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"「父の31億を狙った泥棒女」と罵られた私。孤独な老人に贈った2180円のラーメンが、巨大金庫の上に供えられていた" 第5話

その箱に触れないでください

「その箱に触れないでください」

さくらの声に、美穂の指が止まった。

鳴ったわけではない。それでも、斎に入ってから度も態度を変えなかった黒田が、初めてさくらへ鋭い線を向けた。彼女が何を守ろうとしたのか、確かめるような目だった。

美穂はゆっくりを引き、赤い爪を胸元で揃えた。

「何、その言い方。これはお義父さんのにある物でしょう? あなたに命令される筋いはないわ」

「源蔵さんが切にしていた物です」

「こんないラーメンを?」

美穂は箱の側面にある特売シールを見つけ、吹きした。

「やだ、本当にスーパーの特売品じゃない。これを持ってきたの、あなた? こんな物で恩を売って、庫の所を教えてもらったのね」

「美穂、もう分かっただろ」

健は勝ち誇ったように顎をげた。

「親父は最、判断力が落ちていた。そこへこの女が入り込み、い物を渡して信用させた。典型な齢者相の詐欺だ」

つい先ほどまで父親のを「説はあとでいい」と切り捨てた男が、父親を案じる族の顔を作っていた。けれど、その演技はあまりにい。健の線は話しているも庫かられなかった。

「さんがこのに入ったのは、本が初めてです」

黒田が帳を閉じた。

「警察官の確認を受け、遺言執者である私が、源蔵様の面による指示に従ってち会いをお願いしました。

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箱を渡した経緯も、隣スーパーの購入記録とさんの説が致しています」

「弁護士なら、赤のじゃなく依頼の族を守れよ」

「私は依頼のを守っています」

黒田は声を荒らげなかった。

「先ほどから、あなたは源蔵様の因も、くなった刻もお尋ねになっていません。最初に確認したのは庫でした」

健の元が引きつった。

「親父は79だぞ。いつんでもおかしくないだった。それより、財産が盗まれないように確認するほうが先だろうが」

「では、その発言も記録しておきます」

黒田が再びペンをらせる。美穂が苛ったように舌を鳴らした。

「さっきから記録、記録って、脅すつもり? 族の会話でしょう」

「ここは類を保管する部です。源蔵様の指示により、入と庫周辺は常録画されています」

黒田が井の隅を指した。型カメラの緑のランプが点滅している。

健は反射に顔を背けたあと、子を引き寄せてカメラへを伸ばした。だが、源コードを抜くよりく、入にいた警察官が腕をつかんだ。

「現の物には触れないでください」

「せ。これはうちの設備だ」

「所関係の確認が終わっていません。映像を消すれば、別の問題になりますよ」

警察官の言葉で、健はようやくをろした。代わりに子の脚をへ叩きつけ、さくらを睨む。

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「になればが分かる。遺言が何だろうと、血のつながった息子は俺ひとりだ。親父の財産は俺が受け取る」

「遺言の内容をごじなのですか」

さくらが静かに尋ねると、健はで笑った。

「る必もない。常識で考えれば分かる。会社を継いだのも俺、族として最まで面倒を見たのも俺だ」

さくらは廊の先にある、の切れた寝をった。封を切られなかった宅配弁当。空にい蔵庫。擦り切れたジャンパー。

「最まで、ですか」

「何が言いたい」

「いいえ。、源蔵さんの言葉を聞けば分かることです」

健が言い返すに、黒田が翌朝10から百法律事務所で公正証遺言を確認すると告げた。相続関係者には正式な連絡をうため、今夜は庫を封印し、警備会社を入れるという。

「勝に決めるな」と健は鳴ったが、警察官と警備員が到着すると、さすがにそれ以はをせなかった。

帰り際、美穂は玄関でハイヒールを履きながら、さくらへ顔を寄せた。

「の朝、泣いて謝っても遅いわよ。あなたが受け取れるのは、あのべ残しの箱くらいだから」

健もコートを羽織り、さくらを指さした。

「遺言がいたら、盗んだ物を円残らず返してもらう。座だけで済むとうなよ」

を乗せた輸入がりると、古いに静けさが戻った。

さくらは斎へ戻り、神棚のにった。箱のは30分、購入価格は2180円。それなのに源蔵は、数億円の資産を守る庫よりい所へ置いた。

黒田が、源蔵の枕元にあった封筒を差しした。

「今夜、これをお読みください。の遺言確認に席するかどうかは、そのあとで決めていただければ結構です」

封筒を受け取ると、越しにさない物が指へ触れた。

にはだけでなく、本の古い鍵が入っていた。

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