みかん小説
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"夫に4千円を頼んだら、4千万円振り込まれた" 第4話

私は迷わず『必』のボタンをく押し込んだ。

排から吐きされたさな片を、ひったくるように指で挟み取る。

蛍灯のいので、印字されたばかりの黒いインクの数字に線を落とした。

『お取扱額:0円』 『お引能残:40,018,860円』

物理なのに、黒々と刻まれた現実。アプリの表示エラーなどではなかった。この械の奥にあるの巨な庫から、私は今この瞬にでも、数百万円の札束を物理に引きすことができるのだ。

私は息を呑み、誰かに覗き見られるのを恐れるように、細票を素くつに折ってコートのポケットの奥くにねじ込んだ。

コンビニをて、夜のがりてきた通りをとぼとぼと歩く。

堵など、微も湧いてこなかった。胸を支配していたのは、底れないたい恐怖だった。

夫は「正当なだ」と言った。だが、収百万そこそこの町のメンテナンスが、夜にして千万円ものをに入れられる正当な理由など、この世界のどこにあるというのか。

もし夫が私のらないところで、危険な投資詐欺の片棒を担がされていたら? もしの価な特殊属や密データを裏社会へ横流ししていたら? 警察の入れが入り、夫が逮捕されたら、私たちはどうなるのか。

母の治療どころではない。

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私たちは族ごと、社会の奈落へと転落してしまう。

アパートへ戻ると、母が布団から半を起こし、台所へ続く襖に寄りかかっていた。

「加奈……どこへってたんだい? 顔が真っ青だよ」

「え……ううん、何でもないの。の朝のパンを買いに、ちょっとそこまで」

とっさに嘘をついた私を、母の濁りのない線がじっと射抜いた。

「さっき……話で『千万』って叫んでただろ。何があったんだい? 勇君と何か揉めてるのかい?」

臓がねがった。臓病を患う母に、こんな異常事態をそのまま話すわけにはいかない。ショックで発作を起こされたら取り返しがつかない。

「違うの! あれは……勇のの械の話! ドイツ製のきな作械が壊れて、修理に千万円かかるって聞いて、驚いただけだから!」

「そうかい……」

母はそれ以追及しなかったが、私の自然に張った表を疑わしそうに見つめていた。

「勇君に、あんまり無理をさせるんじゃないよ。うちの病気のことで、あの優しい子に余計な気を使わせて……私らは貧乏だけどね、の丈にわない欲をしたら、ろくなことにならないんだから」

母の言葉が、鋭い刃となって私の胸をえぐった。

計の針は午を回ろうとしていた。階段を軋ませながらがってくる、聞き慣れたい音が響いた。

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ガチャリと鍵がき、玄関の引き戸がく。

そこにっていたのは、油と鉄の匂いを漂わせ、褪せた作業着の裾を汚した、いつもの夫だった。には古びたボストンバッグ。元には、接着剤で貼り直した全靴。

千万円というをかした男の姿とは、到底結びつかない貧相な佇まい。

勇は私の青ざめた顔を静かに見つめると、何も言わずに靴を脱ぎ、台所の粗末な卓へと向かった。

「……ただいま」

「おかえりなさい」

絞りすような私の声に、勇はくつ頷いた。そして、膝のに置いた褪せた鞄のファスナーに、ゆっくりとをかけた。

「話で言った通りだ、加奈。今から、全部見せる」

ジッパーがくい摩擦音が、静まり返った台所に響いた。

勇が鞄の底から引きしたのは、角の擦り切れた分い茶封筒だった。その表面には、信託の印章が朱で鮮に押されている。

勇は封筒から数枚の類束を取りすと、傷だらけの板のテーブルのに、枚ずつ丁寧に並べていった。

「これを見てくれ」

番に置かれていたのは、『株式譲渡制限解除ならびに買収に伴う株式買取通』という々しい表題の類だった。発元には、国内最の精密械メーカーの名が印刷されている。

「……株? どうして勇が、こんな企業の株を持ってるの?」

「俺が持っていたのは、その企業の株じゃない」勇は静かに、しかし語語を噛みしめるように語り始めた。

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