"妻のスマホに残っていた半年先の「2名様」" 第3話
名様
翌、仕事へっても私は集できなかった。
私は定も週3だけ、以勤めていた会社の関連会社で顧客対応を伝っている。活のためというより、妻をくしてからに1でいるが増えすぎたため始めた仕事だった。午に2件の話を受けたが、相の会社名を聞き返してしまい、自分でも驚いた。
昼休み、美のスマートフォンをもう度いた。
メールの検索欄に名を入れる。
予約確認以には何もない。
次にメッセージを検索したが、友や織との会話にも「ル・シエル」という名はなかった。
そこで私は初めて、嫌な像をした。
美には、私のらない誰かがいたのではないか。
すぐに否定した。
21緒に暮らしてきた。
病気になってからは、私が病院へかないはほとんどなかった。美の活に、私のまったくらないが入り込む余などあったとはえない。
それでもは、相のすべてをっているわけではない。
夫婦だからこそ、そうい込んでいるだけなのかもしれない。
私は自分がそんなことを考えたことに腹がった。
くなった妻は反論できない。
何を疑われても「違う」と言えない。
そんな相に向かって、たった1件の予約だけで何を考えているのか。
午、織からメッセージが来た。
広告
《昨ののこと、何かあった?》
私は《何でもない》と返した。
だが、何でもなくはなかった。
帰宅すると、私は美の古い帳をした。
入院まで使っていたの帳で、病院へ持っていった物とは別のものだ。計の引き落としや図館の勤務、歯科検診などが細かくかれている。
予約のページは空だった。
にも、それらしい名はない。
私は帳を閉じた。
そこまで調べてから、急に自分が嫌になった。
「何やってるんだ、俺」
にした。
半、私は美がいないことを受け入れられずにいた。
それなのに今度は、くなった妻の秘密を探している。
仮に誰かいたとして、どうするのだ。
るのか。
しむのか。
21を疑うのか。
もう本には何も聞けない。
私はスマートフォンを机に置いた。
そのまま1ほどテレビを見たが、内容はほとんどに入らなかった。
夜10を過ぎてから、もう度メールをいた。
今度は予約確認メールの送信元を詳しく見た。
そこにはの話番号が載っていた。
営業は1130分から22。
まだ営業している。
話をかければ、予約をしたのことを何か覚えているかもしれない。
しかし私は番号を押せなかった。
員に「くなった妻が誰と来る予定だったか教えてください」と聞く自分を像すると、けなくなった。
広告
結局、その夜は話をしなかった。
翌朝も、昼もかけなかった。
ところが曜、美のスマートフォンにから自メールが届いた。
《ご予約がづいております》
《ご来をよりお待ちしております》
その文章を見た瞬、私は別のことに気づいた。
このまま何もしなければ、曜の19、は美を待つ。
来るはずのないのために席を空け、料理を準備するかもしれない。
それは駄目だとった。
相が誰だったかをりたいからではない。
予約を取り消すためだ。
そう自分に言い聞かせ、私はへ話をかけた。
「はい、ル・シエルでございます」
若い女性の声だった。
「あの、今週の曜に予約が入っているとうんですが」
「お名をお願いいたします」
私は妻の名を告げた。
「森川美です」
キーボードを操作する音がした。
「はい。19から2名様で承っております」
やはり2だった。
私は度目を閉じた。
「実は、その予約をした妻が、半にくなりまして」
話の向こうが静かになった。
数秒、女性がさな声で言った。
「……そうでしたか」
「すみません。予約をキャンセルしてください」
そう言って話を切ろうとした。
そのだった。
「あの、お客様」
女性が私を止めた。
「失礼ですが、ご主様でいらっしゃいますか?」
私は受話器を持ち直した。
「はい」
「お名を伺ってもよろしいでしょうか」
「森川直です」
再び、い沈黙があった。
すると女性の声がらかに変わった。
「森川直様……々お待ちいただけますでしょうか」
「何かあるんですか」
「確認いたしますので、そのままでお願いいたします」
保留音が流れ始めた。
私は台所の子へ座った。
予約をキャンセルするだけの話だったはずだ。
それなのに、員はなぜ私の名を聞いたのか。
そしてなぜ、「森川直」という名を聞いた途端、誰かへ確認しにったのか。
---
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
置き去り後27分
給与口座の通帳と暗証番号を義母へ渡すよう迫られた美和。拒絶すると、夫は彼女を真冬の国道へ置き去りにし、「怖い思いをすれば折れる」と走り去った。 美和は泣いて追いすがらず、900メートル先のファミレスで夜を明かす。翌朝、夫から届いていたのは41件の着信と、「すぐに戻った」という釈明だった。 だが店を出ようとした美和を、見知らぬトラック運転手が呼び止める。彼のドライブレコーダーには、夫が戻ったのは27分後だったこと、さらに義母との電話で置き去りの目的を語る肉声まで残されていた。 口座を守るための夫婦喧嘩だと思っていた夫。しかし映像が暴いたのは、妻を恐怖で屈服させようとした計画的な支配だった。美和は金だけでなく、自分の人生を決める権利を取り戻すため、24年間の結婚に静かに決着をつける。夫婦|第二の人生|ATM扱い|金銭問題2.2万字5 0 -
完結第12話
産後5日、家を売られた私の人生やり直し
出産から5日後、生まれたばかりの娘を抱いて帰宅した美緒を待っていたのは、家具も家電も消えた空の部屋だった。夫はマンションを売り、妻の預金860万円を持ち出し、愛人との新生活へ逃げていた。さらに、美緒の署名を偽造した離婚届まで提出されていた。 結婚指輪を売って実家へ帰る切符を買った美緒は、駅で妻の最期に間に合わないと嘆く老人へ、その切符を譲ってしまう。 数日後、老人は企業グループの創業者として美緒の前に現れた。しかも夫が盗んだ金で設立した会社は、老人の会社へ1億2000万円の出資を求めていた。 すべてを奪って勝ったつもりの夫は、まだ知らない。自分の会社の命運が、捨てた妻の手元に集まり始めた証拠によって左右されることを夫婦|裡の顔|金銭問題1.7万字5 16 -
完結第16話
夫の不倫相手の娘を9年育てた私の離婚
「離婚します。息子2人は連れていきます」 そう告げた雪に、夫と義母は11歳の理子まで連れて出ろと言い放った。だが理子は、雪の親戚の子ではない。夫が不倫相手との間にもうけ、9年前に雪へ押しつけた実の娘だった。 血のつながらない理子を母として育ててきた雪。ところが夫は、再び理子の実母と関係を持ち、3人の子どもをすべて雪に背負わせて「自由」になる計画を進めていた。 しかし二人は知らなかった。雪と理子の間に法的な親子関係がないことが、彼らを逃げ場のない立場へ追い込む最大の切り札になることを。嫁姑|夫婦|真相|ATM扱い|親子関係2.4万字5 339 -
完結第10話
31年間、母が捨てなかったマットレスの秘密
31年間、両親が頑なに使い続けてきた古いマットレス。中央は大きく沈み、父の腰痛も悪化していたが、母はなぜか買い替えを拒み続けていた。 息子のデイヴィッドは、両親を旅行へ連れ出した隙に新しいものと交換しようとする。ところが搬出業者から、「お母様を寝室へ入れず、まず一人で確認してください」と切迫した電話が入る。 マットレスの下から現れたのは、古い手紙や小さな靴、写真、ぬいぐるみ。そこには両親が31年間、息子にさえ存在を明かさなかった幼い娘・グレースの記憶が封じられていた。 娘を失った悲しみから逃げるため、名前すら口にしなくなった父。そして誰にも見つからない場所で、毎年娘へ手紙を書き続けた母。古い寝台が取り払われた日、沈黙の下に閉じ込められていた家族の時間が、ようやく光の中へ戻り始める。ミステリー|真実|真相|親子関係1.5万字5 6 -
完結第15話
午前2時17分、亡き妻が病室を訪れる
午前2時17分。夜勤看護師の由衣は、面会時間を過ぎた病棟で黒いコートの女性を目撃する。 女性が立ち止まったのは、家族との連絡を拒み続ける71歳の患者・久世修一の病室前。だが受付記録にも防犯カメラにも姿はなく、乗り込んだエレベーターからも忽然と消えていた。 修一は女性の特徴を聞くと顔色を変え、10年間疎遠だった娘へ連絡してほしいと頼む。やがて判明したのは、黒いコートが10年前に亡くなった妻・美佐子のものと同じだったこと。そして彼女が息を引き取った時刻も、午前2時17分だった。 妻の最期に間に合わなかった父と、その父を許せなかった娘。再び同じ時刻にエレベーターが開く夜、10年間止まっていた家族の時間が静かに動き始める。ミステリー|夫婦|真実|真相1.4万字5 1 -
完結第10話
60万円の命の値段
危篤の父を救うため、夫に60万円を貸してほしいと土下座した美央。だが夫は、父を「無価値な老人」と嘲り、金を拒んだうえ、離婚と義母の無給介護まで言い渡した。 美央は静かに家を出て、3年間封印していた一本の電話をかける。 彼女の正体は、日本最大級の企業連合「天馬グループ」の後継者。そして夫が誇る勤務先は、その巨大組織の末端企業にすぎなかった。 調査を進めると、夫の横領だけでなく、総額3億2000万円に及ぶ不正取引への関与まで判明する。何も知らない夫は、父の葬儀へ美央を連れ戻しに来ると宣言した。 しかしその会場で彼を待つのは、捨てた妻ではなく、数万人の頂点に立った新たな統帥だった。裡切られた|怒り|夫婦|介護|修羅場1.5万字5 14 -
完結第11話
夫に4千円を頼んだら、4千万円振り込まれた
母の検査代に必要な四千円すら用意できず、加奈は夫の勇人へ震える声で助けを求めた。ところが直後、口座へ振り込まれたのは四千円ではなく、四千万円。町工場で働き、擦り切れた靴を履き続ける夫が、なぜこれほどの大金を持っているのか。 帰宅した勇人が差し出したのは、十六年前に受け取った未公開株と、巨額買収を証明する書類だった。しかし、手続きは三か月も前から進んでいた。母の病気に苦しむ加奈へ、なぜ彼は何も話さなかったのか。 不信を募らせる加奈の前で、病床の母が静かに告げる。 「この子の秘密は、あんたと結婚する前から知っていたよ」 四千万円より重い、母と夫だけが抱えてきた十六年前の約束とは――。夫婦|親子関係|介護|金銭問題1.6万字5 264 -
完結第13話
兄夫婦を亡くした日、5歳の双子を家族にした
医師の美緒を育て、医学部まで送り出してくれた兄夫婦が、突然の事故で同時に亡くなった。残されたのは5歳の双子。16年前、自分を引き取ってくれた兄への恩を返すため、美緒は二人を育てると決め、婚約者の蓮へ一方的に別れを告げる。 「子供を育てることが、借金返済なのか」 蓮の言葉にも、美緒の決意は変わらなかった。ところが兄夫婦が残した《もしもの時》というファイルには、美緒を最初の相談相手に指定すると同時に、意外な一文が記されていた。 《美緒に一人で決めさせないこと。必ず桜井蓮にも相談する》 受け取った愛情を返すため、自分の幸せを諦めることは本当に正しいのか。二人の子供と婚約者、そして周囲の手を借りながら、美緒が「犠牲ではない家族」の形を探していく物語。兄弟姉妹|夫婦|第二の人生|修羅場2.0万字5 486