みかん小説
本棚

"「もう連絡しないで」と言った娘から48件の着信" 第11話

けれど、泣きながら抱きついてはこなかった。

私も抱きしめなかった。

それでよかった。

帰り際、美咲が玄関で言った。

「ねえ、お母さん」

「何?」

「私、最、輔君に嫌われたらどうしようってった、そのまま言うようにしてる」

「そう」

「は嫌われないために先に相の望みを考えてた。でも、それでお母さんにあんなことしたから」

私は娘の顔を見た。

「輔さんは何て?」

「『嫌なら嫌って言うから勝に像するな』って」

わずで笑った。

完璧な夫婦ではない。

が消えたわけでもない。

ただ、を隠して誰かを犠牲にするのではなく、言葉にする。

それだけでも、22の私たち夫婦とは違っていた。

結婚式当、私は始30分に式へ着いた。

以なら1半には入り、親族の到着を確認していただろう。

そのは受付で名を告げ、案内された控へ向かった。

叔母が私を見つけて、

「恵子ちゃん、今はずいぶんゆっくりね」

と笑った。

「今は何もしなくていいって言われてるの」

そう答えると、議なほど肩が軽かった。

美咲の支度部へ呼ばれたのは、挙式直だった。

いドレスを着た娘は、鏡ので静かに座っていた。

22、6歳だった美咲の髪を結び、学へ送りした朝をいした。

けれど今、目のにいるのは守らなければ何もできない子どもではない。

広告

「お母さん」

美咲がちがった。

「来てくれてありがとう」

私は笑った。

「招待されたからね」

「うん」

それだけだった。

い謝罪も、な抱擁も必なかった。

挙式では、輔さんの両親が私の隣に座った。

雅子さんは式、さな声で言った。

「いろいろご配をおかけしました」

「雅子さんのせいではありません」

「でも私も、『こちらのを優先して』なんて言い方をしてしまったから」

私は首を横に振った。

「美咲は美咲で、自分の怖さをの言葉に結びつけてしまったんです。今は本も分かっています」

雅子さんはし考えてから、

「族って、増えるものであって、入れ替えるものじゃないですものね」

と言った。

私はその言葉に頷いた。

式は派ではなかった。

けれどが自分たちで選び直した料理やには、以よりもらしさがあった。

披宴の途、美咲はを読まなかった。

母への謝を勢ので演することを、本がやめたのだ。

代わりにおきの、控でさな封筒を渡された。

には枚の便箋が入っていた。

《22育ててくれてありがとう。でも、これからは何でもしてくれるお母さんではなく、自分のをきているお母さんでいてください。私も、自分のことは自分でやります》

私は読み終え、便箋を折った。

「げさね」

そう言うと、美咲が笑った。

広告

「い読むと泣くでしょう」

「あなたがね」

「お母さんもでしょ」

その初めて、私は娘を抱きしめた。

昔のように守るためではない。

のになった娘のを祝うためだった。

結婚式から1か、私はへった。

陶芸教の友2と、3泊4の窯元巡りだった。

以なら、美咲が婚活で困るかもしれないとい、結婚直に旅の予定など入れなかっただろう。

だが今回は、半もから予約していた。

旅先の宿で、美咲からメッセージが届いた。

《今どこ?》

《》

《本当にったんだ》

《くって言ったでしょう》

しばらくして、

《お産いらないから楽しんできて》

と返ってきた。

私は笑ってスマートフォンをしまった。

翌、さな窯元で青の湯呑みをつ買った。

娘のためではない。

自分のためだった。

帰宅した数、直から通の封が届いた。

には便箋が枚だけ入っていた。

《美咲とはしばらく距を置くことになった。昔のことについて、俺にも悪かったところはある。ただ、全部俺だけの責任にされるのは納得できない》

最まで、直らしい文章だった。

私は返事をかなかった。

22の私は、直に自分の痛みを分かってもらいたかった。

織にも、自分が何を壊したのか認めてほしかった。

けれど今は違う。

相が理解しなければ、自分のをへめられないわけではない。

私はを婚関係の封筒へ入れた。

そしてその封筒ごと、押し入れの番奥へ移した。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: