みかん小説
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"父が開けた祝儀袋" 第11話

恭子が言うと、正吉は首を振った。

「それを言ったら、また同じになる」

恭子は父を見る。

「おらのを勝に使った。返すと言ったなら返す」

父は謝らなかった。

なくとも、そのは。

けれど恭子には、その千円が父なりの謝罪にいものだと分かった。

受け取ったは居の活費には使わず、別の封筒へ入れた。

《祝儀返済》

浩司が帰宅してそれを見ると、「ちゃんと返してきたんだ」と言った。

「うん」

「お義父さん、変わったな」

「しね」

「うちの母さんはまだかかりそうだけど」

で笑った。

志津との関係は相変わらずぎこちなかった。

それでも以のように、恭子の料の使いへをすことはなくなった。

浩司が度、「それはで決めるから」と確に線を引いたからだった。

境界は、度引けば終わりではない。

何度も同じ所へ引き直す必がある。

恭子は結婚して初めて、それをった。

婚活は、披宴よりずっとだった。

畳と畳半の借。

台所は狭く、になると窓の隙からたいが入る。

売ってしまったテレビの代わりに、さなラジオを置いた。

嫁入り箪笥も予定より棹ない。

それでも困ることはなかった。

料になると、恭子と浩司は卓へ分の封筒を置いた。

賃。

費。

費。

貯。

それぞれの遣い。

残ったをどうするかは、そので話した。

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ある、浩司が言った。

「父さんの誕にししたいんだけど」

「いいよ。いくら?」

別のには恭子が言った。

「母さん、物の着が傷んでるから買ってあげたい」

「じゃあ今、貯をし減らす?」

「いや、私の遣いから半分す」

誰かが勝に決めるのではない。

で話す。

それだけだった。

だが結婚式の、恭子にはできなかったことだ。

浩司もしずつのことをするようになった。

最初は湯を沸かす程度だったが、恭子の帰宅が遅いは米を研ぎ、噌汁を温めた。

ある、文が訪ねてきた、浩司が台所で根を切っていた。

母は驚いてち止まった。

「浩司さんが?」

「今は恭子が残業だったので」

文は何か言いかけた。

昔なら、「男のに台所仕事なんてさせて」と娘をたしなめたかもしれない。

しかしを閉じた。

代わりに、

「根、もうしく切った方がく煮えるわよ」

とだけ言った。

浩司が笑った。

「教えてください」

恭子は玄関からその景を見ていた。

母が変わったのは、豪華な嫁入り具を放したからではない。

「こうするものだ」とっていたことを、つずつ疑うようになったからだ。

それは恭子自も同じだった。

昭36の。

正吉のは、ようやく毎赤字をさない程度まで持ち直した。

昔ほど売はない。

しかし仕入れを絞り、掛売りを減らしたことで、元に現が残るようになった。

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問への遅れもしずつ解消した。

ある、正吉から「へ来い」と話があった。

恭子がくと、帳に茶封筒が置いてある。

には万円。

「今はし余った」

「無理してない?」

「してない」

父は帳面を閉じた。

祝儀から使ったの返済は、これで半分を超えた。

「お父さん」

「何だ」

「もうしゆっくりでもいいよ」

正吉は首を振った。

「く終わらせたい」

「借が嫌になった?」

「借は昔から嫌いだ」

恭子はわず笑った。

「あれだけ借りといて?」

正吉もし笑った。

しばらくして、父は先を見た。

「おの披宴な」

「うん」

「あれだけやれば、派に嫁にしたとえるとった」

恭子は黙って聞いた。

「が苦しいのも隠せる。向こうの親にも負けん。取引先にも、佐伯はまだ丈夫だとわせられる。祝儀も入る。全部うまくいくとった」

「うまくいかなかったね」

「ああ」

正吉は苦笑した。

「つもな」

のを自転が通り過ぎた。

「祝儀袋をけた、おがあんな顔するとはわんかった」

「どんな顔?」

「俺が、おの物を盗ったみたいな顔」

恭子は父を見る。

「そうじたよ」

正吉の表が止まった。

恭子は続けた。

「額より、何も聞かれなかったことが嫌だった。私の結婚なのに、私のらないところで全部決まってたから」

父はく黙った。

そして初めて言った。

「悪かった」

さな声だった。

恭子はすぐ「いいよ」

とは言わなかった。

謝られたから過がなくなるわけではない。

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