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"父が開けた祝儀袋" 第10話

「本当にね」

父は祝儀を返済原資として計算していた。

しかし、付きいは父の計算通りにはかなかった。

むしろ披宴を豪華にした分、借はさらに増えていた。

その事実を正吉へ見せると、父はしばらく黙った。

「こんなにかかっとったか」

「領収は最初からあったよ」

「つずつは見た」

「全部したことは?」

返事はなかった。

父は「これくらいなら」とつずつ増やしていた。

料理をしげる。

装をもう着。

テレビを台。

客をあと。

宿をもう部。

つずつならしたことがないように見えた。

計だけを、最まで見なかった。

「借も同じだったんじゃない?」

恭子が聞いた。

正吉は娘を見た。

「万円借りて、万円して、問をか待たせて。全部別々なら何とかなるとってた」

父は初めて反論しなかった。

「そうかもしれんな」

その言を聞くまで、結婚式からか以かかった。

、浩司の親戚で法事があった。

恭子も嫁として席した。

結婚式以来初めて顔をわせる親戚もく、恭子はの噂話を覚悟していた。

案の定、事の席で浩司の伯母が言った。

「でも変だったわねえ、志津さん。結婚々、向こうのお宅の借騒ぎでしょう?」

志津は困ったような笑顔を作った。

「まあ、若いには迷惑をかけないでいただきたいとはってるのよ」

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恭子は黙っていた。

ここで言い返せば、また「気のい嫁」と言われるだけだとった。

ところが、そのは文も呼ばれていた。

両の親戚付きいとして、法の席だけ顔をしていたのだ。

伯母が文へ言った。

「お宅も変ね。娘さんの祝儀まで返済に使わないといけなかったなんて」

文の顔が張った。

以なら笑ってごまかしただろう。

「お恥ずかしいことで」とをげたかもしれない。

だが文は湯呑みを置いた。

「借をして見栄を張ったのは、私たちです」

志津が驚いて母を見る。

文は続けた。

「娘ではありません」

部が静かになった。

「私が嫁に来た頃、持ってきた物がないと何も言われました。それが嫌で、娘にはたくさん持たせなきゃとってしまったんです。でも、娘は最初かららないと言っていました」

伯母は気まずそうに目を伏せた。

文は志津へも顔を向けた。

「ですから、恭子の料で返す話ではありません」

志津の頬が引きつった。

「私はそんなつもりで」

「最初におっしゃいましたよね」

文の声は静かだった。

「働いているなら、その料からしずつ返せばいいって」

志津は何も言えなかった。

恭子もを挟まなかった。

母が自分で言う必がある言葉だった。

帰り、で駅まで歩いた。

「お母さん、よく言ったね」

文は顔をしかめた。

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「が震えたわよ」

「でも言えた」

「恭子があの、『私が嫌だったことをどうしてもう度やるの』って言ったでしょう」

母はを向いたまま続けた。

「あれ、ずっと残ってたの」

恭子は黙って聞いた。

「私、自分は娘を守ってるつもりだった。でも本当は、昔の私を守ろうとしてたのかもしれないね」

その言葉は、父の謝罪より先に、恭子の胸へ届いた。

がける頃、正吉のは半分になった。

内を仕切る棚を移し、売れない物類を処分した。空いた奥半分は物置として使い、仕入れ量をきく減らした。

掲げていたきな製板もした。

文字が古くなり、修理にがかかるためだった。

「本当にすの?」

文が聞くと、正吉は脚ので答えた。

「板で客が来るなら、とっくに来とる」

以の父なら絶対に言わなかった言葉だった。

所では当然、噂になった。

「佐伯さんの、縮めたんだって」

「娘さんの婚礼で使いすぎたらしい」

「商売危ないんじゃないか」

正吉は最初の数は嫌だった。

しかし客が来れば普通に接客した。

必な商品だけを仕入れ、掛売りも減らした。

文は帳に冊の現納帳を置き、毎晩夫婦で残を確認するようになった。

ある晩、恭子が寄ると、父が千円の入った封筒を差しした。

「何?」

「祝儀の分」

「返済?」

「ああ」

万千円を度には返せない。

だから毎、の余裕がたにしずつ娘夫婦へ戻すことにした。

「活が苦しいなら無理しなくていいよ」

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