"母の葬儀から戻ると、私の寝台はもうなかった" 第6話
は退職届から印鑑をした。
列が1遅れたからではない。
無断欠勤したからでもない。
母の葬儀へ向かった翌には、はの番号と寝台を別の女へ渡していた。
そしてが戻ってきてしまったからこそ、《317》というつの番号に2の女がすることになった。
その矛盾を消すためには、どちらか1を帳面から消さなければならない。
は退職届をつに折った。
「文代さん。私、判を押さない」
それから千代の作業割当票を見つめた。
「私が辞めたことにされるから、誰かが私を辞めさせる準備をしてた。だったら、ほかのも同じかもしれない」
が次に調べるべきなのは、自分の3だけではなくなった。
の帳面から消された女と、帳面のだけに残された女。
その両方を探さなければならなかった。
翌朝、は故郷の伯母、志乃へをいた。正男には直接らせなかった。《のことはし待ってください。私には今、判を押してはいけないがあります。正男には、私が仕事を探しているとだけ伝えてください》とき、事は詳しく記さなかった。
を投函したあと、は福井の芳を訪ねるため、残ったから汽賃をした。文代は「そんなに使ったら本当に帰れなくなる」と配したが、は芳本の話を聞かずにへ何かを訴えても、「女同士の勘違い」
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で片づけられるとっていた。
芳は実のさな商で父を伝っていた。が勤務表の写しを見せると、驚くより先に腹をてた。「4に辞めてからには度もってない。最の料袋だってここにあるよ」
芳は箪笥から古い与袋を持ってきた。退職の細には412までの勤務しかない。ところが久子がき写した勤務表では、そのも芳の番号204が何度も夜勤へ入っている。
「退職届は?」
「森さんが『こっちでくから判だけ押せ』って。父が倒れて急いでいたから、言われた通りにした」
「を読んだ?」
芳は首を振った。「そんな余裕なかった。汽のばかり気にしてた」
はその言葉に胸を突かれた。母の葬儀から戻った自分も、弟妹の活を考えれば、同じように判を押していたかもしれない。急いでいる者、困っている者、故郷に族を抱える者ほど、の内容を確かめるを持てない。
へ戻ったは、今度は病気で期休養していた富美を訪ねた。富美は肺炎で8から実へ戻り、医者から復帰を止められていた。それでも9の勤務表には、彼女の番号が6分残っている。
「休んでいる、料はもらった?」
「もらってないよ。寮費だけし残ってるから、復帰したら精算すると言われた」
「誰かが富美さんの番号を使っていたかもしれない」
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が説すると、富美はしばらく黙ったあと、古い封筒をした。そこにはから届いた《休職確認》の通があり、9末まで就業能と記されていた。自が働けないと認めた女を、別の勤務表では夜勤させていたことになる。
は証拠を種類ごとに分け始めた。本が持つ与細、から届いた通、久子が写した勤務表、千代の作業割当票。それぞれ単独なら「記入ミス」「締めのずれ」「仮番号」で説できるかもしれない。
だが複数をねると、説同士がい違った。
その方で久子の様子がおかしくなった。以は夕方になると共同へ来ていたのに、2続けて姿を見せない。3目、ようやく現れた久子は、を見るなり泣きそうな顔をした。
「もう、私には頼まないで」
「森さんに何か言われた?」
久子は答えなかった。けれどが黙って待つと、やがてさな声で言った。「弟が来、学をるでしょう。関連会社に入れてもらう話があったの。森さん、それをってた」
余計なことを続ければ、その話はなくなる。
そう言われたという。
は久子を責めなかった。自分だって正男の名を机に置かれた、退職届へ判を押しかけた。「もう調べなくていい。今まで見てくれただけで分だから」と言うと、久子は何度も謝りながら帰っていった。
その夜、は集めたを並べた。
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