みかん小説
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"月給55万円を削られた古参社員の静かな逆転" 第1話

磨き抜かれた理のに、革靴の乾いた音が吉に響いていた。 株式会社鈴の最階。なマホガニーの扉を押しけた瞬、佐藤修(さとう おさむ・歳)の腔を突いたのは、価なルームフレグランスの甘ったるい匂いだった。創業期から染み付いていたはずの、とインク、そして社員たちの汗の匂いは、フロアの全面改装とともに完全に消えっていた。

「ああ、佐藤さん。そこに座りたまえ」

部の央、イタリア製の黒革ソファにくを沈めた代目社、鈴健(すずき けんいち)が、元の万を弄びながら線だけを向けた。先代である父・鈴宗助がのに病で急逝してから、この男がトップにって。代半ばの若さでに入れた絶な権力は、仕ての良い級スーツを着崩したその尊な態度によく表れていた。

「改まって呼びしとは、何の話でしょうか。来週にはグループとの半期契約の更を控えておりますが」

佐藤がったまま尋ねると、鈴社の斜めろに控えていた若い男が、クスクスと喉を鳴らして笑った。田俊介(たなか しゅんすけ・歳)。先、社の肝煎りで営業推チームのリーダーに抜擢された男だ。実務の実績はお世辞にもいとは言えなかったが、鈴社の私なみ会やゴルフの段取りを取り仕切る腕にかけては社内で群を抜いていた。

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「佐藤さん、話はに済ませましょう」

鈴社はコーヒーカップにをつけ、まるでの気の話でもするかのような平坦な調で言い放った。

「来から、あなたのを万円減額することに決定しました」

静まり返った社に、計の秒針の音だけがカチカチと響いた。 佐藤の現の基本は、の勤続当と営業統括部としての役職をわせて額およそ万円。そこから万円を差し引けば、元に残るのは万円程度。各種保険や税を引かれれば、入社員の初任を遥かに回る額だった。都内の分譲マンションのローンこそ完済していたものの、夫婦の活を根底から揺るがす数字であることはだった。

「……万円の減額、ですか」

佐藤は表を変えず、静かに反問した。その落ち着き払った声が気にわなかったのか、田がわざとらしくへ歩みた。

「ええ、そうですよ佐藤さん。ご自の齢を考えてみてください。今でもう歳でしょう? ここ数、あなたの部署から目った規拓案件が件でもがりましたか? ただ毎、先代の遺産である既顧客のところへお茶をみにっているだけじゃないですか」

田は笑いを浮かべ、元のタブレット端末を指先で叩いた。

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「今の会社の業績を圧迫している最の因は、佐藤さんのような取りのロートル社員なんです。現の負担を減らすためにも、を引いていただくのが筋というものですよ」

佐藤は田の言葉を静かに受け止めながら、社の隅に飾られた枚の額縁に線をらせた。 そこには、先代社が毛で力く認めた社——『信義誠実・顧客第』の文字があった。、佐藤が学を卒業してび込んだのは、神田の暗い雑居ビルのだった。話台とパイプ子、それに敷きっぱなしの段ボールがベッド代わりだった。先代と共にをすするいで顧客の元へをげにき、朝から晩までび込み営業を繰り返した。佐藤が血のにじむようないで繋ぎ止めてきた信頼の台があったからこそ、現の自社ビルがしているのだ。

だが、代目の鈴社にとって、そうした創業の歴史は「代の遺物」に過ぎないようだった。

「田君を見習ってくださいよ」鈴社がを挟む。「彼は先、最の顧客管理システムを導入して、業務プロセスを劇にスマートにしてくれた。これからの代に必なのは、柔なデータ戦略とスピードなんです。佐藤さんのような古いやり方に固執して、無駄な残業を繰り返すだけのは、もう第線にはらないんですよ」

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