"昭和51年、閉山した炭鉱町から消えた父" 第4話
空になった保管庫
母は鍵を渡したあと、すぐには説しなかった。炭鉱の事務所に保管庫があることは聞いていたが、閉、建物は会社の管理に置かれていた。鍵を持っていても、を見られるとは限らない。
「お父さんは何を入れたの」
「分からない。私が預かったのは鍵だけだから」
「いつ?」
「あなたが学へっている。最にお父さんを見たの朝」
母の説によれば、父は弁当ではなく、い包みを母に渡した。に入っていたのは、鍵といメモだった。「もし戻れなかったら、保管庫をけて古賀に渡してくれ」とかれていた。しかし母は、古賀さんに渡せなかった。古賀さんが会社の監を受けているとっていたからだという。
「じゃあ、なぜ今になって私に渡すの」
「このまま持っていても、何も守れないとったから。あなたはもう子どもじゃない」
私は翌、古賀さんと緒に事務所へった。建物の正面は板で塞がれ、窓にも鍵が掛かっていた。裏のさな搬入は、閉も修理されず、錠が錆びていた。古賀さんが周囲を見張り、私は鍵を差し込んだ。保管庫は廊の奥にあり、の匂いと湿った埃が漂っていた。
保管庫のには、古い全標識やヘルメット、記録簿が積まれていた。鍵の番号と致する扉をけると、棚には何もなかった。
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には箱を引きずったような跡が残っている。誰かが先にを持ちしたのだ。
古賀さんは扉の内側を確かめた。
「何もないとっていた方がいい。会社は閉から記録を理していた」
「父が置いたものは?」
「あるいは、ここじゃなかったのかもしれない」
私は棚の奥に、の違う壁板が枚あるのに気づいた。釘を抜き、板をすと、さな空があった。には、錆びた缶と封筒がひとつずつ入っていた。缶の表には「フィルム」とかれている。封筒には「古賀さんへ」と父の字で記されていた。
古賀さんのが震えた。封筒をけると、鉛でかれたい文章が現れた。
「番坑の仕切り壁は、閉にけ直されていた。会社は『点検済み』として帳票を改めた。で作業した者の名を、記録から消している。現を見たがいる。記録だけを信じるな」
封筒には、名がひとつかれていた。
「瀬辰吉」
瀬さんは、父より10歳の元坑夫だった。閉すぐに町をれたという噂があり、き先は分からなかった。彼がで作業をしていたなら、会社が隠したことの証かもしれない。
缶をけると、黒フィルムとさなメモが入っていた。メモには、フィルムを現像したら部を県の鉱保課へ送るように、とかれている。古賀さんは、すぐ送るのは危険だと言った。
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写真の内容が分からないままでは、会社に「偽物」と言われる能性がある。
そのとき、事務所のでのドアが閉まる音がした。誰かが来た。
古賀さんは缶を私に渡し、を指さした。私たちは裏からへたが、事務所の角で総務課と鉢わせた。課は、私のにある缶を見た。
「それは会社の備品だ。返しなさい」
「父が残したものです」
「君のお父さんは、会社の記録を勝に持ちした。これ以、余計な話に関わらない方がいい」
課は静に言った。脅すような調ではなかった。その落ち着きが、かえって怖かった。
「父はどこにいるんですか」
「らない。本がいなくなったのは、会社の責任ではない」
課は缶を取ろうとを伸ばした。古賀さんがに入った。
「修さんが残したものなら、族が持っていていい」
「古賀君、君も職を失っただ。これ以、騒ぎを起こして得することはない」
課が帰ったあと、古賀さんは私に言った。
「フィルムを現像しよう。そこに何が写っているかで、次に誰を頼るかが決まる」
だが、フィルムの端には、撮が記されていた。
昭51118。
父が消える2。写真の裏には、もうひとつの付があった。
昭511112、分。
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