"賞与0円を告げられたので、会社を辞めてイタリアへ" 第20話
肩きのない仕事
の終わり、私はミラノの展示会へ掛けた。語学学でりったの紹介で、イタリアと本の規模な調達支援会社の仕事を見学する会があったからだ。きな会議も派な組織図もなく、担当者はだけ。彼らは具メーカーと本の売ので、仕様の確認やサンプルの配をしていた。私は最初、仕事に戻るつもりではなかったが、話を聞くうちに自分の経験が使える面があると分かった。
責任者のマルコは「急ぎの仕事ほど、最初にできないことを決める」と言った。私はその考え方が気に入った。彼は私の職を聞き、欧州のとの交渉経験があるなら協力してほしいと申した。私はすぐに返事をせず、仕事内容、報酬、、現で働くための必な続きを確認した。の会社で学んだことを忘れたわけではない。むしろ、今度は最初から境界を決めたかった。
マルコが示した最初の依頼には「本側の急な問いわせにも随対応」とかれていた。私はその部分を、平の対応と緊急の連絡経に分けてほしいと頼んだ。マルコはし驚いたが、「確かに、その方がこちらも計画をてやすい」と言って文面を直した。私は契約のさなが変わるのを見て、当たりだとっていた夜の話が、実は当たりではなかったことを改めてった。
広告
最初に任されたのは、本のさなホテルが使う製チェアのサンプル確認だった。額は神インテリアで扱った案件とは比べものにならない。けれど、座面の仕げと耐久試験の条件を曖昧にすると、納品に困るのは現のだ。私は発注者の希望を理し、へ確認する順番を提案した。マルコは「それなら先方も答えやすい」と言い、私の提案を正式な作業順に加えた。
仕事はいつも順調というわけではなかった。の返事が遅れ、試作品のが予定と違い、私は自分の説がりなかったのではないかと落ち込んだ。けれど、マルコは原因と次の確認事項を緒に理し、夜遅くまで残るようには言わなかった。「の朝、続きをやろう」。その言葉を聞いた、私は度で仕事を終わらせようと自分を追い込んでいた癖に気づいた。
収入は以よりなく、活費の管理も欠かせなかった。私はごとの支を記録し、仕事を増やすか、滞先を変えるか、必なら本へ戻るかを定期に見直した。会社を辞めればすべてが楽になるわけではない。けれど、を隠して誰かの期待にわせる必がなくなった。決める材料を揃え、自分で選ぶ。その順を、私は今度こそ自分の活にも使えるようになっていた。
展示会の休憩所で、マルコが「の会社から話?」
広告
と尋ねた。私の携帯が度震えたからだ。画面に表示されていたのは、しい取引先の名だった。「いいえ、今の仕事の連絡です」と私は答えた。すぐになくてもよいと分かっていたので、休憩を終えてから折り返すことにした。昔の私なら事の途でも話を取っていただろう。今は、自分ののに仕事を置くことができた。
帰りの列で、私は本の友へ写真を送った。展示会の材サンプル、夕方の駅、窓のに広がる。織は「楽しそう」と返信してきた。私はし考え、「楽しいもあるし、変なもある。でも自分で選んでいる」といた。自分のをきな肩で埋め直す必はない。さな仕事でも、責任と条件が確なら、私は誇りを持って向きえる。
その夜、私は母の写真を棚から取りした。写真の裏には、母の字で「、病院の庭」といてある。仕事に追われていた頃は、そのを読む余裕さえなかった。私は写真を戻し、翌の予定を帳にいた。午はとの確認、午は語学の復習、夜は所ので夕。どれもきな予定ではないが、今の私には切な約束だった。
広告
おすすめ作品
-
完結第16話
離婚3か月後、元義母に300万円を要求された私
離婚から三か月後、美緒のもとへ元義母から電話が入る。事故で入院した元夫・達也のため、今すぐ三百万円を持ってこいというのだ。美緒は鼻で笑い、「新しいお嫁さんに頼んでください」と断る。 ところが、社長令嬢だと信じられていた新妻・優奈は、達也の金を持って姿を消していた。さらに達也は見栄を守るため借金を重ね、実母には内容を偽った書類へ実印まで押させていた。 しかも「命に関わる治療費」という三百万円には、滞納した返済やカード代まで含まれていた。美緒を再び財布として利用するための嘘だったのだ。嫁姑|夫婦|金銭問題1.5万字5 61 -
完結第20話
置き去り後27分
給与口座の通帳と暗証番号を義母へ渡すよう迫られた美和。拒絶すると、夫は彼女を真冬の国道へ置き去りにし、「怖い思いをすれば折れる」と走り去った。 美和は泣いて追いすがらず、900メートル先のファミレスで夜を明かす。翌朝、夫から届いていたのは41件の着信と、「すぐに戻った」という釈明だった。 だが店を出ようとした美和を、見知らぬトラック運転手が呼び止める。彼のドライブレコーダーには、夫が戻ったのは27分後だったこと、さらに義母との電話で置き去りの目的を語る肉声まで残されていた。 口座を守るための夫婦喧嘩だと思っていた夫。しかし映像が暴いたのは、妻を恐怖で屈服させようとした計画的な支配だった。美和は金だけでなく、自分の人生を決める権利を取り戻すため、24年間の結婚に静かに決着をつける。夫婦|第二の人生|ATM扱い|金銭問題2.2万字5 434 -
完結第12話
産後5日、家を売られた私の人生やり直し
出産から5日後、生まれたばかりの娘を抱いて帰宅した美緒を待っていたのは、家具も家電も消えた空の部屋だった。夫はマンションを売り、妻の預金860万円を持ち出し、愛人との新生活へ逃げていた。さらに、美緒の署名を偽造した離婚届まで提出されていた。 結婚指輪を売って実家へ帰る切符を買った美緒は、駅で妻の最期に間に合わないと嘆く老人へ、その切符を譲ってしまう。 数日後、老人は企業グループの創業者として美緒の前に現れた。しかも夫が盗んだ金で設立した会社は、老人の会社へ1億2000万円の出資を求めていた。 すべてを奪って勝ったつもりの夫は、まだ知らない。自分の会社の命運が、捨てた妻の手元に集まり始めた証拠によって左右されることを夫婦|裡の顔|金銭問題1.7万字5 2971 -
完結第20話
家族投票の三日後
お盆の親族会で、地味な事務員として働く美緒は、姉から「家族の投票で決めた。今すぐ出ていけ」と追放を宣告される。両親も親戚も、姉の婚約者も笑って賛成した。 しかし彼らは知らなかった。倒産寸前だった老舗旅館を救い、土地と建物を買い取った真の所有者が、美緒であることを。彼女が姿を隠して注ぎ続けた資金がなければ、旅館は一か月も維持できなかった。 美緒が援助を止めると、家族の浪費と巨額の不正支出が露見する。さらに姉の婚約者も、旅館の資産を利用して自社の損失を埋めようとしていた。そして三日後、華やかな結納の最中、執行官と弁護士が現れる。怒り|嫁姑|金銭問題|修羅場1.9万字5 10 -
完結第13話
娘夫婦に貸した愛車を「名義変更して」と言われた日
67歳の修司が、娘夫婦へ半年だけ貸した愛車。返却を求めると、婿は当然のように言った。 「もう僕の名義に変えてもらえませんか」 だが車はすでに420万円で査定され、600万円を超える新車の下取りに使われようとしていた。さらに、娘夫婦へ貸した住宅資金1000万円も、返済されたはずの30万円が一度も届いていない。 調べるほど現れる、消えた500万円の投資、偽造された「300万円返済済」の記録、そして亡き妻名義の借用書。 家族への援助は、いつから「もらって当然の財産」に変わったのか。修司は車の鍵だけでなく、自分の人生を決める権利まで取り戻そうとする。親不孝|絶縁|親子関係|金銭問題1.9万字5 602 -
完結第15話
「父の31億を狙った泥棒女」と罵られた私。孤独な老人に贈った2180円のラーメンが、巨大金庫の上に供えられていた
夫を亡くし、川越でひとり暮らす翻訳者・高橋さくら。彼女はスーパーで398円のラーメンを棚へ戻した隣人の源蔵を見かけ、傷つけないよう理由をつけて2180円の箱を贈った。数日後、源蔵は自宅で静かに息を引き取る。遺言執行者の黒田と書斎へ入ったさくらが見つけたのは、巨大金庫と、その上の神棚に供えられた未開封のラーメンだった。そこへ源蔵の息子夫婦が現れ、父の死を悼むことなく金庫を探し、さくらを遺産目当ての泥棒と罵る。だが源蔵には、31億円の遺産だけでなく、息子が最も恐れる4億8120万円の記録があった。相続|金銭問題2.4万字5 259 -
完結第11話
夫に4千円を頼んだら、4千万円振り込まれた
母の検査代に必要な四千円すら用意できず、加奈は夫の勇人へ震える声で助けを求めた。ところが直後、口座へ振り込まれたのは四千円ではなく、四千万円。町工場で働き、擦り切れた靴を履き続ける夫が、なぜこれほどの大金を持っているのか。 帰宅した勇人が差し出したのは、十六年前に受け取った未公開株と、巨額買収を証明する書類だった。しかし、手続きは三か月も前から進んでいた。母の病気に苦しむ加奈へ、なぜ彼は何も話さなかったのか。 不信を募らせる加奈の前で、病床の母が静かに告げる。 「この子の秘密は、あんたと結婚する前から知っていたよ」 四千万円より重い、母と夫だけが抱えてきた十六年前の約束とは――。夫婦|親子関係|介護|金銭問題1.6万字5 547 -
完結第13話
兄夫婦を亡くした日、5歳の双子を家族にした
医師の美緒を育て、医学部まで送り出してくれた兄夫婦が、突然の事故で同時に亡くなった。残されたのは5歳の双子。16年前、自分を引き取ってくれた兄への恩を返すため、美緒は二人を育てると決め、婚約者の蓮へ一方的に別れを告げる。 「子供を育てることが、借金返済なのか」 蓮の言葉にも、美緒の決意は変わらなかった。ところが兄夫婦が残した《もしもの時》というファイルには、美緒を最初の相談相手に指定すると同時に、意外な一文が記されていた。 《美緒に一人で決めさせないこと。必ず桜井蓮にも相談する》 受け取った愛情を返すため、自分の幸せを諦めることは本当に正しいのか。二人の子供と婚約者、そして周囲の手を借りながら、美緒が「犠牲ではない家族」の形を探していく物語。兄弟姉妹|夫婦|第二の人生|修羅場2.0万字5 559 -
完結第17話
離婚したので、義実家への月50万円をやめました
「この家は俺と愛人と子供が使う。離婚後も、両親への月50万円は払い続けろ」 そう言って離婚届を突きつけた夫に、美緒は何も争わず署名する。夫は豪邸も高級車も手に入れたと思い込み、数日後、愛人と赤ん坊を連れて戻ってくる。しかし玄関の鍵は開かず、車も消えていた。家も車も、美緒が経営する会社の資産だったのだ。 さらに仕送りを止められた義母は、美緒の口座から500万円を引き出そうとし、愛人の住居契約からは偽造された署名が見つかる。嘘で築かれた「新しい家庭」が崩れ始める中、夫は美緒が離婚を急いだ本当の理由と、目前に迫っていた数十億円規模の契約を知ることになる。人生逆転|嫁姑|夫婦|真実|第二の人生|不倫1.7万字5 694