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"兄夫婦を亡くした日、5歳の双子を家族にした" 第8話

へ帰ると、蓮がカレーを作っていた。

向が玉ねぎを切る蓮の横で、「目痛くないの」と聞いている。

「だからな」

「でも痛いよ」

「じゃあしてる」

「なんで?」

「格好つけたいから」

向が笑った。

こういうがしずつ増えた。

それでも、私はまだ指輪を受け取っていなかった。

結婚を延期したまま、蓮は週に何度かへ来る。

ある夜、子供たちが寝たあと、私は聞いた。

「蓮、本当にいいの?」

「またそれ?」

「だって、私たちが結婚したら――」

「美緒」

蓮が遮った。

「俺はあの子たちの父親になろうとしてるわけじゃない」

な言葉だった。

「え?」

「父親は浩司さんだろ」

私は黙った。

「俺が急に『今からお父さんです』って入っていったら、向たちだって困る。俺は俺でいいとってる」

「じゃあ、何になるの?」

蓮はし考えた。

「美緒の夫。あの子たちの族。それじゃ駄目?」

胸の奥がくなった。

私は、族には決まった役割が必だとっていた。

親がいなくなったなら、誰かが親の穴を埋めなければならない。

けれど蓮は、穴を埋めようとしなかった。

兄と織さんがいた所をそのまま残し、その隣にしい所を作ろうとしていた。

その考え方は、私にはなかった。

「指輪、まだ持ってる?」

「持ってる」

「なくしてない?」

「なくしたら母さんに殺される」

私は笑った。

「もうし待って」

「分かった」

蓮は急かさなかった。

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その夜、寝へ入ると、向と蒼依が同じ布団で眠っていた。

私は2のに落ちていた織さんのスカーフを拾い、枕元へ置いた。

この子たちの過を消さずに、未来を増やす。

初めて、そんなふうに考えられた。

事故から3かが過ぎたころ、保育園で族参観がわれることになった。

プリントを見た向は、しばらく黙っていた。

「どうしたの?」

「みんなのパパとママも来る?」

「来るとうよ」

「僕たちのところは?」

その問いに、私は瞬答えを失った。

「美緒ちゃんがくよ」

「蓮さんは?」

「来てほしい?」

向はし考えた。

「分かんない」

その夜、担任の先から話があった。

最、友達同士で族の話をすることが増え、向が黙り込むことがあるという。

翌、私は向に聞いた。

「何か言われた?」

「健ちゃんに、パパとママどこって聞かれた」

「何て答えたの?」

「いところ」

違いではない。

「それから?」

「お迎えに来る美緒ちゃんは誰って」

「向は何て言ったの?」

「美緒ちゃんは美緒ちゃんって」

そこで向は唇を尖らせた。

「みんな変な顔した」

私は胸が痛んだ。

「僕の族、変なの?」

すぐに「変じゃない」と言いたくなった。

けれど言葉をみ込んだ。

周りと同じではない。

それは事実だ。

「し違うかもしれない」

向が顔をげた。

「でも、違うのと変なのは同じじゃないよ」

その夜、蓮にも話した。

蓮はしばらく考えたあと、向の隣へ座った。

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「向。参観のときさ」

「うん」

「俺と美緒が、おのパパとママのふりしたほうがいい?」

私は驚いた。

向はもっと驚いた。

「やだ!」

即答だった。

「パパとママはパパとママだもん!」

蓮は頷いた。

「そうだよな」

向の顔から、しだけ緊張が消えた。

「じゃあ蓮さんは何?」

「俺?」

蓮は胸を指さした。

「蓮さん」

「それだけ?」

「それだけじゃ嫌か?」

向は考え込んだ。

蓮が笑った。

「じゃあ相棒にする?」

「相棒?」

「美緒ちゃんと向と蒼依が困ったときに来る相棒」

「なのに?」

「の相棒のほうがそうだろ」

向が初めて声をげて笑った。

参観当。

園庭で友達が蓮を指さした。

「向君、そのパパ?」

私は緊張した。

けれど向は胸を張った。

「違うよ。僕のパパは浩司っていうの。このは蓮さん」

「誰?」

向はし考え、きな声で言った。

「僕の相棒!」

友達は「へえ」と言っただけだった。

子供の世界は残酷なほど無邪気だ。

同に、がうより柔らかい。

私はその景を見ながら、初めて気づいた。

私たちは「普通の族」に見せる必などなかった。

この子たち自が、自分の族を説できる言葉を持てればいい。

半が過ぎた。

向と蒼依はしずつしい活に慣れた。

蒼依はべ物をポケットに隠さなくなった。

向も、ときどき兄の写真ので泣くようになった。

泣けるようになったことを、私は回復のつだとった。

休、私はようやく兄夫婦の遺品理を始めた。

、写真、子供たちが赤ちゃんだったころの記録。

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