"母の葬儀から戻ると、私の寝台はもうなかった" 第3話
と何度も周囲を見た。
「私がいなかった3だけでいいの。勤務表に私の名があるか見てほしい」
久子はすぐには返事をしなかった。だがが「判を押したら、私が勝に辞めたことになる」と言うと、唇をかみ、翌の昼休みに確認すると約束した。
次のの夕方、久子はの裏にある共同までを呼びした。顔が悪く、エプロンのポケットので両を握りしめている。
「ちゃん、3とも名があった」
「残業も?」
「全部、細と同じ。でもね……」
久子は声をさらにさくした。
「半に辞めた芳さんの名も、先週の夜勤表にあったよ」
は返事ができなかった。
自分の3だけなら、まだ記入違いと言えた。
だが半もにを辞めた女が、なぜ先週の夜勤をしているのか。その問いに答えられる者が、のにはいるはずだった。
久子が見た勤務表は、第紡績の各班が毎朝事務所へ提するものだった。氏名の横に勤、欠勤、夜勤、残業が記され、末になると与計算の基礎に使われる。女たちは自分の欄だけを見ることがく、の番号まで気にする者はほとんどいなかった。
「芳さんは4に辞めたよね」
が確認すると、久子はうなずいた。「お父さんが倒れて福井へ帰ったでしょう。みんなで駅まで見送りにったもの。
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なのに今の表に、芳さんの番号が2回てる」
文代のへ戻ったは、古い所録をいた。寮にいたころ、故郷へ帰った仲へ賀状をそうと、何かの所をき写していた。そのに芳の実もあり、は翌朝、わずかなを使って福井へをした。
返事を待つにも久子はしずつ調べた。退職者だけではなく、肺を悪くして1か以休んでいる富美、実の農繁期で期休暇を取った澄代、結婚のため9初めに退職した子の番号まで、ときどき勤務表に現れていた。毎ではなく、夜勤の数がりないや残業がいに限っているため、注して比べなければ気づかない。
は自分の古い細を机いっぱいに広げた。女番号317。入社したから同じ番号だった。では同姓の女もいため、名より番号で扱われることがあり、洗濯袋にも作業着にも317と縫い付けてある。
「名を残して何になるんだろう」
文代が尋ねた。
「分からない。でも、働いてないが働いたことになってるなら、誰かがそのに械のにいたはず」
はそこまで言って、寮の階で見た女をいした。自分の寝台のそばにっていた、まだ学にも見える柄な女だった。
数、芳から返事が届いた。《私は412以、度もへ戻っていません。
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料も4分を最に受け取っていません》とかれていた。さらに芳は、退職するとき森から「類はこっちで片づける」と言われ、退職届を自分ではかなかったとも記していた。
はそのを読んでから、久子に頼んで芳の番号を調べてもらった。4以、計11回。夜勤7回、残業4回。芳が福井で父を病している、帳面のだけではで働き続けていた。
「これ、違いじゃないよ」
が言うと、文代も否定しなかった。
しかし誰が芳の代わりに働いていたのかは分からない。勤務表には番号しかなく、のを通る女の数はかった。方から集団就職でしい女が来れば、寮母が名を呼んで部へ割り振り、翌には同じ作業着を着せられる。
は毎夕方になると、くの共同浴や雑貨ので女たちを待った。骨に話しかければ森のに入るため、昔の仲へ挨拶するふりをしながら、しく入った女のことを聞いた。そので何度もてきたのが、の寝台を使っている女だった。
名は佐藤千代。のから来たばかりで、15歳になったばかりだという。9の女と緒に列でへ来たが、へ到着した点で必な類が全部そろっていない子もいたらしい。
「千代ちゃんたち、来た次のから働いてたよ」
久子は言った。「見習いだから料はまとめてでもらうって、森さんが説してた」
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