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"長女の命日、夢に現れた娘が告げたこと" 第4話

「真紀がんだのを忘れたのか」

《またを巻き込むつもりか》

私は奈緒の肩越しに、その文章を見てしまった。

借の話ではない。

マンションでもない。

ひなのことでもない。

私はすぐに尋ねた。

「どういう?」

奈緒はスマートフォンを胸へ押しつけた。

「何でもない」

「何でもない顔じゃないでしょう」

「お願い。聞かないで」

青ざめている。

逃げるようにろへがった。

「奈緒」

私は声を荒らげないようにした。

「誰を巻き込んだって言われてるの?」

「聞かないで」

「、これで脅されてきたの?」

奈緒が目をきくした。

それだけで分だった。

またスマートフォンが震えた。

奈緒のに力がなくなり、画面がこちらへ向く。

続けて送られてきた文章。

《真紀がんだのを忘れたのか》

私は呼吸を忘れた。

「……真紀?」

にくした、私の女。

奈緒の姉。

その名が、なぜ健太から届く。

「なんで真紀の名がてくるの?」

奈緒はへ座り込んだ。

両で顔を覆う。

「ごめんなさい」

「何を謝ってるの」

「お母さん、ごめんなさい」

「奈緒」

「ずっと言えなかった」

私は娘のへしゃがんだ。

「真紀の事故と、健太さんに何の関係があるの」

い沈黙。

やがて。

奈緒は涙で崩れた顔をげた。

「お姉ちゃん……あの、私のところへ来ようとしてたの」

を理解するまで数秒かかった。

「事故の?」

頷く。

「どうして?」

奈緒は声を詰まらせた。

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「私が呼んだから」

のがくなった。

。

真紀はの夜、対向線から滑ってきたに巻き込まれてくなった。

警察から聞かされたのは事故の状況だけだった。

真紀がなぜそのをっていたかは、分からなかった。

買い物かもしれない。

誰かに会う予定があったのかもしれない。

私たちはそうったまま、を過ごしていた。

「どういうことなの」

奈緒はちがり、荷物のから古いマザーズバッグを持ってきた。

底に入っていたさなポーチ。

そのから、古いスマートフォンがてきた。

「これ、壊れたって言って種変更したでしょう」

覚えている。

真紀の葬儀のしだった。

奈緒は「急に調子が悪くなった」と言い、古い端末を使わなくなった。

「ずっと捨てられなかった」

源を入れる。

充はほとんど残っていなかった。

しばらくして画面がちがる。

奈緒は古いメッセージアプリをいた。

そこには――真紀とのやり取りが残っていた。

事故の。

午過ぎ。

奈緒から真紀へのメッセージ。

《お姉ちゃん、怖い》

次。

《健太がすごくってて、にしてくれない》

《来てくれる?》

私は指先がたくなるのをじた。

「これは……」

「ひながまだ歳だった頃」

奈緒が説した。

「夜泣きが続いてて、健太がイライラしてたの。うるさくて眠れない、おのしつけが悪いって」

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奈緒はその夜、ひなを連れて実へ帰ろうとした。

すると健太が玄関のへち、へさなかった。

腕を掴んだ。

鳴った。

話をしようとすると取りげようとした。

奈緒はトイレへくふりをし、姉へ助けを求めた。

真紀からの返信。

《く》

《ひなと緒にいて。無理にへなくていいからね》

それから数分。

《今、したよ》

そして最。

《あと20分くらいで着くから》

送信刻。

午840分。

私はその数字を見つめた。

事故が起きたと警察から聞かされたと、ほぼなっている。

真紀が事故に遭った交差点も、真紀の自宅から奈緒のマンションへ向かう途にあった。

「じゃあ……」

声がなかった。

「真紀は、奈緒のところへ向かってたの?」

奈緒はへ顔を伏せるように泣いた。

「私が呼んだから」

「奈緒」

「私がお姉ちゃんを呼んだから、あのにあのをってた」

「事故を起こしたのは別のでしょう」

「でも私が呼ばなかったら!」

奈緒が叫んだ。

「お姉ちゃんはななかった!」

私は言葉を失った。

それは、奈緒ので繰り返されてきた結論なのだろう。

そしてすぐ分かった。

その結論を、で作ったわけではない。

「健太さんがそう言ったの?」

奈緒の泣き声が止まった。

「……うん」

私は全がたくなった。

「いつから」

「お姉ちゃんの葬儀が終わった頃」

最初。

健太は優しかったという。

《俺はおを責めない》

《お母さんに言えば、娘をとも失ったみたいに苦しむ》

《だからこれは俺たちだけの秘密にしよう》

奈緒は、私をこれ以しませたくないで頷いた。

しかし数か。

しでも奈緒が見を言うと、健太の言葉は変わった。

《おが俺をらせたから真紀さんはんだ》

《おがへ助けを求めたせいだ》

《また誰かを巻き込むのか》

そして奈緒が実へ帰ろうとすると。

《今度、お母さんが来る途で事故に遭ったら、それもおの責任だな》

奈緒は黙るしかなくなった。

話をしない。

実へ来ない。

何があっても「丈夫」と言う。

自分が耐えれば、誰もなない。

かけて、その考えがに染み込んだ。

私は古いスマートフォンを握ったままけなかった。

借。

マンション。

首の傷。

そんなものは、健太が奈緒を縛っていた鎖の番側に過ぎなかった。

本当に娘をけなくしていたのは――

くなった姉のだった。

そして今。

奈緒が産売却を拒み、私を巻き込んだことで。

健太は再びその鎖を引いた。

《真紀がんだのを忘れたのか》

私は画面を見た。

胸ので、りがく燃えがるのではなく、逆にたく固まっていった。

。

助けを求めた妹のところへ向かおうとした娘。

そのを。

妻を黙らせる具にした男がいる。

「奈緒」

娘が顔をげた。

「この携帯、絶対に消さないで」

奈緒が怯えたように私を見る。

「お母さん……」

「真紀があなたを責めていた証拠なんか、ここにはつもない」

私は古い画面を指した。

そこに残っているのは。

《く》

《無理にへなくていい》

妹を助けようとした姉の言葉だけだった。

そして私は決めた。

マンションだけ守って終わりにはしない。

奈緒のに閉じ込められた、この嘘そのものを終わらせる。

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