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"兄の結婚式に、実の妹の席だけありませんでした" 第8話

それどころか……両の顔わせの席で、父が幸介さんに『ご兄弟はいらっしゃるのですか』と尋ねたのことです。幸介さんが何か答えようとした瞬、お義母様が遮るようにを挟んできたんです」

ゆかさんは、あのの景をい返すように眉をひそめた。

「『の娘は昔からし神経質で、々と事がありまして……親族のお集まりなどにはられない子なんです』って。お義母様はひどく困ったような、恥ずかしそうな顔を作ってそうおっしゃいました。私の両親は、理さんがい持病か何かを抱えていて、にられない事があるのだと察して、それ以触れるのを慮したんです」

たい刃物で臓を抉られたような覚だった。

母は、ゆかさんの実が気にするから私をしたのではない。最初から、自分自の虚栄のために、ゆかさんの実という「架空の審判者」を仕てげ、私を「隠すべき病」に仕てげていたのだ。

「それだけではありません」ゆかさんは唇をく噛み締めた。「幸介さんは、式の直、私にこう言ったんです。『理は以からどうしてもきたい旅の予約を入れていて、程がなって式には来られない』と」

の奥で、何かが音をてて砕け散った。

兄は、母の共謀者であっただけでなく、妻に対してまで別の卑劣な嘘をねていたのだ。

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「妹が自らの志で旅を選び、結婚式を蹴った」という偽りの筋きを仕てげ、妻の目を欺いていた。

「披宴の親族写真のデータが届いて、理さんの姿がないのを審にった私が問い詰めて……昨夜、ようやく幸介さんが状したんです。旅の嘘も、お義母様と結託して理さんを最初から招待していなかったことも」

ゆかさんはちがり、々と腰を折って私にをげた。

「理さん、本当にごめんなさい。私たちの結婚という勝な来事のために、あなたの尊厳をどれほどく傷つけてしまったか……。幸介が自分の保のために、私と私の両親を言い訳の具に使っていたことが、何よりも許せません」

「ゆかさんが謝ることじゃありません」

私は震える声で言った。だが、その声はりではなく、信じてきた「族」という偶像が完全に腐敗しきっていたことに対する、い絶望のを帯びていた。

ゆかさんが帰った翌の昼がり、にいがけない来客があった。

父方の叔母である子だった。恵子の母親であり、昔から母・志保の面の良さと見栄っ張りな性格を最も徹に見抜いていただった。

「理、恵子から全部聞いたよ」

子叔母さんは番、眉を吊りげてに入ってくるなり、提げ袋から冊の古びた学ノートを取りして作業台のに叩きつけた。

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表の角は擦り切れ、背表には褪せた黒インクで『計簿 平成〜』と、父の几帳面だが武骨な跡が残されていた。

「これ、実の納を片付けたに預かってた兄さん(理の父)の古いノートだよ。あんた、ずっと黙ってるつもりだったのかい? あの子たち……志保さんも幸介も、あんたのこの血と汗を全部都よく記憶から消しって、よくもまあ恥ずかしげもなくあんな派な顔して雛壇に座れたもんだよ!」

震えるでノートの表をめくった。

ページをめくるごとに、の、息の詰まるような記憶が鮮烈に蘇ってきた。

父が建築現のから転落した平成の。骨折した骨が神経を圧迫し、期入院とリハビリを余儀なくされた。の収入は完全に途絶え、貯は医療費で底をついた。

当、学だった兄・幸介は就職活の真っ只で、期授業料納付の締め切りが目に迫っていた。

ノートの支欄には、額な医療費や薬代とともに、『幸介 期授業料 万円』の文字が赤いアンダーラインとともに記されていた。そして、その真横の収入欄。

『理より学費補填 万円』 『理バイト代より活費 万円』 『理より幸介通学定期代』

数ヶにわたり、幾度も幾度もき込まれた私の名。

を休学し、そのまま退を選んだ歳の私は、朝はスーパーのレジ打ち、夕方からはファミレスの厨、夜は弁当のラインに入り、眠をに削って働き続けた。

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