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"万引きを疑われた私に、警備員が「六万円で見逃す」と言ったので父に電話した" 第10話

臨取締役会

相原は議席の隣に座り、用した資料を配らせていた。父は代表職を辞任しているため、末席に座っている。私は役員ではないが、事件当事者と調査協力者として席を認められた。

「本の議題は、瀬征氏の取締役解任、および私を暫定代表とする事案です」

相原は落ち着いていた。過半数の委任状を確保したという自信があるのだろう。

「当社の信用を回復するには、旧経営陣との決別が必です。残ながら、瀬氏名義の子承認で正処理が続けられていた。監督責任だけでなく、関与そのものも疑わざるを得ません」

「そのに、第者調査委員会の報告を聞いてください」

倉田弁護士がちがった。相原は「議案と関係がない」と遮ったが、取締役のが報告を求め、採決で認められた。

最初に示されたのは、私が閉じ込められたの映像と録音だった。佐々が商品を入れ、塚が現を求し、黒瀬が映像を削除しようとする。次に、過件の縮画像、相談記録、送記録が同じ軸で並べられた。

役員たちの表が変わり始めた。それでも相原は腕を組んだままだった。

「現と黒瀬君の犯罪でしょう。私への報告は通常の損失防止実績としてがってきた。数字が偽装されていたなら、私も被害者です」

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「では、この声を説してください」

藤岡が残した録音が再された。黒瀬は相原まで話が通っていると言い、野は相原が次の社になると話している。

「伝聞にすぎない。私の声は入っていない」

「おっしゃるとおりです」

私はスクリーンを切り替えた。

「ですから、あなた自の記録を用しました」

宮原が保管していた指示には、子印を使う案件の番号と被害者のイニシャルが、相原の跡でかれていた。鑑定はまだ途だが、彼の役員会メモや署名との共通点はだった。さらに、野の会社へ警備契約を集させる代わりに、相原の親族会社へコンサルタント料を払う契約がある。

「偽造だ!」

相原が初めて声を荒らげた。

「宮原が自分の罪を私へなすりつけている。失踪した女の言葉を信じるのか」

「宮原さんは昨夜、警察の保護に入りました。すべて供述しています」

「あの女……」

相原はそこでを止めた。宮原が失踪したとしか公表していないのに、彼は彼女が裏切ったと理解していた。

倉田弁護士が最の資料を配った。駐へを向かわせた野の部と相原の通話履歴、事件直に座へ送する指示、そして解任決議に施設管理部を会社へ譲渡する計画である。

「あなたは会社を守ろうとしていたのではない。混乱させ、価値をげ、切り売りしようとしていた」

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父が静かに言った。

「違う。私はこの会社を効率化しようとした。あんたの古いやり方では、いずれ潰れる」

「客を陥れ、社員を脅し、数字を捏造することを効率化とは呼ばない」

「綺麗事だ。現は数字でしか評価されない。結果さえせば、誰も過程など見ない。あんただって警備費削減を褒めただろう!」

相原の叫びは、父の点を正確に突いていた。父は報告の数字を信じ、成果を評価した。見抜けなかった責任は消えない。

「そのとおりだ」

父は認めた。

「私は数字を見て、を見なかった。だから役職を退き、調査を受けている。だが私の過ちが、おの犯罪を正当化することはない」

会議の扉がき、警察官が入ってきた。相原には任同が求められ、野にはすでに逮捕状が執されたと告げられた。黒瀬、佐々、塚についても、恐未遂や監禁、証拠隠滅への関与を含め捜査がんでいる。

相原はちがらず、私を睨んだ。

「おが来なければ、全部うまくいっていた」

「違います」

私は答えた。

「私でなくても、いつか誰かの声が届いていた。あなたは、その声を消し続けられるとい込んだ」

相原が連れてかれた、解任議案は撤回された。だが父は代表へ戻ることを拒んだ。第者調査の最終報告がるまで、取締役としても議決に加わらないという。

そこで会議が終われば、分かりやすい勝利だっただろう。

だが、相原へ委任状を渡した取締役のが、資料を机へ置いて言った。

「証拠は理解しました。しかし、これを公表すれば当社が組織犯罪を認めることになる。刑事事件は警察に任せ、被害者とは個別に示談するべきではありませんか」

別の取締役も同調した。

「事実を全部公表することが、常に正しいとは限らない。千の雇用を守る責任もある」

相原がっても、隠したいという誘惑は残る。むしろ主犯を追いしたが、今度こそ静かに蓋をしようという空気をんでいた。

「公表の方法は慎に決めます」

私は答えた。

「被害者の氏名や、捜査を妨げる報まです必はありません。でも会社がりながら相談を潰したこと、偽の成果を評価し続けたことは公表します。現の数だけに責任を負わせれば、同じ条件が揃った、別の誰かが同じことをします」

「理論だ。売がさらに落ちたら、あなたは責任を取れるのか」

「取ります。ただし責任を取るとは、辞めて終わることではありません。舗と従業員を守る資計画を作り、回復まで実することです」

私は夜に作った暫定予算を配った。正警備契約の止で浮く費用、役員報酬の返、保険適用の見込み、団とした期融資枠。最悪のでもは雇用と補償を両できる数字を示した。

完全な保証ではない。客が定以に落ちれば、計画は崩れる。それでも「隠さなければ倒産する」という相原の脅しに対し、別の現実なを提示することはできた。

採決の結果、最終報告の公表方針は賛成、反対で承認された。僅差だった。父の名でも、私のりでもなく、被害者の記録と資計画がの判断を変えた。

会議をると、父が廊で待っていた。

「よく通したな」

「ぎりぎりだった。お父さんが会議に残っていたら、反発したもいたとう」

「私がいない方がむこともある、か」

父は寂しそうに笑った。その顔を見て、私は勝つことにも喪失が伴うのだとった。父の潔を証する戦いは、父が以と同じ所へ戻るための戦いではなかった。

役員のが、私に暫定の改革責任者を引き受けてほしいと言った。私はすぐには頷かなかった。

「私が社の娘だからではなく、権限と責任の範囲を文化してください。調査委員会からも監督を受けます。それが条件です」

自分が正しいと信じるほど、監されなければならない。今回の事件が教えたのは、悪を追いせば組織が清くなるという単純な話ではなかった。

会議が終わる直、浦総支配の端末に斉メールが届いた。主テナント社が、契約の見直しを求める共同声をしたのだ。

事件関係者がっても、モールの危は続いていた。

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