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"万引きを疑われた私に、警備員が「六万円で見逃す」と言ったので父に電話した" 第1話

万円で見逃してやる

「お客様、々よろしいですか」

肩をつかまれたのは、試着をてレジへ向かおうとしただった。振り返ると、紺の制を着た柄な警備員がっている。胸の名札には〈塚〉とあった。

ロンドンから帰国して、まだ目。私は眠気の抜けきらないで、何か落とし物でもしただろうかと考えた。ここは父が経営する郊型ショッピングモール〈グランポート摩〉で、私は翌から運営会社に入る予定だった。ただし、就任はまだ社内にも伏せられている。今は客として売りを歩き、自分の目で現を見ておきたかっただけだ。

「お鞄のを確認させていただけますか」

塚の声は丁寧だったが、指は私の腕をさなかった。周囲では客がを止め、こちらを見ている。女性員がレジの奥で元を押さえ、らしい男が困ったような顔を作ってづいてきた。

「何の確認ですか」

「商品が点、なくなっているんですよ。シルバーのネックレスです」

の佐々は、私の返事を待たずにトートバッグへ線を落とした。ファスナーのない布製のバッグで、財布と帳と折り畳み傘しか入れていない。私は差しす代わりに、バッグを胸元へ引き寄せた。

「疑っているなら、警察を呼んでください。防犯映像も緒に確認しましょう」

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その言葉を聞いた瞬、佐々と塚の目が度だけった。ほんの秒にも満たない線だったが、私にはそれが奇妙に映った。普通なら、側にとって警察も映像も歓迎すべきはずだからだ。

「ごとにする必はありません。こちらへ」

塚は私の腕をく引いた。私は抵抗せず、スマートフォンの側面を度押した。で護のために設定していた録音のショートカットが起し、ポケットのでさく震えた。

売りの裏から従業員通へ連れてかれる、佐々は客たちに「お騒がせして申し訳ありません」とをげていた。まるで私が盗んだことは、すでに決定事項であるかのようだった。

案内されたのは警備ではない。改装の倉庫を転用した、窓も監カメラもない狭い部だった。塚が内側から鍵をかけ、佐々が私の正面に座る。

「では、鞄を」

「令状も同もなしに触らせません。警察を呼んでください」

「往際が悪いな」

塚が机を叩き、佐々はため息をついた。それから、なだめるような顔で私の横へ回り込むと、バッグのポケットへ迷いなくを差し入れた。

てきたのは、さなのネックレスだった。

値札には千百円と印刷されている。私はその商品をに取ってすらいなかった。だが、佐々は驚きもせず、最初からそこにあることをっていたように、それを机の央へ置いた。

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「現物がましたね。警察に渡せば、あなたは現犯です」

「だから呼んでください」

「職にも族にも連絡がきますよ。帰国々、科がついたら困るでしょう」

なぜ帰国したばかりだとっているのか。で員と交わした世話を聞いていたのだろう。佐々は私の顔に浮かんだ疑問を、揺と取り違えたらしい。子へく腰をろし、声を潜めた。

「こちらも鬼ではありません。万円払えば、なかったことにして差しげます」

商品の倍い額だった。しかも示談でも弁償でもなく、領収もさないという。

私は恐怖を見せる代わりに、机ので拳をゆっくりいた。これは勘違いではない。万引き犯を捕まえたの言葉でもない。

「万円を払えば、本当に警察を呼ばないんですね」

確認すると、塚が笑った。

「話がい。みんな最初から素直なら、痛い目を見ずに済むんだよ」

みんな――その言だけで、目ののが私を最初の相にしているのではないと分かった。

そして佐々は、まだ私の名すらかれていない枚の類を、慣れたつきで机に置いた。

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