みかん小説
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"寝室のベッドの下に隠されていたもの" 第10話

数字による決着

貸倉庫の資料が見つかったことで、正たちの説は崩れた。単なる夫婦の記録でも、妻を守るための善でもない。私の判断能力を疑わせ、財産をかし、そのは目につかない所へ移すまでがつの計画だった。

正は事聴取のも逮捕されず、いったん帰宅を許された。捜査には順があり、見つかった資料の作成者や使用目を件ずつ確認しなければならない。私は納得しようと努めたが、彼が同じ町を自由に歩いているとうだけで眠れなかった。

翌々、ホテルから会社へ向かう途、正が駅にっていた。を通すという約束を無し、で待ち伏せていたのだ。

「倉庫まで調べさせる必があったのか」

彼は謝罪せず、私がやりすぎたと責めた。

「私を施設へ入れるつもりだった?」

「に休ませるだけだ。おは仕事にしがみつきすぎていた。俺が管理した方が、全部うまくいった」

「あなたの借が消えるから?」

「俺の事業がち直れば、夫婦の利益になる」

正にとって、まだ夫婦は続いていた。私の財産も労働も信用も、彼が使ってよい共同資源なのだ。私が拒むことだけが、彼のでは異常とされている。

「叔母さんが反対した、どうった?」

「老に経営は分からないとったよ。あのを寝かせておく方が罪だ」

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「私が自分で運用すると言ったは?」

「おは経理だ。事業を作るじゃない」

結婚した頃、正は私の数字を見る力を尊敬すると言った。計簿を並べ、なら堅実な未来を作れると笑っていた。いつから変わったのかりたい気持ちは残っていたが、答えは目のにある。彼は私を認めていたのではなく、自分に役つ能力だけを評価していた。

「婚します。共財産は法律どおりに分ける。私の相続財産は円も渡しません」

「そんなことをしたら、俺は破産する」

「それは、あなたが作った数字です」

正が腕をつかもうとした瞬、しれて見守っていた駅員と警察官が駆け寄った。の助言で、待ち伏せに気づいた点で通報していた。正は私へづかないよう警告を受け、そのをれた。

数週、婚調が始まった。正は当初、私の能力を争い、婚へ同しなかった。しかし会社の勤務記録、独した医療関による診察、警察が復元した元映像が提されると、主張を変えた。今度は夫婦で資産を形成したのだから、相続財産にも貢献分があると言いした。

は、の遺言、相続税の記録、座の入を順に示した。相続財産は夫婦の活費へ混ぜず、私名義で分別管理されている。正が維持や運用へ貢献した証拠もなく、むしろ無断で資料を複写し、偽造類でかそうとしていた。

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共宅と夫婦の預は、適正な評価額で分けることになった。ただし正の事業債務は、私が保証も同もしていない彼個の負債である。の売却代から彼の正当な持分は渡るが、それ以を私が負担する理由はなかった。

「も夫婦だったのに、見捨てるのか」

調で正は言った。

「夫婦だったから、あなたはかけて私の点を記録できたのね」

私が答えると、彼は黙った。

刑事事件については、盗撮に関する為だけでなく、偽造した委任関係類をや産会社へ提したこと、私の信用を落とすため加映像を送ったことが調べられた。野は医師として診察していない相について適切な記録を作り、計画へ加担した責任を問われた。織はなりすましを認め、捜査へ協力する代わりに自分の役割を詳しく供述した。

義母は最まで「息子を助けたかっただけ」と主張した。だが貸倉庫の契約、印の持ちし、偽造類の証署名、黒い容器についての失言がある。らなかったでは済まなかった。

婚成の、私はの事務所でへ署名した。相続財産億千万円はすべて私の特財産として守られ、正の千百万円の債務からも完全に切りされた。共宅は売却し、ローンと費用を引いた残額だけをで分ける。

のでは、の結婚が数枚の類へ変わった。けれども、そこに並ぶ数字はたいものではなかった。円単位で分ける作業は、正が曖昧にした境界を引き直し、私のものを私へ戻す作業だった。

共宅の売却は簡単にはまなかった。正は内覧を拒み、玄関の鍵を交換し、仲介業者をへ入れなかった。義母まで転がり込み、「ここは息子の活の基盤だ」と居座った。裁判所を通じた続きにはも費用もかかるが、私が折れて持分をく譲れば彼らの狙いどおりになる。

私はに戻りたいわけではなかった。それでも、自分の権利を捨ててく終わらせることと、全な距を保ちながら正当に終わらせることは違う。を通じて使用利益と維持費を計算し、期限を切って退と売却への協力を求めた。

正からは、夜にいメールが届いた。

〈まで奪えば、俺は本当にぬしかない〉

以の私なら、その文だけで自分を責めただろう。だが今は、専窓へ報を共したうえで、本への対応は弁護士に任せた。命をほのめかして私に譲歩させることと、本当に支援が必な状態であることは両する。だからこそ、妻が脅しに従うのではなく、専へつなぐべきだった。

最終に正は退し、は第者へ売却された。

具を運びした、私はと度だけ内を確認した。寝にはベッドの跡が角く残り、板の部が粘着剤で変している。

のを見ても、懐かしさより息苦しさが先に来た。私は窓をけ、空気を入れ替えた。ここで過ごした自分を責めるのはやめようとった。信じたことは罪ではなく、信頼を具にした側が責任を負うべきなのだ。

玄関をる、私は鍵をテーブルへ置いた。鍵を閉めたか何度も確認していた頃と違い、そのは度回しただけでをした。

署名を終えると、がさく頷いた。

「これで、ご主があなたの名義や財産へ触れる法なは閉じました」

私は堵した。しかし、終わったという実はなかった。

その夜、しく借りたマンションのベッドへ入ると、午に目が覚めた。痛はない。の苦みもない。それでも私はへ膝をつき、ライトでベッドのを確かめた。

何もなかった。

それなのに、臓はあのと同じ速さで鳴っていた。

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