"昭和51年、閉山した炭鉱町から消えた父" 第5話
現像された坑
フィルムを現像してくれるは、町からバスで40分れた隣町にあった。主は昔、炭鉱の広報写真を撮したことがあり、フィルムの種類を見ただけで、撮られた代を言い当てた。
「この頃の黒フィルムは、度がい。暗い坑内なら、かなりくで撮らないと何も写らんよ」
主はそう言って、フィルムを預かった。現像には2かかると言われた。その、私は学で授業を受けても、のからのことがれなかった。父はどこにいるのか。フィルムには何が写っているのか。母はなぜ、父の最のき先をりながら、警察へ言わなかったのか。
母は毎晩、の戸締まりを確かめた。話が鳴るたびにを止めた。誰からも話がないは、仏壇のでく座っていた。私は母に、父が帰るとっているのかと聞いた。母は「っている」とも「諦めた」とも言わなかった。
現像された写真は、全部で6枚あった。最初の2枚は、の坑を写したものだった。壁にしい補材が打たれ、古い仕切り扉の周囲にはが滲んでいる。3枚目には、会社の作業員らしい男が、仕切りので何かを運んでいる姿が写っていた。顔は暗くて判別できない。4枚目には、壁の部がかれ、奥に続く空が見える。
5枚目を見たとき、古賀さんは子からちがった。
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そこには、父の横顔が写っていた。父はカメラを持っておらず、壁にを当てている。その隣に、腕を包帯で吊った瀬辰吉さんがいた。6枚目は、もっと暗く、物の姿はほとんど分からない。壁にてかけられた黒板に、「1112 1640分 再測定」とかれていた。
「父は、閉も坑内に入ったんですか」
「写真の付が本当なら、そうだ」
古賀さんは写真を裏返した。裏にはさな鉛きがあった。「辰吉、聞き取り、県へ。修、残る」。別の文字で「戸は塞ぐな」ともかれている。
写真が撮られた118、父と瀬さんは何を確認していたのか。父が消えた1112、1640分に何が起きたのか。閉の坑内へ誰が入ったのか。
古賀さんは瀬さんの取りを探すため、元炭鉱労働組の名簿を調べた。瀬さんは町をたのではなく、隣県の港町に移ったらしい。古賀さんが話帳を頼りに何軒か連絡すると、ようやく本の親戚に繋がった。瀬さんは療養のため、沿いのさな病院に入院していた。
私たちは翌、母には何も言わずに病院へ向かった。瀬さんは痩せていたが、写真を見せるとすぐに父を認めた。
「修は、戻らなかったのか」
「お父さんをっているんですね」
「緒にへ入った。あいつが俺をへ押しした」
瀬さんは、閉にの仕切り壁がけられ、会社が保管していた資材を運びしたと話した。
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壁の向こうには、古い排と、閉鎖済みの採掘区画が残っていた。作業員たちは会社の命令で資材を運び、異常なガスの数値がても報告しなかった。瀬さんは作業にを挟まれ、壁が崩れたときに負傷した。
「会社は『閉の事故』として片づけた。俺は治療を受けて町をるよう言われた。修は、事故報告の改ざんをっていた」
「父はどうして戻ったんですか」
「排の先に、閉じ込められたがいたかもしれないからだ」
瀬さんは、事故の、若い作業員の井という男が戻らなかったと言った。会社は井が閉に町をたと説し、名簿から名をしていた。だが、瀬さんは彼がの奥へ入ったのを見ていた。
私は息を呑んだ。父は失踪したのではない。誰かを探すために坑内へ戻ったのだ。
瀬さんは、父が自分を坑へ押ししたとき、鍵と封筒を渡したと話した。封筒は県の保課へ届けたが、記録は受理されたあと、調査終の扱いになった。理由は「所の作業員を確認できず、閉の事故の能性も認められない」だった。
「それで終わりですか」
「俺は怖くなって、町をれた。修をひとり残してしまった」
病の窓から、のが見えた。瀬さんはを見たまま、最に付け加えた。
「修は、あのに坑内へ入る、俺に言った。
『子の名を帳簿から探せ』と」
「妹の名が、どうして帳簿に?」
瀬さんは、答えずに目を閉じた。
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