」
私はややかな線を、醜く喚き散らす義母に向けた。 「嘘じゃありません。父がくなったの保険も、母の預貯も価証券も、すべて州の兄が括して単独相続しました。私は病の対価として遺産を求するつもりは最初からありませんでしたから、遺産分割協議でそのようにしています」
「じゃあ……じゃあ、このとはどうなるんだよ!」 雅也が更を指差して鳴り散らした。 「おがこのにみ続けるって言ったから、俺はわざわざ壊してやったんだぞ! はおのものになるはずだろ!」
「ええ、その予定でした」 私は静かに頷いた。 「兄は方にんでいて管理ができないから、と建物だけは私が相続する方向で話がんでいました。……でもね、雅也さん。産の相続登記は、まだ完していなかったのよ」
「……は?」 雅也の眉が引き攣った。
「母がくなって、まだ1ヶも経っていないのよ? 除籍謄本を取り寄せ、法務局で名義変更を済ませるにはがかかるの。
広告
つまり——」 私は更の央に積みげられた瓦礫を指差した。
「あなたがを入れて勝に々に砕したあの建物は、法にはまだ【くなった私の母の名義】、実質には【兄を含めた法定相続の共財産】だったのよ」
義父の正蔵が、に打たれたように退りした。 解体業に携わっていた経験のある義父なら、その言葉がする法な恐ろしさが瞬で理解できたはずだ。
「の名義の建物を、所者にも、法な相続全員にも無断で、勝にを入れて破壊した……。あなたたちがやったことは、ただの夫婦喧嘩のつ当たりじゃないのよ」 私は歩、雅也へと歩み寄った。
「刑法第260条、建造物損壊罪。の建造物を損壊した者は、5以の懲役に処される。……あなたたち、自分が何を仕かしたのか、本当に分かっているのかしら?」
「ば、馬鹿な……! 俺は夫だぞ! 妻の実を壊して何が犯罪だ!」 雅也が狼狽しながら鳴り返したが、その声は恐怖で刻みに震えていた。
「夫だろうが何だろうが、名義以のが勝に建物を倒壊させれば完全な犯罪です。それに、解体業者に依頼する際、誰が所者の承諾を偽造したの? 解体許の類はどうやって通したの? まさか、母の印鑑を勝に持ちして類を偽造したんじゃないでしょうね?」
義父の正蔵の顔が、気を通り越して真っ青に染まっていった。
広告
の解体業者からを個に借り受け、正規の解体申請を通さずに突貫事で解体したことのボロが、くも音をてて崩れ始めていた。
「とにかく、私にはあなたたちと同居する義務も、差しすもありません。今すぐこの法占拠をやめて、敷からてってください」
徹に言い放ち、私は背を向けた。 「お、おい! 待てよ美穂! どこへくんだ! 話はまだ終わってねえぞ!」 背から追い縋ろうとする雅也の声を無し、私は転がっていた温泉饅の袋を拾いげることすらなく、通りへと歩きした。
向かうべき所は決まっていた。 母のいを踏みにじり、傲な略奪を企てた者たちに、法の鉄槌をすための所——弁護士事務所へと、私のは迷いなくんでいた。
更を背にして駅の通りへ向かった私は、震える指先でスマートフォンを取りし、女の彩に話をかけた。 呼びし音が度鳴って繋がった瞬、私のからこぼれたのは、りと悔しさが入り混じった嗚咽だった。
「お母さん!? どうしたの、何があったの?」 「彩……実が、なくなっちゃったの……。お父さんたちが、勝に全部壊して……更にしちゃったのよ……」
話の向こうで息を呑む気配がした。彩は即座に事態の異常さを察し、「今すぐ私の部に来て。絶対にで抱え込んじゃ駄目」
と力く言ってくれた。 急に揺られて彩のむアパートに転がり込んだ私は、事の顛末をすべて打ちけた。
広告
おすすめ作品
-
完結第14話
1000万円のハワイ旅行を贈ったら、私だけ家族から外されました
亡き夫との夢を叶えるため、息子一家と両家の親が参加するハワイ旅行に一千百二十万円を支払った静江。ところが出発直前、息子の健太から「行くのは妻の両親だけ。もう連絡しないでほしい」と告げられる。六年間続けてきた住宅ローン援助や孫の送迎まで当然のように扱われていた静江は、息子の希望どおり、すべての支援を打ち切った。 息子夫婦がハワイを満喫している間、静江のもとに旅行代理店から精算書が届く。そこには、健太が二か月前から母を旅行者名簿から外し、「重度の認知症と末期癌の疑いがある」と虚偽の申告をしていた記録が残されていた。 さらに義弟からの電話で、健太が静江を判断能力のない高齢者に仕立て、成年後見人として財産管理権を握ろうとしていることが判明する。狙われていたのは、資産価値八千万円の自宅と三千万円の老後資金。しかも計画には、嫁とその父親、虚偽の診断書を作った医療関係者まで関与している疑いがあった。 静江は弁護士と任意後見契約を結び、正常な認知機能を証明する診断書と旅行代理店の通話記録を確保する。そして帰国した息子夫婦を待っていたのは、止められた送金、返送された孫の荷物、そしてホテルのテーブルに並べられた逃げ場のない証拠だった。家族旅行から排除した母が、自分たちの計画をどこまで知っているのか――二人がそれを理解した時、作り上げた“幸せな家族”の姿が崩れ始める。嫁姑|親不孝|親子関係2.2万字5 22 -
完結第17話
夫と実母に裏切られたので、静かに二人との縁を切りました
夫の不倫を知った香織に、実母・静が突きつけたのは慰めではなく、「あなたが離婚すれば丸く収まる」という残酷な言葉だった。母は、自分が暮らすマンションの家賃を今後も払うという夫の約束と引き換えに、娘を切り捨てたのだ。 十七年間信じた夫と、長年支えてきた母。二人の密約を知った香織は、その場で離婚届に判を押し、母とも絶縁する。そして自分名義だった母の部屋を解約し、家族を支えてきた金と信用を静かに引き揚げていく。 ところが七日後、元夫の代理人弁護士から一本の電話が入る。夫は香織の同意を偽り、離婚後も彼女に契約責任を背負わせようとしていたばかりか、亡き父から相続した預金にまで手を伸ばしていたという。 消えた三百万円、不倫相手と設立された会社、そして母がどうしても香織名義の部屋を手放せなかった理由。裏切った二人が守ろうとしていた秘密を調べるうち、香織は、夫と母さえ互いの本当の目的を知らないまま手を組んでいたことに気づく。 娘を犠牲にすれば、すべて丸く収まるはずだった――。しかし香織が契約と通帳を一つずつ整理し始めた瞬間、その歪んだ同盟は内側から崩れ始める。嫁姑|夫婦2.6万字5 324 -
完結第16話
貧乏嫁と見下されていた私、義姉の結婚式で本当の名前を呼ばれました
義姉の結婚式に出席した千鶴は、義母と義妹から「貧乏な内職嫁は一族の恥」と親族写真から外され、式場を追い出されそうになる。六年間、服の縫製で小遣いを稼ぐだけの女だと見下されてきた千鶴は、反論せず静かに控室を去ろうとした。 だが、純白のドレスをまとった花嫁が彼女を呼び止め、その正体を明かした瞬間、義家族の顔色が一変する。千鶴は世界的ブランドの創業者であり、経営難に陥った義父の縫製工場が命運を託す、一億円超の契約を審査する人物だった。初めて彼女の名前を呼んだ義父に、千鶴が下した判断とは――。兄弟姉妹|嫁姑|修羅場2.4万字5 62 -
完結第13話
妹に夫を譲れと言われた結婚式の翌朝
同窓会で再会した幼馴染の秋と結婚したありさ。だが、昔から姉を敵視する妹・百合は「秋は本当は私と両思いだった」と言い張り、父まで巻き込んで二人の結婚を妨害し始める。 そして結婚式の翌朝、百合は突然「秋の子を妊娠した」と告白。父はありさに離婚して夫を妹へ譲れと迫る。ところが妊娠時期を聞いた瞬間、ありさと秋は揃って大爆笑した。その二か月前、秋には百合の主張を根底から覆す、決定的な医療記録が残っていたのだ――。兄弟姉妹|夫婦|真相2.0万字5 107 -
完結第12話
万引きを疑われた私に、警備員が「六万円で見逃す」と言ったので父に電話した
ロンドンから帰国した紗季は、父が経営するショッピングモールを客として訪れた。ところが突然、身に覚えのない万引きを疑われ、警備室へ連行される。鞄から出てきたのは、見たこともないネックレス。さらに警備員は「六万円払えば見逃してやる」と、用意済みの自白書を突きつけてきた。 だが彼らは知らなかった。紗季が次期経営幹部として帰国した、社長の娘であることを。そして父への一本の電話をきっかけに、隠しカメラの映像、消された記録、何十人もの被害者が浮かび上がる。これは警備員の小遣い稼ぎではない。モールそのものを奪うため、会社の中枢で仕組まれた巨大な罠だった――。真実|金銭問題|修羅場2.1万字5 24 -
完結第12話
浄水器の異物から、夫の秘密が暴かれた
八か月前から原因不明の頭痛と吐き気に悩まされている美央。病院を巡っても異常は見つからず、夫・公平と義母・悦子は、仕事を辞めて療養するよう優しく勧めていた。父から相続した自宅と賃貸ビルの管理も夫に任せればいい――二人の気遣いを信じ、美央は自分の心が弱いせいだと思い始めていた。 ところがある日、交換したばかりの浄水器が異常を知らせる。点検に訪れた作業員が内部を開けると、正規のカートリッジは別物とすり替えられ、飲料用ではない物質が詰め込まれていた。さらに玄関の開錠記録と防犯映像から、美央の出張中に工具袋を持った義母が二時間近く家へ入っていたことが判明する。 安全な場所へ避難した途端、八か月続いた症状は急速に消えていった。分析で検出されたのは、長期間摂取すれば臓器に障害を残す危険のある特殊な工業薬品。その入手記録には、妻を心配し続けていたはずの公平の署名が残されていた。 多額の借金を抱えた公平は、美央の判断力を奪い、父の遺したビルを処分するための委任状まで準備していた。しかし押収された端末を調べると、計画は財産だけでは終わっていなかった。生命保険の受取人変更まで相談していた相手は、美央が体調不良について最も信頼し、何度も助けを求めていた人物だった。夫婦|真実|真相|修羅場1.8万字5 126 -
完結第10話
「飯抜き」と言われたので、夫との生活を全部やめました
「俺の命令に従わないなら、今日からお前は飯抜きだ!」 会社を勝手に辞め、半年間も妻の収入で暮らしていた夫・裕介は、義両親の前でそう宣言した。 しかも彼が求めたのは、妻・綾野が仕事を辞め、元気な義父の“介護”を始めること。 食卓に並ぶ料理も、家賃も、夫の税金さえ払っているのは綾野だった。 それでも義両親は「夫に従えない嫁に飯を食う資格はない」と言い放つ。 その夜、綾野は一人で家を出た。 そして生活費の送金を止め、夫の家族カードを凍結し、すべての支払いから自分の名義を外していった。 一か月後、電気も水道も止まった部屋から、裕介の怒鳴り声が届く。 『無職の俺を見捨てる気か! 今すぐ金を振り込め!』 だが綾野は、すでに一冊の調査報告書を手にしていた。 夫が彼女を退職させ、義実家へ閉じ込めようとしたのは、親の介護のためではなかった。 報告書の最初のページに記されていたのは、裕介がどうしても妻に知られたくなかった、ある「金」と「女」の存在だった――。人生逆転|嫁姑|夫婦|介護1.5万字5 221 -
完結第17話
三日待て――命を懸けて起爆盤を粉砕した現場主任、120人を救い500億の黄金を暴く
奥羽鉱業・黒竹事業所で23年無事故を守り抜いてきた発破主任の酒井誠一は、ある朝、巨大な黒蛇の夢と坑道の異様な臭気から「発破を三日待て」と直訴する。しかし、工期短縮と300万円のボーナスに目が眩んだ現場監督・高木は酒井を即刻解任し、発破を強行しようとする。起爆まであと数秒、酒井は職を賭して大ハンマーで起爆装置を叩き壊した。 「狂人」と罵られ資材庫に監禁された酒井だったが、本社保安部長の介入と手帳に残された緻密な記録によって、高木の日報改ざんが白日の下に晒される。そして約束の三日目の朝――全坑内員120名が退避を完了した直後、山は地獄の咆哮とともに大崩落を起こした。九死に一生を得た男たちが崩落断面で目撃したのは、神の導きか、500億円の超高品位金鉱脈だった。職場逆転|因果応報3.2万字5 32