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"賞与0円を告げられたので、会社を辞めてイタリアへ" 第10話

最の社員証

末の朝、私はいつもよりく会社へ着いた。机の引きしには予備の付箋とクリップが数個残っているだけで、使った席とはえないほど軽く見えた。共フォルダーの最終版をき、社の契約条件、確認先、承認者、担当変更通の送信履歴が揃っていることを確かめた。最に寺へ「私用連絡先ではなく部署の記録を見て、迷ったら承認者へ」とメールを送った。

午の引き継ぎ会議では、私は資料の保所と判断の順番だけを確認した。寺は自分の言葉で各社の注点を説し、部は途で「それは私が承認する」と何度もにした。私はその言葉を会議記録に残してもらった。寺が「ここまでえてくださって、ありがとうございます」と言っただけ、胸がしくなった。彼女のために残した仕事が、彼女自の力になっていると分かったからだ。

昼過ぎ、専務がフロアへ来た。「お疲れ様でした。資料化がんだので、会社としては良い会になりましたね」。私は「お世話になりました」とをげた。専務が私をどう評価するかは、もう私の仕事ではない。部はどこか居が悪そうだったが、私は誰かの謝罪を待つつもりもなかった。必な記録を残し、返すべき物を返してるだけだ。

夕方、事で健康保険、、源泉徴収票、貸与品の返却続きを確認した。

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瀬は最に「ご迷惑をおかけしました」と言いかけ、言葉を選び直した。「賞与と個報の件は、引き続き会社として確認します」。私は「事実に基づいてめてください」と答えた。彼女が声をげたことで初めて分かったこともあるが、それで私の退職が取り消されるわけではない。

社員証を返すと、首から何かがれたような覚があった。私は受付横の観葉植物を見た。賞与零円を確認した、葉のが元で揺れていた同じ植物だ。、良いもあった。夜にから届いた写真を見てしたも、初めてきな契約がまとまって同僚と笑ったもあった。だから最を憎しみだけで塗りつぶす必はないとえた。

ビルをると、駅へ向かうたちの流れがいつもよりゆっくり見えた。私は会社の携帯をもう持っていない。帰宅しても業務メールを確認する必はなく、翌朝の会議の準備もない。に残っているのは自分の鞄と、母の写真を入れた封筒だけだった。自ドアが閉まる音を背で聞き、私は振り返らずに歩きした。

帰宅、田から話があった。内覧に来た夫婦が正式に購入を申し込みたいという。希望価格は売りし額よりしかったが、引き渡し期は私の計画にっていた。私は諸費用とローン返済額をもう度計算し、翌に返事をすることにした。

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会社の机を片付けたに、自分の部も次のへ渡す話がき始めたのは議だった。

夜、私はイタリア語学から届いた入学案内をいた。ボローニャの教の写真には、国籍も齢も違うたちが机を囲んでいた。母がきていた頃なら、私は「仕事が落ち着いたら」と言って閉じていただろう。けれど、仕事が落ち着くを待っていたら、また誰かの都でが過ぎる。私は必な滞続きと費用を確認し、入学を申し込む準備を始めた。

その夜遅く、退職した会社の共アドレスから、私用メールへ自転送された通の通が届いた。件名は「来期イタリア取引先向け価格改定案・最終承認」。私は誤転送だとい、添付ファイルをかずに送信者へ削除依頼を返した。すでに退職した私へ届くべきではない類だったからだ。けれど、件名に記された「最終承認」という言葉だけは忘れられなかった。会社は、私が最まで止めるよう求めた律パーセントの通を、とうとう実するつもりだった。

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