"昭和51年、閉山した炭鉱町から消えた父" 第8話
坑のに残された声
父の帳にかれた「もうひとつの入」は、町役の坑内図には載っていなかった。古賀さんは、閉の古い図を持っていた。そこには、現の番坑からへ伸びる細い通があり、途で線が途切れている。図の余には、「旧排、封鎖済」と記されていた。
父が言う入は、その排の脇にあるのかもしれない。閉にち入るのは危険だったが、確認しなければ井さんがいたかどうかも分からない。古賀さんは警察へ相談することを提案した。だが、警察は「坑内は会社の管理で、現は危険区域」として、調査には慎な姿勢を示した。
「勝に入るわけにはいかない」
古賀さんが言った。
「でも、父がにいるかもしれない」
「きているとは限らない。それでも、坑内へ入るなら正式な許がいる」
母は、父の帳を役の担当者に見せた。役は会社に照会をい、閉鎖区域の全確認を求めた。会社は「坑内に残者はいない」と回答したが、現調査には応じなかった。
その返答を受けた翌、旧坑の封鎖板が何者かによって壊された。警察が現を調べ、周辺にしい靴跡を見つけた。靴跡は坑からへ向かって続き、途で消えていた。私は父が戻ってきたのかもしれないとった。けれど、靴跡のきさは父のものよりずっとさかった。
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古賀さんは、閉に坑内へ入りしていた元作業員に連絡した。彼らのうち2が、父の話を聞いたことがあるという。1は「はが溜まっていて、入れる状態ではなかった」と言い、もう1は「井は閉に町をた」と言った。同じ作業にいたはずなのに、証言がい違っていた。
私たちは、者の元作業員を訪ねた。彼は町をれ、鉄所で働いていた。最初は何もらないと言ったが、父の写真を見せると、しばらく黙った。
「修は、井を助けようとしていた」
「井さんは坑内にいたんですか」
「俺は見ていない。けど、閉の作業で、ひとり戻らなかったのは確かだ」
彼は、会社から「井は退職を受け取って町をた」と説するよう頼まれたと認めた。自分も族を抱えていたため、逆らえなかった。会社は、でった作業の記録をすべて回収した。父が測定値を記した帳も、会社にすよう求められたという。
「修はさなかった。だから、会社はあいつが記録を盗んだと言い始めた」
「父を探さなかったんですか」
「探しにこうとした。でも、坑は閉められていた。あの、会社のが先に来て、誰もづけなかった」
彼は、坑内で井さんを見た最の所を教えてくれた。のの先、巻揚げの。そこには通気用の細い穴が残り、から声が届く能性があるという。
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翌週、県の保課がようやく現調査に応じた。会社は会いを拒んだため、警察と役の職員が同した。坑から先へむことはできなかったが、通気穴のくで、属を叩くような音が聞こえた。
調査員は、坑内にがいる能性を考慮して、酸素計を使った。数値はく、すぐに内部へ入ることはできない。救助隊の準備がむ、私は父の帳をき、最の頁を見た。そこには、これまで気づかなかった細い文字がきされていた。
「が増えたら、の排からる。井を先にす。俺は戻る」
父は、井さんを助けたあと、自分も戻るつもりだった。
しかし、救助隊が通気穴の周辺を掘り始めたとき、作業員が面のからさな属箱を見つけた。箱のには、濡れたと、音声を記録する古いテープが入っていた。ラベルには「1112、1640分」とある。
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