みかん小説
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"凍える孫と消えた家" 第2話

その、コートの襟元を掴もうとした音実の「両」が界に入った。

それは、およそ歳の女のとは信じられないものだった。 指の関節という関節が赤黒く腫れがり、の甲全面に皮膚が裂けた無数のあかぎれがり、黄い組織液と血が乾いて固まっていた。 まるで、真の戦でを汲み続けた老兵のようなだった。

私の界が、りで真っ赤に染まった。 が族の血を引く切な孫娘に、あの豚共は体何を施してきたのか。 だが、その背で鳴り響いた音実のスマートフォンの着信音が、事態が単なる「ネグレクト」の範疇を遥かに超えた、の毛もよだつの入りに過ぎないことを告げていた。

自宅の母へ音実を連れ帰り、を焚き、い葛湯をませながら救急往診の配を済ませた、私は震える指で自らのこめかみをく押さえた。 のので、これほどまでに激しい憎悪と、己のを恥じる悔をわったことはなかった。

私のは、京・本郷の古にほどい教員だった。 、都内の国学の法学部で机を並べていたのが、き夫・堀内源郎(げんいちろう)だった。 当、質素な綿のシャツを着て穏やかに微笑んでいた夫が、実は関屈指の旧――戸代から続く主であり、数千町歩の林と商業、元の力やインフラ企業の株主として君臨する「堀内本」

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の総領息子だとったのは、卒業のプロポーズのだった。

『京の華やかな暮らしは捨ててもらうことになる。制度の因習が濃く残るだ。苦労をかけるが、僕の涯を賭けて君を守る』

その言葉を信じて嫁いだこの町で、私は旧の嫁としての徹底な洗礼を受けた。 先代の姑は、言葉遣いから茶の湯、作や親族への接し方、果ては冠婚葬祭の座順ひとつに至るまで、容赦のない規律を私に叩き込んだ。 「京から来た学問好きの物好き」とを叩く本の老たちを見返すため、私は必での歴史と産法規を学び、農改革の記録から林の境界線までに叩き込んだ。

だが、庭の幸福という点において、神は私たちに試練を与えた。 男である貴照を産んだ際、度の妊娠血圧症候群から子宮内染を併発し、私の体は度と子供を産めない状態になってしまったのだ。 跡取りの男子を産んだことで族の面目は保たれたが、義両親や周囲の親族は、っ子となった貴照を「堀内の至宝」として異常なまでに甘やかし、甘受させた。

『貴照ちゃんは何もしなくていい、ただそこに座って、いずれを継げばいいんだ』

夫の源郎はそれに危を覚え、厳しく躾けようとしたが、祖父母が常に防波堤となって貴照を甘やかした。

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元の私から推薦で県内の学へみ、夫のコネクションで県内のインフラ企業へ就職。何自由なく、挫折のをらぬまま育った貴照は、面だけは当たりの良い、だが内面は極度に自己で責任の欠落した男へと育ってしまった。

その貴照が代半ばで結婚したのが、元の品卸の娘だった妻・美さんだった。 控えめで、聡で、何より気配りのできる女性だった。 私を実の母親のように慕い、厳しい旧の作法を素直に学び取ろうとする美さんを、私はからした。 やがて孫の音実がまれた、私たちはようやく堀内の未来がるいに照らされたと信じていたのだ。

しかし、美さんもまた、音実を産したにい膠原病を発症した。 「次の子は無理です」という医師の宣告。 その瞬から、息子の貴照は急速に酷な本性をわにし始めた。

『跡取りの男の子も産めない病気の女に、何の価値があるんだ』

夫の源郎がしても、貴照はどこ吹くで、夜な夜な繁華のキャバクラやラウンジへと入り浸るようになった。 美さんが自宅で、痛む体を引きずりながら音実の育児と事をこなしていた、貴照は女たちので「俺は名の跡取りだ」とをばら撒いていたのだ。

そして、美さんに末期の胃癌が見つかった。

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