みかん小説
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"家族投票の三日後" 第1話

お盆の特別、族の数決

「族で投票して決めたの。もう、あなたは族じゃないわ。今すぐこのからてって」

、夜。うだるような気が残る盂蘭盆会の夜。 創業百を誇る老舗級旅館『砂楼(はくさろう)』の最奥に位置する、百畳敷きの広。 純の蒔絵が施されたのを背にして、女の結(ゆい・歳)がちがり、酷な宣告をした。仕ての良い濃紺のシルクドレスにを包み、勝ち誇った笑みを元に張り付かせている。

その隣には、産ディベロッパーの営業部であり、結の婚約者である條翔太(とうじょう・しょうた・歳)が、級シャンパングラスを傾けながら座っていた。仕ての良すぎるイタリア製スーツ。翔太は、座の配膳台ので膝をついている私――次女の美緒(みお・歳)を、ゴミを見るような侮蔑の差しで見ろしている。

「君のような教養も華もないなが、この格式ある旅館の表にてもらっては困るんだよ。僕の親族や取引先への体裁というものがあるからね」

座の央に座る父・昭夫(歳)が、嫌で赤ら顔を揺らしながら々しく頷いた。 「翔太君の言う通りだ。来には翔太君が結の婿養子として正式に入籍し、この砂楼の副社に就任することが決まっている。

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おのような暗い事務員がうろついていては、優秀な姉の結婚の邪魔になる。……満致だ。おは今限りで砂楼の敷からち退け」

母の加代子(歳)も、結の肩をおしそうに抱き寄せながら、私へたい言葉を浴びせかけた。 「そうよ。これからは翔太さんのおかげで、私たちもセレブとして優雅に暮らせるの。おのような稼ぎのないお荷物を養う余裕なんて、うちにはないのよ」

広を埋め尽くした、い親戚たち。 彼らは運ばれてきた黒毛牛の陶板焼きに舌鼓を打ちながら、誰として私を庇おうとはしなかった。それどころか、クスクスと忍び笑いを漏らし、同の頷きを返している。 「まあ、妥当な判断ね」「あの子、いつもを向いてもないし」「結ちゃんとはとスッポンだもの」

私は、に持っていた漆塗りの配膳盆を、畳のに音もなく置いた。 膝のでねた指先は、微も震えていなかった。 涙など、滴もない。 胸の奥底に広がっていたのは、しみではなく、絶対零度の静寂だった。

――このたちは、本当に何も分かっていない。 この老舗旅館が誰の所物であり、誰の資によって今まで息を繋いできたのかを。

、無謀な設備投資と放漫経営が祟り、砂楼が億千万円もの負債を抱えて倒産寸に追い込まれたあの夜。

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から見捨てられ、形が落ちずに夜逃げ寸だった両親を救うため、自らの資産を投じて負債を全額肩代わりし、と建物の所権を買い取ったのが、目のでエプロンをつけてをげている「な妹」であるという真実を。

私は血の繋がった族だからこそ、あえて真のオーナーであることを隠し、自力で更する会を与えようと、無同然の裏方事務員としてをすすってきたのだ。 だが、彼らがした答えは――エリートの婿を迎えた途端、恩である私を「数決」という私刑でに迷わせることだった。

「……そうですか」 私はゆっくりとちがり、につけていたいエプロンの紐を解いた。 「族の数決であれば、従うしかありませんね。よく分かりました」

「ふん、物分かりが良くて助かるわ」結がを鳴らす。「今夜にてきなさい。度と敷居を跨ぐんじゃないわよ」

「今までお世話になりました。皆様のこれからのご幸を、よりお祈り申しげます」

完璧な営業用の会釈をつ残し、私は広の襖を静かに閉めた。 閉ざされた襖の向こうから、歓声と、しい若旦の誕を祝う品な乾杯の音が響き渡った。

私のので、族を繋ぎ止めていた最の細い糸が、プツリと音をてて千切れた瞬だった。

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