みかん小説
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"兄夫婦を亡くした日、5歳の双子を家族にした" 第7話

蒼依はで絵を描いている。

「遅かったね」

向が言った。

責める調ではなかった。

「うん。ごめ――」

私は止めた。

「待っててくれてありがとう」

蓮がこちらを見て、しだけ笑った。

活はまだ変だった。

けれど私は初めて、自分の肩だけでを支えなくても倒れないことをり始めていた。

子供のしみは、が像するようにはまなかった。

蒼依はよく泣いた。

向は泣かなかった。

だから私は最初、向のほうが落ち着いているとっていた。

それが違いだと分かったのは、事故から1かほど経った夜だった。

「向、寝るだよ」

私が声をかけると、向は突然、持っていたミニカーをへ投げた。

きな音がした。

蒼依が肩を震わせた。

「パパとママ、いつ帰ってくるの!」

私はけなかった。

「帰ってこないって話したでしょう」

「嘘だ!」

「向」

「美緒ちゃんなんか嫌い!」

向は部へ駆け込み、扉を閉めた。

私は追いかけたが、すぐにけることはしなかった。

扉の向こうから、初めて向の泣き声が聞こえた。

私は廊に座った。

「嫌いでもいいよ」

返事はない。

「ってもいい」

しゃくりげる声だけが聞こえる。

「でも美緒ちゃんは、ここにいるから」

10分ほどして、扉がしいた。

目を真っ赤にした向がっていた。

「本当に帰ってこない?」

「うん」

「僕が悪い子だったから?」

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全がたくなった。

「違う」

私は向を抱きしめた。

「絶対に違う」

「僕、旅くにパパにった。お産2個買ってって言ったら、1個って言われて、パパ嫌いって言った」

ようやく理由が分かった。

「だから事故になった?」

「ならない」

私は向の顔を両で包んだ。

「向が何を言っても事故とは関係ない。パパは最まで向のこと好きだったよ」

「ほんと?」

「本当」

その夜、向は私の腕を掴んだまま眠った。

翌朝、別の異変に気づいた。

洗濯をしようとして、蒼依のパジャマのポケットからくなったパンがてきた。

最初は遊びだとった。

しかし次のは、さなクッキーが入っていた。

「蒼依、べ物をポケットに入れちゃだめだよ」

蒼依の顔が張った。

「ごめんなさい」

「どうして入れたの?」

しばらく黙ったあと、さな声で答えた。

「、なくなったら困るから」

胸を殴られたようだった。

両親がある突然いなくなった。

ならばべ物も、も、美緒ちゃんも、突然なくなるかもしれない。

5歳の蒼依のでは、世界そのものが信用できなくなっていた。

私は叱るのをやめた。

そのから、夕のあと必ず翌朝のパンを見せることにした。

「これ、の分」

「もある?」

「あるよ」

「も?」

「はまた買う」

「美緒ちゃんいなくならない?」

答えるに、し考えた。

事故は絶対に起きないとは言えない。

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医師である私は、その嘘だけはつけなかった。

「できるだけずっといる。でももし美緒ちゃんが困ったときは、蓮さんも文さんもいる。蒼依と向を1にはしない」

蒼依はしばらく考えてから頷いた。

私は子供のの専にも相談した。

「しみ方は2で違って当然です。泣かない子が平気なわけでも、べ物を隠す子がわがままなわけでもありません」

その言葉で、私はようやく「治そう」とするのをやめた。

私は医師だった。

だから症状を見ると、原因を探して治療したくなる。

けれどこの子たちに必なのは、両親のを忘れる治療ではなかった。

しみを抱えたままでも、今を全にきられるだった。

庭裁判所での続きは、とは別の速度でんでいった。

必な類を集め、活状況を説し、兄夫婦の財産についても理する。青いファイルに残された希望はな資料のつになったが、それだけですべてが決まるわけではなかった。

私はそのことに、むしろした。

子供のが、の勢いだけで決まらない仕組みになっている。

浦弁護士から連絡を受けるたび、私は仕事の予定を調して事務所へ通った。

ある、浦が言った。

「野さん、し顔が良くなりましたね」

「そうですか」

「最初に来られたは、何を言っても『全部やります』しか言わなかったので」

恥ずかしくなった。

「今もやるつもりではあります」

「で、が取れましたね」

その言葉に私は笑った。

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