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"月給55万円を削られた古参社員の静かな逆転" 第3話

「佐藤さんの抱えていた案件なんて、僕がしいシステムに移してしまえばで片付きます! むしろ古いやり方を掃できる絶好のチャンスですよ!」

「だそうだ。になって泣きついてきても絶対に再雇用などしないからな! 悔するのは君のほうだ!」

吐き捨てられる罵声を背に受けながら、佐藤は丁寧に腰を折って礼した。

「、変お世話になりました。任への引き継ぎデータは、所定の共フォルダに残してございます。それでは失礼いたします」

度も振り返ることなく、佐藤は社を退した。 い扉が閉まった瞬、背から類がに投げつけられる鈍い音が聞こえたが、もはや佐藤のを波たせるものは何もなかった。

自席に戻ると、フロアの空気は異様なざわめきに包まれていた。役員フロアから漏れ聞こえてきた声に、若社員たちが何事かと巻きに佐藤のデスクを窺っている。佐藤は誰とも目をわせず、引きしのから私物を際よく取りし始めた。

勤めげたデスクから持ち帰るものなど、驚くほどなかった。スーパーの段ボール箱つ。 文具、妻の写真が入ったさな写真て、そして使い古された黒革の帳が冊。

帳の頁をめくると、褪せたインクでびっしりとき込まれた文字が目にび込んでくる。

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グループの会が好む産の菓子の定休、先代社が病で遺した言葉、トラブルを抱えた請け企業の担当者の庭事……。

「効率化、か」

佐藤はさく呟き、帳を胸ポケットに収めた。 キーボードを叩いてに入るデータなど、商売の表面をなぞっているに過ぎない。ととのに流れる目に見えない義理とを捨てった組織が、この先どこへ向かうのか。

夕が迫るオフィスを、佐藤は静かににした。誰にも見送られることのない、目の退だった。

さな段ボール箱を抱え、佐藤は静まり返ったエレベーターホールのにった。 りボタンを押し、フロア表示のデジタル数字が減っていくのをじっと見つめる。、毎のように昇りりしたこの所も、今を境にもう度とを踏み入れることはない。

ピン、という無質な子音とともに、ステンレスの扉がにいた。

「おや、佐藤さん。まだそんな子供じみたパフォーマンスを続けていたんですか」

エレベーターのにっていたのは、級なキャメルのウールコートを羽織り、革の袋をはめた鈴社だった。には座の会員制クラブのロゴが入った袋が提げられている。定をし過ぎたばかりだというのに、くも夜のへと繰りす算段のようだった。

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鈴社は佐藤が抱えている粗末な段ボール箱を瞥すると、馬鹿にしたようにで笑った。

「荷物をまとめて同を買うつもりかね? を張るのはやめなさい。あの万円の減額はね、気な古株連に対する単なる『見せしめ』ですよ」

エレベーターの「」ボタンを押したまま、社は尊に語りかけてくる。

「創業功労者気取りのあなたが減を受け入れれば、の配社員たちもしく私の改革に従う。ただの組織マネジメントの環だ。それを本気にして退職届をすなんて、を過ぎたのすることじゃない」

「……見せしめ、ですか」

「そうですよ。どうです、今ここでをげて、から田の部として従順に働くと誓うなら、減額幅を万円にまけてあげてもいい。私なりの温ですよ。悪い話じゃないでしょう?」

鈴社は、まるで飢えた野良犬にパンのを恵んでやるかのような目をしていた。佐藤がこの会社にしがみつかなければ、からの活すら成りたない無力な老だと完全にい込んでいるのだ。

佐藤はエレベーターに乗り込もうとせず、ホールの央に毅然としてち尽くした。

「温、ですか。素らしい経営腕ですね。ですが、お気遣いは無用です」

佐藤のややかな返答に、社の得げな笑みがぴくりと引きつった。

「……がるのもいい加減にしたまえ。代半ばの潰しの利かない営業マンを、この況で誰が雇うというんだ? に迷って惨めな老を送ることになるぞ」

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