みかん小説
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"「父の31億を狙った泥棒女」と罵られた私。孤独な老人に贈った2180円のラーメンが、巨大金庫の上に供えられていた" 第15話

庫より切だったもの

の、源蔵の旧宅には、昼から噌汁のりが漂っていた。

傾いていたどいは直され、ひび割れた壁は淡いに塗り替えられている。玄関には緩やかなスロープがつき、のは数が座れるるい堂へまれ変わった。

入のさな板には、「よりみち堂」とある。

利用料は300円。支払いが難しいには、配団体の助成券が使える。無料を面にさなかったのは、源蔵のように施しを嫌うでも入りやすくするためだった。

「さん、今も来たよ」

杖をついた男性が、申し訳なさそうに財布をした。

「根の煮物を作りすぎました。むしろ助けてもらえますか」

「またその言い方か。ここへ来ると、伝わされてばかりだな」

男性は笑い、券売へ300円を入れた。その横では、所のが配膳を伝っている。

さくらは毎堂にっているわけではない。午は以と同じように、仕事部で翻訳を続けている。週には御厨産へき、社の専や田所と経営報告を確認する。

源蔵の遺贈を受けると決めた際、さくらは代表取締役には就かなかった。経験のある部材を社に迎え、自分は株主として監督に回った。らないことをっているふりで押し通すのは、健と同じ過ちになるからだ。

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会社は架空契約を理し、空のかった古い物件を齢者向け宅へ改修した。田所は取締役兼財務責任者となり、定額を超える支には複数の承認が必になった。

源蔵が残した社員活支援基もき始めている。介護や病気でに勤務を減らす社員へ、最かの補助をす制度だ。かつて源蔵の異変に気づきながら声をげられなかった社員たちも、今は改善提案を直接提できる。

健について、黒田から届く報告は簡潔だった。

民事の解が成し、保資産を処分したあとも残る額を、毎返済している。刑事事件は捜査と司法判断に委ねられ、さくらがを挟むことはなかった。美穂との婚も成したが、彼女自が受け取った銭と売却品の返還義務まで消えたわけではない。

さくらは報告を読み終えると、専用のファイルへ閉じた。が苦しむ様子を何度も像する必はなかった。源蔵の会社から奪ったものを、現実の数字として返していく。それが結果だった。

午3、最の利用者を見送ったあと、さくらは廊の奥にある斎へ向かった。

この部だけは、きく姿を変えていない。古い帳簿は会社の資料庫へ移したが、創業の机と写真、型耐庫は残した。分いカーテンをしたため、以よりずっとるい。

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庫のに保管されていた権利や証拠資料は、すでに必な所へ移されている。今では巨な扉をけても、内部の棚はほとんど空だった。

それでも、庫の側にあるの神棚には、あのと同じ段ボール箱が置かれていた。

赤い特売シールはしあせている。30分のラーメンはの理由で処分し、代わりに空箱のへ源蔵のと、よりみち堂の最初の券を納めた。

「源蔵さん、今の利用者は23でした」

さくらは神棚へ報告した。

「会社の皆さんも元気です。田所さんは相変わらず数字に厳しくて、改修費が予算を2万円超えただけで、務とも確認していました」

誰もいない部で、わず笑みがこぼれた。

神棚の隣には、き夫の写真も置いてある。以は写真を見るたび、戻らないばかり数えていた。今は「ってきます」と「ただいま」を言える。

堂のほうから、鍋のふたが落ちる音がした。

「さん、すみません。片づけていたら——」

の慌てた声が聞こえる。

「今、きます」

さくらは神棚へ礼し、斎をようとした。扉ので振り返ると、の差しが段ボール箱の角を照らしていた。

源蔵が残した31億円は、くの建物と会社を守った。だが、夫を失って止まっていたさくらのをかしたのは、財産ではない。

寒い夕方、ひとりの老が両腕で受け取ってくれた、2180円の箱だった。

巨な庫のより、そのに置かれた箱のほうが、さくらのを豊かにしてくれた。

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