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"凍える孫と消えた家" 第5話

杏奈の瞳から、粒の涙がポロポロと畳へ落ちた。 「空港へ向かうので、母が私の元で囁いたんです。『プーケットに着いたら、夜は貴照さんときりにしてあげるから。あんたももう歳なんだから、の女として旦様を満させなさい。そうすれば、あんたの学の学費も、卒業のマンションも、全部あのが買ってくれるんだから』って……!」

「お、実の母親が……娘を、差ししたというの……!?」 私の喉から、引き裂かれるような掠れ声が漏れた。

「母は……貴照を繋ぎ止めるための『御供』として、私をプーケットへ連れてく気だったんです! 貴照が私に飽きるまで抱かせれば、堀内の莫な遺産が確実に母のものになると信じ切っていたから!」

杏奈は成田空港の第ターミナルで、搭乗続きの直、パスポートに挟まれたチケットの束を握りしめ、荷物検査の蛇の列の隙を縫って全速力で逃したのだという。 よしえの狂う声と、貴照の「待ちやがれ!」という号を背に受けながら、ターミナルビルの女子トイレの個に閉じこもり、が搭乗へ向かわざるを得なくなる発刻のギリギリまで息を潜めていた。

「のドアが閉まるを確認して、すぐに奥様に話しました。……音実ちゃんが、あの極寒の庭に閉めされていることをっていたから! 私が逃げせば、あの男たちが逆して、音実ちゃんに何をするか分からなかったから……!!」

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壮絶な脱劇。 自らの尊厳と、義理の妹の命を守るため、歳の女が決の覚悟で仕掛けた命がけの賭け。 私は震えるで、座卓ののい湯呑みを取りげた。 だが、その湯呑みを持つ私のは、りのあまり激しくガタガタと音をてていた。

そして、杏奈がおずおずと顔をげ、鞄の奥底から「ある通の古びた茶封筒」を引きした瞬――。 私の息の根は、完全に止められた。

「……奥様。これを見てください。あの男たちの部の庫から、逃げす直に抜き取ってきたものです」

その封筒の表きと、から滑りしてきた枚の契約を目にした瞬、私の界は真っ暗になり、全の血の気が瞬で引き絞られた。

そこには、堀内の破滅を決定づける、おぞましい「裏切り」の全貌が記されていたのだ――。

茶封筒から滑りてきたのは、国内数の命保険会社の契約証のコピーだった。

契約:半。 被保険者:

堀内音実

。 保険受取:

堀内貴照

。 保険額:

億千万円

。

特約事項の欄には、赤いボールペンで太い線が引かれていた。 『慮の事故、災害、ならびに保護者の故によらない自然・凍・急の、保険額を倍額とする』。

「……っ!?」 私はにした類を取り落としそうになった。臓が鐘のように激しく脈打ち、喉の奥がカラカラに渇き果てる。

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歳の学に、億千万円の巨額な命保険。 しかも受取は父親である貴照。 さらに同封されていたのは、元の消費者融やヤミ融とおぼしき社からの督促状の束だった。 貴照の借入総額――千百万円。使途は、級、豪遊、そしてよしえに貢ぎ続けた宝とブランド品の。

「……あいつらは、最初からそのつもりだったのね」

私の呟きに、杏奈が青ざめた顔で力く頷いた。 「はい。昨夜、がリビングで酒をみながら話しているのを聞いてしまいました。『プーケットから帰ってきた、もし音実が庭で凍えてんでいたらどうする?』って母が聞いたら、貴照は笑って答えたんです。『事故だよ。勝にへて鍵をかけ違えた娘の過失だ。警察も名の跡取りの庭を詮索しやしねえよ。保険が入れば借はチャラ、母さんの遺産が入るまでの最の遣い稼ぎだ』って……!」

悪魔だ。 が腹からまれた男は、もはやとしての形を保った悪魔へと成りがっていたのだ。 病気の先妻を見殺しにし、再婚相の連れ子を毒にかけようとし、果ては自らの実の娘を真の庭に閉めして凍させ、巨額の保険をに入れようとしていた。

「奥様……警察へきますか? でも、あの男は『証拠がない、鍵は娘が自分で落としたんだ』と言い逃れするはずです……!」

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