"昭和24年、帰還した夫の家に別の夫がいた" 第4話
文子が隠していたこと
それから半ほど経った夜。
仕事から戻ると、借り先のに文子がっていた。
昔より痩せたように見えた。
「し話せる?」
清太は黙って戸をけた。
畳の部へ文子を通す。
文子は布団組と鍋しかない部を見回した。
「ここで暮らしてるの?」
「ああ」
「べてる?」
「きてる」
文子はしだけ顔を曇らせた。
昔なら、
「またそういう言い方して」
とっただろう。
今は何も言わなかった。
清太が先に聞いた。
「浩は、俺が自分を捨てたとってる」
文子の肩がわずかにいた。
「おが言ったのか」
「違う」
「じゃあ誰だ」
「誰かが言ったわけじゃない」
「歳の子どもが勝にそううのか」
文子は膝ののを握った。
「私が悪いの」
清太は黙った。
「浩を姉さんのに預けたのは、べ物だけが理由じゃない」
予はしていた。
それでも胸がくなる。
「政男さんがへ来るようになってから、浩は何度もったの」
「何て?」
「父ちゃんは帰ってくるって」
清太の指がいた。
「らない男をに入れるなって。歳の子が、私に鳴ったの」
文子の声が震えた。
当、文子自も迷っていた。
清太を待ち続けるのか。
んだと受け入れるのか。
親戚からは何度も言われた。
「いつまでを待つ」
「若いうちに再婚した方がいい」
「男の子抱えて、女だけでどうきる」
その度に文子は清太の遺すら作れずにいた。
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「ある夜、政男さんと話したの」
文子は続けた。
「清太さんが帰ってきたら、私はどうしたらいいのって」
清太の喉が乾く。
「政男は何て」
「帰ってきたに考えればいいって」
「……それを浩が聞いた?」
文子が頷いた。
翌朝、浩はをびした。
「母ちゃんは父ちゃんを待ってない」
泣きながらそう言った。
それから政男が来るたび、浩はをて所を歩き回るようになった。
度は夜まで帰らなかった。
初枝が配して、
「しばらくうちで預かろう」
と言った。
「私は……ほっとしたの」
文子は涙を落とした。
「浩がいなくなれば、政男さんといることを責められないとった」
清太は何も言わなかった。
「べ物があるから。体がいから。そうやって理由をつけた。でも本当は、私は息子から逃げたの」
清太の胸の奥にりが湧く。
しかし文子の泣き顔を見ても、そのりをどこへ向ければいいのか分からなかった。
「それで再婚した?」
「に」
「しい子も産んだ」
文子が顔をげた。
「その言い方はやめて」
「違ってるか」
「違ってる」
文子の声が初めてくなった。
「私はあなたが帰ってこなくても平気だったとってる?」
「俺は帰れなかった」
「分かってる!」
文子が叫んだ。
「今なら分かる。でもそのはらなかった!」
清太は黙った。
文子は涙を拭った。
「復員してくるがいるって聞くたび駅までった。
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名簿がれば名を探した。戸が鳴れば清太さんじゃないかとった」
「それでも政男を選んだ」
「きなきゃいけなかったから」
「俺だってきてた」
「らなかったの!」
その言で部が静まった。
とも悪くない。
そう言えば綺麗だった。
だが実際には、互いに傷つけるだけの理由が分にあった。
帰り際。
文子が戸でち止まった。
「つだけ、言っておく」
清太は顔をげない。
「政男さんは、浩を追いしてない」
「ならなぜ戻さなかった」
「何度も戻そうと言った」
清太が初めて文子を見る。
「私が断ったの」
「なぜ」
文子は答えるまでいがかかった。
「浩が戻ってきたら、私に聞くから」
「何を」
文子は震える息を吐いた。
「父ちゃんは本当にんだのかって」
清太の目がいた。
「私は、その質問に答えるのが怖かった」
そして文子は、もうつ続けた。
「それと……浩があなたをむようになった本当の理由は、まだ別にあるの」
清太は顔をげた。
「何だ」
文子は首を振った。
「私のからは言えない」
「文子」
「初枝姉さんに聞いて」
それだけ言い、文子は部をた。
清太はいけなかった。
浩が自分を「父ちゃん」と認めない理由。
それは、単にいなかったからではない。
誰かが何かを、まだ隠している。
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