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"父が開けた祝儀袋" 第8話

「浩司君」

「はい」

「頼みがある」

恭子はすぐ父を見た。

正吉は娘を避けるように、浩司へ話した。

「会社に、社員向けの貸付があると聞いた」

部の空気が固まった。

「お父さん」

「聞くだけだ」

「何を聞くの」

「万円。いや、万円でもいい。まで借りられればをて直せる」

恭子はちがった。

「帰って」

「おに頼んどらん」

「浩司さんに頼んでも同じ」

「男同士で話しとるんだ!」

その言葉に、浩司が湯呑みを置いた。

「お義父さん」

正吉が黙る。

「恭子に関係ない話なら、俺にも関係ありません」

正吉の顔が赤くなった。

「君までそんな」

「俺たち夫婦ですから」

浩司は穏やかな声だった。

「借りるならで相談します。俺の名義でも、返すのは俺たちの活費からです」

「必ず返す」

「披宴の祝儀も、返済に当てる予定だったんですよね」

正吉は線を落とした。

「を潰せというのか」

「違います」

恭子が答えた。

「を続ける方法を、お父さん自が考えてって言ってるの」

「だからを借りれば」

「それは方法じゃないよ。今までと同じ」

正吉はしばらく座っていた。

帰り際、玄関で振り返った。

「親が困っとるのに、娘が助けんとはわなかった」

恭子の胸に刺さった。

それでも答えた。

「助けないんじゃない。借を増やす助け方はしないって言ってるの」

父は帰った。

戸が閉まったあと、恭子はしばらくったままだった。

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浩司が隣へ来た。

「丈夫?」

「丈夫じゃない」

恭子は正直に言った。

父を見捨てているような罪悪がある。

けれどここでをせば、父は「を変えなくても誰かが埋めてくれる」とう。

翌、恭子は別の形でいた。

父のの売帳を見せてもらい、何が売れ、何が売れ残っているのかを理した。

父は最初拒んだ。

しかし文が帳面をした。

「を貸すんじゃなくて、見るだけなんだから」

で数字を並べると、原因が見えた。

父は昔からの品揃えを変えず、売れない価な鍋や物まで仕入れ続けていた。方、洗剤や鹸など回転の速い品は利益がいからと軽く見ていた。

を守る。

その言葉のに、「昔と同じを守る」というまで入っていた。

正吉が最も嫌ったのは、「を縮める」という言葉だった。

恭子が売れない商品を減らし、の半分だけで商売を続けてはどうかと提案すると、「先代からのをさくできるか」とった。文が「先代は借してまで棚を埋めろとは言ってないでしょう」と返し、また夫婦喧嘩になった。

それでも数字は変わらない。

と比べて売は割く落ちている。

方で賃は自宅兼舗のためかからず、規模を縮めれば商売そのものは残せる能性があった。

「を畳めって言ってるんじゃない」

恭子は言った。

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「残すためにさくするの」

「客に落ちぶれたとわれる」

「もう棚が空き始めてる方が分かるよ」

父は返事をしなかった。

数、正吉はで問へった。

の付きいを理由にをげ、残っている買掛を分割で払わせてほしいと頼んだ。代わりに仕入れを現へ切り替え、商品数を減らす。

さらにの奥に積んでいた古い庫をく売った。

使っていない配達用自転も台放した。

婚礼用に買ったテレビも、文の希望で売却した。

「恭子に持たせた物なのに」

正吉は最まで渋った。

文は言った。

「恭子はらないって最初から言ってたでしょう」

「だからって」

「あなたも私も、あの子の『らない』を度も聞かなかったのよ」

その言葉に、正吉は黙った。

売却しただけで借が消えるわけではない。

けれど毎の返済額は現実な範囲までがった。

父は初めて、自分の商売のための借を、自分の商売を変えることで返し始めた。

方、恭子と浩司にも決めなければならないことが残っていた。

が希望した婚礼費。

両が追加した費用。

祝儀の扱い。

すでに父が使ってしまった分を、どう理するのか。

「度、全員で話そう」

恭子が言った。

浩司はし嫌そうな顔をした。

「母さんとお義父さん、同じ部に入れるの?」

「入れないと終わらないよ」

恭子は学ノートをいた。

最初の頃より頁が増えている。

領収。

借用証。

招待客の追加。

父の商売借。

男方の追加費用。

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