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"万引きを疑われた私に、警備員が「六万円で見逃す」と言ったので父に電話した" 第11話

板の代償

改革責任者として最初に席したのは、テナント説会だった。会にはや本部担当者が百以集まり、空気は険しかった。

「御社の問題で客が落ちた。今の賃料を払えないもある」

「部の犯罪を理由に、全舗の監映像を部へ渡すのか」

「補償は結局、管理費の値げで私たちに負担させるつもりでしょう」

どれも当然のだった。私は用した謝罪文を読むのをやめ、つずつ答えた。被害者補償は役員報酬の返と保険、旧警備契約の返還請求で賄い、テナント管理費へ転嫁しない。映像は無制限に公せず、独関の会いで必部分だけを保全する。客減については、定期の賃料減免と販促支援をう。

「それで信用が戻る保証は?」

「ありません」

正直に答えると、会が静かになった。

「以の経営なら、必ず戻ると約束したといます。でも、信用は私たちが宣言して戻るものではありません。皆さんとお客様が、変化を確かめた結果としてしか戻らない。だから期限と数値を公し、達成できなければ責任を取ります」

すべてのテナントが納得したわけではない。社は退を決め、社は契約期を縮した。改革には痛みが伴い、その痛みを「必な犠牲」と呼んでへ押しつけてはいけなかった。

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しい規程では、万引きが疑われてもの警備員だけで客を隔できない。原則として警察へ連絡し、女性客には女性担当者を同席させる。持ち物の確認は本の同か警察の会いを必とし、会話は告のうえ記録される。窓のない旧控は閉鎖し、からも見える面談へ替えた。

さらに、現の数字を「検挙件数」や「損失回収額」だけで評価する制度を廃止した。誤認を防いだ事例、困っている客を支援した事例、相談を適切にげた事例も評価する。委託先との契約は複数部署と部委員が審査し、の役員が決められないようにした。

最も難しかったのは、被害者への謝罪だった。

補償額を決める委員会でも、激しい議論があった。取られた現と交通費だけを返せば法にはりるという見、精神損害を律に算定すべきという見、個別の活被害まで見るべきという見。私は律の最補償を先に支払い、その、希望するには独した仲裁が個別損害を確認する段階方式を提案した。

誰かの苦痛に値段をつける作業は残酷だった。それでも「値段をつけられないから払わない」という逃げ方は、さらに残酷だ。会社は補償と同に、治療費、休業損害、法律相談費用を別枠で負担すると決めた。

警備員の再教育では、現から反発もた。

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「疑わしい客へくられなければ、万引きが増える」

「訴えられるのが怖くて仕事にならない」

私は研修初に、あのの録音を本特定部分を伏せて聞かせた。塚の威圧な声が流れると、内は静まり返った。

「皆さんを犯罪者扱いするための研修ではありません。正しく疑い、正しく確認し、違ったに正しく戻れる続きを作るためです。続きは客だけでなく、警備員自も守ります」

現経験の警備員がを挙げた。

「規程どおりにいてと揉めた、会社は々を守るんですか」

「守ります。や役員の指示より規程を優先したことで利益を受けたら、直接部委員へ通報できます」

「相が社でも?」

「社でも、私でもです」

そこで初めて、研修は会社が体裁をえるための事ではなくなった。警備員たちは実際に困った事例をし始め、舗からの無理な求、数勤務の危険、障害のある客との疎通など、会議では見えなかった問題が次々にがった。

制度はので完成しても、使うが信じなければかない。私は毎度、現の警備員、販売員、清掃員と直接話すを設けた。父の代にも見箱はあったが、回答するのは管理職だけだった。今度は提案者へ必ず処理結果を返し、採用しないも理由を説した。

私は松本奈緒を含むと個別に会った。会社が用した定型文ではなく、確認できた事実と、何を変えるかを説した。許してほしいとは言わなかった。許すかどうかまで、会社が被害者へ求する権利はない。

松本は補償を受け取ったが、モールにはまだ来られないと言った。

「いつか娘とけるようになるかもしれません。でも、そのに特別扱いはしないでください」

「もちろんです」

「社の娘じゃなくても、信じてもらえる所にしてください」

その言葉を、私は執務の机に置いた帳の最初のページへいた。

半、捜査は区切りを迎えた。佐々と塚は複数の恐・恐未遂などで起訴され、黒瀬は証拠隠滅や犯への関与を問われた。相原と野については、正契約と資還流を含む事件として公判が続くことになった。宮原も免責されたわけではなく、自らの改ざんについて責任を負ったが、全面な供述と証拠提は考慮された。

会社は歴代役員を含む監督責任を認め、最終報告を部の固名を除いて公した。父には犯罪関与がないと認定された方、子印管理と成果偏の評価制度を放置した責任が指摘された。

「戻らないの?」

報告がた夜、私は父に尋ねた。

「代表へ、というか」

「うん」

「戻れば、潔を証した物語としては綺麗だろうな」

父はし笑った。

「だが会社は、私がいなくても正しくく仕組みを作らなければならない。創業の善に頼る組織は、創業の盲点まで受け継ぐ」

父は取締役も退き、部から再建を見守るを選んだ。私はその決断を、逃げだとはわなかった。位へ戻ることだけが名誉回復ではない。

しい社には、部から招いた女性経営者が就任した。私は執役員として顧客保護と業務改革を担当することになった。父の娘という事実は消えない。だからこそ、私の決裁にも第者が異議を唱えられる仕組みを入れた。

業以来初めての規模な顧客アンケートを始めた週、相談窓へ通の葉が届いた。

〈警備員さんに助けてもらいました。とは違いました〉

差の欄には、松本奈緒の名があった。

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