みかん小説
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"家族投票の三日後" 第2話

真実のオーナーと漆黒のマイバッハ

渡り廊を抜け、庭の隅にある従業員用の暗い畳半の控えへ戻る。 私はクローゼットから、あらかじめ用してあった黒い革のボストンバッグをつに取った。に入っているのは、着替え数着と、私個の分を証する最限の類だけだ。 この旅館にあるいの品など、今の私には片の価値もなかった。

裏の格子戸をけると、ぬるい夜が頬を撫でた。 見げる砂楼の豪壮な本館。派な入母造りの根瓦が、を浴びて黒々と聳えっている。

私が守りたかったのは、祖父の代から受け継がれてきた建物の歴史であり、何より、欲な両親ので文句も言わずに真面目に働き続けてくれている、名以の従業員たちの活だった。 だが、私が正体を隠して甘やかした結果、あの寄虫たちは自らを「絶対の支配者」だと錯覚してしまったのだ。

「私がした温のガラスの向こうが、どれほどの獄か……特等席で教えてあげるわ」

砂利を踏みしめ、気のない裏から通りへと歩みる。 灯ののに、台の漆黒の最級セダン――マイバッハSクラスが、エンジン音を忍ばせて滑り込んできた。

部座席のなドアが、音もなくく。 運転席からびしてきた髪混じりの初老の運転・松井が、々とをげた。

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「お疲れ様でございます、美緒社。ご実での理は、すべて完いたしましたでしょうか」

「ええ、松井さん。完璧に終わったわ」

私は仕ての良い最級レザーシートにくを沈め、静かにドアを閉めた。 の気と蝉が完全に遮断され、よい空調とクラシック音楽が満ちる。 これが、私の本来の世界だった。

バッグから専用のスマートフォンを取りし、体認証を解除して厳に暗号化された回線をく。 呼びし音は回と鳴らなかった。

『夜分に恐れ入ります、美緒様。お待ちしておりました』 く、静沈着な男の声。私の個資産管理会社および投資ファンド『エニシ・インベストメント』の法務統括を務める、顧問弁護士の黒川だった。

「黒川先。猶予期は終よ」 私の声には、片の躊躇も混ざっていなかった。 「先ほど、広での親族会議において、全員致の数決により私との族関係を解消し、敷からの即退を宣告されたわ」

受話器の向こうで、黒川が微かに息を吸い込む気配がした。 『……様でございますか。彼ら自らので、最の全装置を破壊したわけですね』

「ええ。砂楼のおよび建物の完全なる所権限に基づき、法占拠者に対する制執の続きを即刻始して」

『承いたしました。すでに管轄裁判所への申して類、ならびに執官への根回しは完しております。

……執のタイミングは、いつになさいますか?』

私は窓を流れるのネオンを見つめながら、徹な微笑みを浮かべた。 「よ。の午。……姉の結さんの、華やかな結納の宴が最潮に達する瞬にわせてちょうだい」

『解いたしました。完璧な台をえてお待ちいたします』

通話を切ると、マイバッハは首都速へと滑りがった。 目指すは、都の最層タワーマンションのペントハウス。 私を無能な寄虫と見した者たちが、自分たちのっているそのものを失うカウントダウンが、静かに始まったのだ。

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