"昭和24年、帰還した夫の家に別の夫がいた" 第15話
父親でいる数
浩がを卒業する頃。
清太は歳くになっていた。
の指は相変わらず曲がりにくい。
寒い朝は古傷も痛む。
だが戦のを見る夜は減った。
浩は械関係の仕事を選んだ。
「父ちゃんたちの響?」
文子が聞く。
「ともを使う仕事だから」
浩は笑った。
吉は農具。
政男は鉄。
清太は修理。
卒業祝いの。
の父親が同じ席へ座った。
「誰に番謝してる」
政男が冗談で聞く。
浩はすぐ答えた。
「初枝母ちゃん」
とも黙った。
「わせてくれたから」
吉が笑いす。
清太も笑う。
文子は涙を拭った。
その夜。
帰りを浩とで歩いた。
「父ちゃん」
「何だ」
「昔、俺を連れて帰ろうとしたんだって?」
清太は苦笑する。
「吉さんから聞いたか」
「うん」
「馬鹿だった」
「もし連れて帰ってたら?」
「ともで飢えてた」
浩が笑う。
「でも、ちょっと嬉しい」
「何が」
「連れて帰りたいってったこと」
清太は答えなかった。
浩が続ける。
「その、連れて帰らなかったのも」
清太が見る。
「どっちなんだ」
「両方」
浩はを見る。
「父ちゃん、あの俺のことらなかったでしょう」
「ああ」
「でも、そのろうとした」
清太の胸が温かくなる。
「父親って、血だけじゃないんだな」
浩が言った。
清太はし笑う。
「俺にそれを言うか」
「父親いる俺が番詳しい」
それには反論できなかった。
---
広告
おすすめ作品
-
完結第16話
昭和53年、棟梁が俺を毎晩残した理由
十五歳で大工に弟子入りした直人は、一年間、掃除と雑用ばかりの日々を送っていた。ところが昭和五十三年の春、厳格な棟梁・源造から突然、「今日から毎晩残れ」と命じられる。 鉋、墨付け、仕口、図面。三年かけて覚えるはずの技を急いで教え込まれる一方、棟梁の体は日に日に弱っていく。やがて直人は、夜の稽古が自分を酷使するためではなく、残された時間で技術を託すためだったと知る。 師のいない現場で家を完成させた直人に遺されたのは、「半人前」と書かれた道具箱。しかし、その紙の下には、棟梁が生涯口にしなかった本当の言葉が隠されていた。時代|歴史|昭和2.6万字5 10 -
完結第14話
昭和29年、夫を亡くした私から船が奪われた
夫を海難事故で失った翌朝、志津は3人の子どもを養うため、残された船で海へ出ようとした。だが漁協は鍵を取り上げ、義兄は告げる。 「船を使いたければ、長男をうちへ寄こせ」 女には魚を売らせない。船も網も夫名義。さらに借りた伝馬船まで奪われた志津は、自ら町を歩き、獲れた魚を一軒ずつ売り始める。 やがて見つかった古い領収控えには、船の手付金を払った志津の名前があった。しかし同時に、義兄が残金を貸していた事実も判明する。 船をめぐる権利と借金、そして11歳の息子の人生。何も持たないと見下された志津は、海ではなく「魚を売る場所」から、自分たちの暮らしを取り戻していく。時代|歴史|昭和2.1万字5 193 -
完結第14話
母の葬儀から戻ると、私の寝台はもうなかった
母の葬儀を終え、約束より1日遅れて工場へ戻った18歳の女工・春江。だが門前には私物の入った段ボール箱が置かれ、寮母は冷たく告げた。 「あなたの寝台は、もう別の子に渡しました」 無断欠勤を理由に自己都合退職を迫られ、給料まで大幅に差し引かれた春江。しかし明細には、故郷にいたはずの3日間、彼女が残業した記録が残っていた。 さらに、春江の寝台を与えられた15歳の少女は、彼女と同じ勤務番号で働かされていた。時代|歴史|昭和2.1万字5 164 -
完結第13話
父が開けた祝儀袋
昭和35年、結婚披露宴の最中、恭子は父が祝儀袋を次々と開けている姿を目撃する。豪華な宴も嫁入り道具も、すべて借金で用意されていたのだ。しかも婚家からは、「あなたの結婚のための借金」と返済まで迫られてしまう。 誰が望み、誰が支払うべき金だったのか。恭子が費用を一つずつ調べると、借入額には披露宴だけでは説明できない差額が見つかる。やがて明らかになったのは、父が娘の結婚と祝儀を利用して隠そうとした、もう一つの借金だった。 「家族のため」という言葉の陰で、誰かの人生や金を勝手に使ってよいのか。見栄と古い家族観に抗い、自分たちの暮らしを取り戻そうとする一人の女性の物語。時代|歴史|昭和|親子関係1.9万字5 197