みかん小説
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"父が開けた祝儀袋" 第1話

昭3510、京の町にある割烹旅館で、23歳の佐伯恭子は結婚披宴を挙げた。相は会社に勤める27歳の浩司で、見いから1半、派ではないが穏やかな交際をねてきた相だった。恭子は親しい親戚と職の司だけを呼ぶさな披宴を望んでいたが、当会へ入ってみると、予定していたより卓も席が増えていた。

料理も、最初にで選んだ献とは違っていた。鯛の尾付きに刺の盛りわせ、茶碗蒸し、ぷら、吸い物まで並び、嫁装も無垢だけだったはずが、途で赤い振袖へ着替えることになった。控には桐箪笥、鏡台、布団式、気炊飯器、それに当としてはまだ価だったしいテレビまで「嫁入り具」として並べられていた。

「お父さん、テレビまで買ったの?」

披宴、恭子が驚いて尋ねると、父の正吉は胸を張った。

「嫁にす娘に恥をかかせられるか。さんのは親戚もいんだ、みすぼらしい真似はできん」

母の文も、「向こうへってから、実は何も持たせなかったなんて言われたら残るのよ」と譲らなかった。恭子は何度も「こんなにらない」と言ったが、そのたびに両親から「娘には分からない」「親の務めだ」と押し切られ、最にはを閉じた。

披宴が始まると、正吉は誰より嫌だった。

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酒を注いで回り、縁の親戚にもをげ、浩司の父・蔵には「これからはつの族ですな」と何度も笑いかけていた。恭子はし疲れながらも、両親がここまでんでいるなら、今くらいは何も言わないでおこうとった。

問題が起きたのは、まだ最の挨拶も終わっていないだった。

装を戻すため控へ入った恭子は、襖のでを止めた。からの擦れる音がする。係の女性が片づけをしているのかとって襖をけると、畳のに父がで座っていた。

正吉のには、披宴で受け取った祝儀袋がのように積まれていた。

父はつずつ引をし、の札を抜いている。千円、千円、万円と額を数え、元のへ名と数字をき、そのを別の茶封筒へ移していた。けられた祝儀袋は、空になって脇へ積まれている。

「お父さん、何してるの?」

正吉のが止まった。

しかし驚いた様子はなく、札をそろえながら答えた。

「を数えてる」

「それは見れば分かるよ。どうして今、全部けてるの?」

「今に返す約束なんだ」

恭子はが分からなかった。

「何を?」

父はようやく娘を見た。

「借りただ。この披宴をするために借りた」

恭子は声を失った。

借など度も聞かされていない。両親は貯していたから配するなと言い、嫁入り具についても「親がすることだ」

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としか説しなかった。

「待って。それ、私と浩司さんにいただいたお祝いでしょう?」

「だから何だ。この披宴がなければ入ってこなかっただ」

「そういうじゃないよ」

「会代も装代も料理代も、誰が払ったとってる」

正吉の声には、悪いことをしているという響きがなかった。

むしろ当然の精算をしている顔だった。

その、廊からさな物音がした。

振り向くと、襖の向こうに浩司の母・志津がっていた。

「……まあ」

志津の線は、畳のの祝儀袋から、正吉が握っている札束へ移った。

正吉も初めて顔を変えた。

「いや、これは……」

「全部、けていらっしゃるの?」

「今の支払いがありましてな」

「今の?」

志津はそれ以言わなかった。

けれど、その沈黙の方が恭子には怖かった。

披宴が終わる頃には、正吉の茶封筒からかなりのがなくなっていた。誰に渡したのか恭子には分からなかったが、廊の端で見らぬ男と正吉が話し、封筒を渡す姿だけは見えた。

婚初の夜。

浩司は何も聞かなかった。

恭子も話せなかった。

けれど翌朝、浩司の実から話が来た。

「母さんが、昨のことを聞きたいって」

その声を聞いた瞬、恭子は悟った。

父がけたのは祝儀袋だけではなかった。

結婚したばかりののに、恭子のらなかった借までいてしまったのだ。

噂が広がるのにもかからなかった。

浩司の伯母から叔父へ、叔父から別の親戚へ話が伝わり、「嫁の父親が披宴の最に祝儀を全部けた」

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