みかん小説
本棚

"夫の不倫相手の娘を9年育てた私の離婚" 第4話

お母さんと、お兄ちゃんたちが来てくれれば」

理子は寂しがるでもなく、当たりの常としてそう言った。 歳の子どもに、義母の悪を察させ、諦めを学習させてしまったことへの罪悪。 だが同に、このの子どもたちの絆だけは、何があっても守り抜かなければならないという覚悟が、私の胸ので静かに、だが鋼のようにく結晶化していった。

運命の歯が狂気じみた速度で回転を始めたのは、翌――、曜の夜だった。

その、秀は「棚卸しのち会い」を理由に朝にをて、夜の半に帰宅した。 「ああ疲れた。おい、飯」 着を子の背もたれに乱暴に引っ掛け、卓につく夫。 と公平は階の自におり、理子はちょうど呂からがって髪を乾かしているところだった。

温め直した鯖の塩焼きと豚汁をすと、秀は骨を乱雑に皿の端に寄せながら、嫌そうに愚痴をこぼした。 「曜まで働いて族をわせてやってる俺のにもなれよ。おは気楽なパートで、昼は適当に油のにってるだけだからいいよな」 「……そうね、ご苦労様」 を押し殺して皿をげると、秀はあくびを噛み殺しながらちがった。 「呂入ってくる」

そのだった。 いつもなら肌さず、脱所の棚のにまで持ち込んでいた秀のスマートフォンが、珍しく卓の端、ティッシュ箱の脇に「画面をにしたまま」

広告

放置されていたのだ。 ヶ、度たりとも忘れたことのなかった警戒。 週末の解放と、私の従順な態度に気を許した、決定な「油断」だった。

呂から、ザーッというシャワーの音が響き始める。 私はふきんをにしたまま、卓のの角い黒い端末を見つめた。 触れるつもりはなかった。の通信器を覗き見る為への理な嫌悪。 だが、その――。

ピコン。

静寂なダイニングに、子音がさく響いた。 黒い液晶画面がパッとく点灯し、緑のメッセージアプリのポップアップ通が浮かびがった。

『今度こそ、緒になれるよね?』

臓が、ドクンとねがった。 息が止まりそうになる。 髪を入れず、通目の通が、そのになるようにして画面を押しげた。

『子どもたちはさんに任せればいいじゃん。私、今更子育てなんて無理だし(笑)』

差のアカウント名。 そこに表示されていたカタカナ文字を界に捉えた瞬、私の元からが抜け落ちるような錯覚に襲われた。

【マキ】

――野島マキ。 、がの固定話に平然と話をかけてきて、『妊娠ヶです。秀さんの子です』と徹に宣告してきた、あの女。 歳になった理子をこのの玄関に置きりにし、夜のへと消えった、あの実の母親。

なぜ、今になって。 なぜ、あの女が再び秀と繋がっているのか。

広告

そして――「子どもたちはさんに任せればいい」という、戦慄すべき複数形の言葉。 と公平だけでなく、自分が産み落として捨てたはずの理子まで、完全に私に押し付けたで、は何を企んでいるのか。

呂から、湯器の止を告げるメロディが流れた。 私は震える指先を引っ込め、ふきんを握りしめながら、暗のでち尽くした。 平穏を装ったの庭のに、底れぬ悪の落とし穴がをけていた。

のあの、受話器から流れてきた野島マキの淡な声は、今でも鼓膜の裏に焼き付いている。

当、私は歳。は歳、公平は歳。 幼稚園の送り迎えとだらけの洗濯物に追われ、毎を必にき抜いていた私の常は、本の話でっ端微に砕された。 『瀬秀さんの奥様でしょうか。私、派遣社員の野島マキと申します。秀さんと半ほど交際しておりまして……現、妊娠ヶに入りました』

取り乱す様子もなく、まるで業務の納品スケジュールを伝えるような平坦な調。 その夜、帰宅した秀を問い詰めると、男はダイニングのフローリングに額を擦り付け、子どものように声をげて泣きじゃくった。 『来だったんだ! もう度と会わない、連絡も絶つ! 頼むから息子たちの父親でいさせてくれ! 母さんには絶対に言わないでくれ、臓が悪いんだからショックでんでしまう!』

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: