"妹に夫を譲れと言われた結婚式の翌朝" 第7話
「ギャハハハハハハ! 嘘でしょアキちゃん! そんなとこ刺されたの!? あっはっはっは!」
母はテーブルをバンバンと叩きながら涙を流して笑い転げた。百は顔を引きつらせ、父は「ば、馬鹿者! そんなふざけたホラ話があるか! ズボンを履いているのにどうやってそんな所を刺されるんだ!」と狼狽しながら鳴り返した。
「ホラ話なもんか! 本当なんですって!」
は羞恥のあまり全から湯気をてながら、必の形相で弁を叫んだ。
「あのは度を超える猛暑だったんです! アパートの階で、周囲にい建物もないし、から見えないのをいいことに、呂がりに糸まとわぬまれたままの姿で、扇のでの字になって涼んでたんですよ! そしたら、網戸の数ミリの隙から『ブゥゥゥン』って巨なアシナガバチが侵入してきて!」
の振り振りを交えた必の再現に、母の笑いはもはや過呼吸の域に達していた。
「パニックになってで払おうとしたら、軌を変えた蜂がダイレクトにそこに突っ込んできて……チクッと激痛がったとったら、がついたように燃えがって! みるみるうちに見たこともないサイズに腫れがったんです!」
「救急呼んだんですよ、この」
私が静に事実を補すると、母はを転がり回った。
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「夜のに私のスマホに話がかかってきてね。『ありさ……俺はもう男として終わった。世界は俺の敵だ……さようなら……』って、涙声で遺言みたいなうわ言を呟いてるの。慌ててアパートに駆けつけたら、股に氷嚢を当てて目を剥いて倒れてて、そのまま救急搬送されたんだから!」
「ねえ、百ちゃん! 像してみてくれよ!」
が目を血らせて百に詰め寄った。
「事な急所を蜂に刺されて、激痛とで週点滴打たれて、まともに歩くことも排尿することもできず、ベッドので悶絶してた男がさあ! どうやっておとホテルにって子作り励むんだよ!? もしそんな状態で女抱ける奴がいたら、そいつはじゃなくて狂気のサイボーグだろ! なんなら今すぐ、病院の泌尿器科の救急カルテと診断、見せてやろうか!?」
完璧すぎる、そしてあまりにもけなすぎるアリバイの示。
ダイニングに、完全な沈黙が落ちた。
百の顔からは、完全に血の気が引いていた。ガタガタと膝が震え、唇を噛み締めながらずさりする。
そして、そのにいた誰もが息を呑んだのは、父の表の劇な変化だった。
りに燃え盛っていた父の顔が、の々しすぎる体験談を聞くうちに、みるみるうちに青ざめ——やがて、自らの股あたりを無識に両でそっと覆いながら、いため息をついたのだ。
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男にしか理解できない、像を絶する激痛への共。
父の瞳から、に対する敵と殺気が完全に消えっていた。そこにあったのは、凄惨な試練をき延びた同胞を見つめるような、まるで『菩薩』のように慈く、痛ましい差しだった。
「……君。すまなかった」
父の声は、震えていた。
「男として……その、本当に変だったな。……病院のカルテを見るまでもない。男が、これほど恥ずかしい嘘をつけるはずがない」
奇妙極まりない男同士の連帯が、居のダイニングで結ばれた瞬だった。
居のダイニングの空気は、百にとって逃げのない檻と化していた。
「だ、だからって……!」
百は壁に背を押し当て、引きつった笑みを浮かべながら震える声で叫んだ。
「証拠になんてならないわよ! 期が、その……ヶじゃなくて、ヶ半だったかもしれないじゃない! 記憶違いよ! アキちゃんが私の体を弄んで、妊娠させた事実に変わりはないわ!」
その往際の悪さに、私はややかな軽蔑を隠すことなく歩踏みした。
「百、いい加減にしなさい。期をずらせば辻褄がうとでもっているの? そのヶ半は、の会社の棚卸しと決算期で、週ぶっ通しで夜残業だったわよ。毎晩終で帰ってきて、私ので倒れ込むように寝てたわ。体いつ、あなたと逢瀬を楽しむ隙があったっていうの?」
「そ、それは……!」
言葉に詰まり、線をあちこちへ泳がせる妹。
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