みかん小説
本棚

"賞与0円を告げられたので、会社を辞めてイタリアへ" 第3話

消された評価欄

神孝臣専務は歳で、資系の流通会社から父の会社へ戻ってきただった。しい仕組みを導入すること自体に私は反対していない。実際、庫の見える化や輸送ルートの再検討は必だったし、私も何度か改善案をしてきた。ただ専務の資料には、の産能力や品質保証より先に「削減率」というきな数字が置かれていた。

事の回答を印刷していると、瀬から内線が入った。「申請の件で、し補があります」。指定された会議へくと、彼女は枚の評価面談記録を机に置いた。私がに署名した目標達成確認の写しで、達成状況の欄には「計画超過」、業務貢献には「い」と記されている。私は自分の署名を確かめた。なくとも現の評価が突然悪化したわけではなかった。

「これと賞与の関係を教えていただけますか」と尋ねると、瀬は困った顔をした。「事として説できるのは、賞与には部評価以の経営判断も反映されるということだけです」。私は、零円にした個別の理由を決めたがいるのかとねて聞いた。彼女は「個別の決裁内容は示できません」と答えたが、今度は私の目をそらさなかった。言えないことと、らないことは違うのだと分かった。

席に戻ると寺が、革メーカーからの古い仕様確認メールを見せてきた。

広告

にの許容範囲をめぐって揉めた案件で、契約には同じ番号が記されているのに、製造ロットによって仕がりが異なっていた。私はそのの検品記録との保先を教え、「例があるから丈夫ではなく、例があるから確認する」と説した。寺はし笑い、「藤崎さんの言葉、資料の見しにしていいですか」と聞いた。

その午、仕入れ管理の担当者から来期の輸入コスト資料が届いた。より輸送費が落ち着いている方、為替変とロット品の検品費が増えている。私は国別の単価だけを比べる表に、品質良の再製作費と代替調達期を加えるよう頼んだ。数字を増やして難しくしたいのではない。単価だけでいと判断した結果、ホテルの業に子が揃わなければ、削減額以の損失がるからだ。

夕方、部が私の席へ来た。「賞与の件、事に聞いた。評価が悪かったわけじゃないそうだ」。私は顔をげた。「では、どうして零円なのですか」。部は言葉を選び、「経営側の特別調が入ったらしい」と答えた。特別調という名で、誰かが私の額をかしたことになる。部もそれ以の理由は聞かされていないと言った。

私は「特別調」という言葉を帳に記した。鳴れば部は防御するだろうし、ここで私が退職をにすれば、説より引き留めが始まるだろう。

広告

だから私は「教えてくださってありがとうございます」とだけ答えた。代わりに、退職までの業務をどこまで引き継ぐか、社内規程と照らしてつずつ確認した。会社が私に渡さない説を、私の仕事で埋める必はない。

夜、私は母の写真を棚から取りした。病院の庭で笑う母の肩に、のい着が掛かっている。母はくなる半、私に「いつか仕事じゃなく、自分のためにくへきなさい」と言ったことがあった。私はその「定になったらね」と笑った。写真の母は何も答えないが、私はその言葉をノートの端にきした。

翌朝、曜の経営会議にるよう部から連絡が来た。議題は「来期イタリア調達コスト律削減案」。資料の表には専務の名があり、削減目標はパーセントときく記されていた。私が何もかけて結び直してきた契約の条件を、誰がどこまで理解したで決めようとしているのか。その会議で、私は確かめることになった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: