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"昭和29年、夫を亡くした私から船が奪われた" 第14話

それで持っていけ」と言い、魚箱を台へ載せた。

志津が代を数えて渡すと、徳蔵は受け取りながら港の方を見た。

「正が見たら、何て言うかの」

志津も同じ方向を見た。

沖にはさなが何隻も浮かんでいた。

「たぶん、値段がいって文句を言います」

徳蔵は声をして笑った。

志津も笑った。

正を失ったしみが消えたわけではない。

夫が隠していた借も、勝に押した志津の印も、聞きたかったことは今も残っている。

それでも、んだへ答えを求め続けるだけでは、きている4の暮らしはへまない。

夕方、を閉めるに信夫が学から帰ってきた。

「母ちゃん、の曜、源さんのに乗っていい?」

「宿題は?」

「終わった」

「本当に?」

「幸子に聞いてもいい」

ろから幸子が「半分しか終わってないよ」と叫んだ。

信夫が振り返ってり、が笑った。

志津は魚を包んでいたを止め、3を見た。

3。

信夫は「俺が男だから」と言って、徳蔵のへ自分からこうとした。

今は宿題を終えたかどうかで妹と喧嘩している。

それでよかった。

志津は売り台のから帳面を取りした。

今買った魚。

売った魚。

残った魚。

徳蔵へ払った。

澄とフミの賃。

つずつ数字をいた。

最に現を数え、帳面の残とわせる。

ぴたりとった。

志津は帳面を閉じた。

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夫がくなった翌朝、井は志津のからの鍵を取りげた。

「女では無理だ」

徳蔵はそう言った。

「魚を獲っても、今までどおりには売れん」

それも本当だった。

実際、志津は今までどおりには売らなかった。

自分で客を探した。

売れない魚の売り方を変えた。

漁師から直接買った。

女たちにも働いた分のを払った。

借りたには領収を求めた。

分からない残には説を求めた。

そしてへ乗ることも、魚を売ることも、息子のを決めることも、誰かの男へ預けなかった。

翌朝。

まだ暗いうちに、志津は港へ向かった。

自分ののでち止まり、着のポケットから鍵をす。

あの、井の懐へ消えたのと同じ鍵だった。

鍵を差し込み、発をかける。

い音が静かな港へ広がった。

岸では信夫が網を抱え、源のへっていくところだった。

「母ちゃん!」

呼ばれて、志津が振り返る。

「何?」

「今はどっちがく獲るか勝負な!」

志津は笑った。

「学の宿題を半分残したとは勝負しません」

信夫の顔が固まり、れたところで幸子が笑った。

志津はを岸からした。

朝がの向こうからがり始めていた。

の舳先が、さな波をつに割っていく。

正と乗っていたと同じだった。

けれど、もう誰かのろへ乗せてもらっているではない。

誰かにべさせてもらうためのでもない。

志津は舵を握り、自分で沖を見た。

そして自分で、今向かう所を決めた。

――

※本作は昭29の瀬戸内沿岸漁を台にしたフィクションです。物、潮見浦漁協、崎鮮魚、作の貸付・精算トラブルなどは創作です。

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