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"昭和29年、夫を亡くした私から船が奪われた" 第12話

井は俯いた。

徳蔵も黙っていた。

最終に、正の徳蔵関係の未返済額は6400円と確認された。発修理の漁協貸付についても再計算され、別費用へ振り替えられた分をに残へ含めないよう訂正された。

徳蔵は会議のあと、志津へ言った。

「俺も1万8400円だとっとった」

「だからを残すんです」

「分かったよ」

「本当に?」

「お、正よりしつこいな」

志津は久しぶりに笑った。

だが、もうつ残っている問題があった。

正の《漁使用に関する承諾》である。

井は、正が発修理の保証を頼む際、「もし自分が働けなくなったら徳蔵にを使わせる」と自分から言ったのだと説した。徳蔵も、その話自体は認めた。

ただし志津の印については、誰もはっきり答えられなかった。

数、信夫がいした。

「、父ちゃんが母ちゃんの判子を借りた、俺、漁協までついていった」

志津は息子を見た。

「で井さんがを何枚かねて、父ちゃんにここ、ここって言ってた。父ちゃん、自分の判子押したあと、母ちゃんのも押してた」

正自が押した能性がかった。

志津は胸が痛んだ。

夫が妻を騙そうとしたのか。それとも「族のだから自分が押しても同じ」と考えただけなのか。もう本へ聞くことはできない。

ただつ確かなのは、正でさえ「夫婦なら同じ」

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とい、志津本の確認を取らなかったことだった。

それは井や徳蔵だけの問題ではない。

正もまた、その代のできていた男だった。

志津は承諾の写しを畳んだ。

夫を悪にする必はない。

けれど、していたからといって、夫が違えなかったことにする必もなかった。

の初め、正のについてしい登録続きがみ、志津たち相続側でを引き継ぐ見通しがった。子どもたちが未成であるため簡単ではなかったが、なくとも徳蔵へ当然に渡すという話は消えた。

漁協についても、志津は必な条件を満たすため操業記録をつけ始めた。源や清吉と緒にへた、自分で網を扱った、魚を選別したまで記録した。組も、今は「女だから」という理由だけで申請を払いしないと約束した。

井は役員を辞めなかった。

志津も辞めろとは言わなかった。

ただし貸付と揚げ精算について、毎本へ残を示すことになった。控除を別用途へ振り替えるも、理由を記する。さな変更だったが、浜ではそれまで誰も求めてこなかったことだった。

そして7の朝。

志津は正のへ乗った。

源が尾に座り、信夫は岸から見ている。信夫も乗りたいと言ったが、志津は学のあるは駄目だと断った。

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発をかけると、懐かしい振がの裏から伝わってきた。

正が隣にいないは、以より広くじた。

志津は港をる直、度だけ振り返った。

徳蔵が自分のからこちらを見ていた。

何も言わない。

志津も何も言わなかった。

へれば、潮は男にも女にも同じように流れる。だがから戻ったあとの暮らしには、い、男と女で違うが用されていた。

志津はその、沖へすぎなかった。

で鯵と鰯を獲り、昼には戻った。

港へ着くと、井が集荷のにっていた。

「今はここへすのか」

志津は魚箱を見た。

以なら、そこでを張って全部町へ持っていったかもしれない。

だが今は違った。

「きい鯵は組へします。さいのは町へ持っていきます」

井が眉をひそめる。

「分けるのか」

「値を見て決めます」

「勝だな」

「商売ですから」

しれたところで徳蔵が吹きした。

志津はきな鯵を共同売へし、鯵と鰯は自分の客へ運んだ。どちらかつを倒す必はなかった。共同販売が利な魚は共同で売り、自分で売った方が暮らしを守れる魚は自分で売る。

その選択を、自分でできること。

志津が欲しかったのは、それだった。

それから2、崎の暮らしは急に豊かになったわけではなかった。に漁がなければ貯を崩し、がをせば志津は町へ売りにけないもあった。

の修理代も必で、徳蔵への6400円も度には返せなかった。

それでも、の流れは以とはまるで違った。

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