"昭和24年、帰還した夫の家に別の夫がいた" 第6話
父ちゃんと呼ばなくていい
浩は川辺でを投げていた。
「何しに来たの」
「魚を見に」
「にいないよ」
「じゃあを見る」
「変なの」
清太はしれて座った。
の入った包みは懐にある。
何度もそうとした。
結局せない。
「浩」
「何」
「俺がいなかったこと、ってるか」
はを握ったまま黙った。
「ってもいい」
「別に」
「嘘だな」
浩が清太を見る。
「父ちゃんって呼ばせたいの?」
「いや」
浩がそうな顔をした。
清太は川を見る。
「呼びたくなったでいい」
「ずっと呼ばなかったら?」
「それでもいい」
「本当に?」
「ああ」
「じゃあ何しに来るの」
清太はし考えた。
「来たいからだ」
「僕に嫌われてるのに?」
「そうだな」
「馬鹿じゃないの」
「戦でもよく言われた」
浩がし笑った。
そのから、清太は証しようとするのをやめた。
に回。
必ず会いにった。
仕事があっても交代を頼む。
がなければ産は持たない。
浩が話したければ聞く。
話さないは緒に薪を運ぶ。
がくなった頃。
清太は仕事に箱を落とした。
に力が入らなかった。
「病院へけ」
親方に言われたが、
「でいい」
と断った。
翌朝。
布団から起きがれなかった。
。
目の夕方。
戸を叩く音がした。
初枝だった。
そのろに浩がいる。
「何だ」
清太が布団から体を起こす。
「倒れたって聞いた」
浩が言った。
「誰から」
「吉父ちゃん」
清太は瞬だけ胸が痛んだ。
だが顔にはさなかった。
浩が包みを置く。
握り飯がつ。
「初枝母ちゃんが作った」
「おじゃないのか」
「僕が握ったら崩れる」
清太はつ取った。
「蜜柑よりましだな」
「蜜柑、酸っぱかったもん」
「覚えてたのか」
浩が笑った。
べ終わった、は急に聞いた。
「戦争って怖かった?」
「怖かった」
「でも?」
「の方が怖いかもしれん」
「父ちゃんも?」
清太のが止まった。
浩自は気づいていない。
初めて自然にた。
《父ちゃん》
清太は顔をげなかった。
「怖かったよ」
それだけ答えた。
浩は数秒、自分の言葉に気づいたらしい。
急に黙る。
清太も触れなかった。
その言を捕まえれば、逃げてしまう気がした。
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