"家族投票の三日後" 第5話
姉からの侮辱LINEと、調査報告の
画面に表示されたのは、昨夜私を追いした実の姉・結からのメッセージだった。 私はえ切った瞳で、画面をタップした。
『あんた、本当に昨の夜にてったのね! みっともなく泣きついてくるかとったのに、拍子抜けだわ。 せいぜいアパートで野垂れになさい! 族投票で決まったんだから、度と私たちのに姿を見せないでよね。 あんたが使ってたあのカビ臭い部は、私のドレス用のウォークインクローゼットに改装するから! もう私たちは赤の。絶対に帰ってこないで!』
メッセージの末尾には、の結納のために誂えたという、数百万円の豪奢な京友禅の着物の写真が添付されていた。
「……愚かな」 私を精神に痛めつけ、優越に浸るためだけに送られた文。 だが、彼女はらなかった。このメッセージこそが、法廷において「族関係の破綻と悪の遺棄」を証する、かぬデジタル証拠になるということを。
「黒川先、これを証拠保全して。通信ログと共に裁判所へ提できるように」 「承いたしました。これで相側からの『なによるき違い』という言い逃れは完全に封殺できます」
黒川が証拠保全の続きをめる、デスクの内線話が鳴った。 黒川が受話器を取り、言言と言葉を交わすと、引き締まった表で受話器を置いた。
広告
「美緒社。信用調査部より、結様の婚約者・條翔太氏に関する最終辺調査報告が届きました」
「待っていたわ。持ってきて」
差しされた分い青いファイルを、私はいた。 條翔太。堅産発会社『グローバル・エステート』営業部。収千百万円、次期役員候補――それが、結と両親が信じ込み、ひれ伏していた彼の「エリートの板」だった。
だが、報告のページをめくった瞬、私の線はある枚の財務諸表ので凍りついた。
「……何よ、これ」
私のから漏れたのは、嘲笑ですらなかった。 そこにあったのは、煌びやかな経歴の裏に隠された、破滅な「真実」だった。
翔太が主導した方リゾート発プロジェクトは、昨末の点で完全に座礁し、元建設業者への未払いを含め、総額億円もの焦げ付き債務を発させていた。 グローバル・エステートは現、刻な資ショートに陥り、倒産寸。 そして――同社が命綱として縋り付き、数百億円の緊急救済融資を座して懇願している相先の。
そこに記されていた会社名は――でもない、『エニシ・インベストメント』だった。
「……翔太氏は、砂楼の資産価値に目をつけ、結様と結婚して旅館の建物を担保に差し入れることで、自の横領にい焦げ付きを穴埋めしようと画策していたようです」
黒川が淡に解説する。
だが、私の指先を真に止めさせたのは、その横領の事実ではなかった。 報告の最部、翔太の過の交友関係を記したページに添付されていた、枚の古い写真。
それを見た瞬――私の背筋を、激しい悪寒が貫いた。
写真に写っていたのは、の翔太。 そして、その隣で腕を組み、親密そうに微笑みっていたのは……。
に、砂楼を最初の倒産危へと突き落とした、あの悪徳経営コンサルタントの男だったのだ。
「……偶然じゃない」 私の喉から、たい息が漏れた。 「條翔太は、最初から砂楼を計画に解体し、奪い取るために……結にづいたんだわ」
の結納の宴。 それは単なる見栄っ張りたちの祝祭ではない。 砂楼という獲物を巡る、悪党どもの醜悪な共いのだったのだ。
広告
おすすめ作品
-
完結第23話
母の小さな食卓
三年ぶりに実家へ帰った直人は、母の誕生日の食卓に、ご飯と味噌汁、漬物しかないことに驚く。冷蔵庫もほぼ空なのに、玄関には弟へ渡す高価なりんごが三箱も積まれていた。 さらに母の通帳には、弟へ毎月八万円を送った記録が残されていた。弟ばかりを優先する母への古い不満がよみがえるが、その金は、直人が失業した三年前から、息子・悠人の学費として渡されていたものだった。裡の顔|親子関係|修羅場2.8万字5 16 -
完結第16話
離婚3か月後、元義母に300万円を要求された私
離婚から三か月後、美緒のもとへ元義母から電話が入る。事故で入院した元夫・達也のため、今すぐ三百万円を持ってこいというのだ。美緒は鼻で笑い、「新しいお嫁さんに頼んでください」と断る。 ところが、社長令嬢だと信じられていた新妻・優奈は、達也の金を持って姿を消していた。さらに達也は見栄を守るため借金を重ね、実母には内容を偽った書類へ実印まで押させていた。 しかも「命に関わる治療費」という三百万円には、滞納した返済やカード代まで含まれていた。美緒を再び財布として利用するための嘘だったのだ。嫁姑|夫婦|金銭問題1.5万字5 57 -
完結第20話
祖父の土地を勝手に道路にされたので、自販機を置いた
建設コンサルタントとして働く雪は、祖父の私有地が無断で舗装され、完成間近のタワーマンションの進入路として使われていることを知る。 開発を主導していたのは、学生時代から雪に異常な執着を見せていた川端武郎。彼は土地を「事実上の道路」として申請し、所有者の承諾がないまま建築確認を通していた。怒り|祖父母と孫|裡の顔|修羅場2.1万字5 18 -
完結第12話
私にだけハズレ料理を出す義母の誤算
月に一度の義実家での食事会。真希にだけ、焦げたご飯、肉のない煮物、殻付きのエビ、骨だらけの刺身が出される。しかし夫・隆は「偶然だ」「被害妄想だ」と、母親を庇い続けた。 妊娠を知った真希は、わが子を守るため、記録を残しながら静かに脱出の準備を始める。そんな中、義母は「誰がハズレを引くかしら」と、中身の違うメンチカツを食卓へ並べた。 真希が選んだ一つを切ると、中から現れたのは肉ではなく、形を整えたかまぼこ。長年「偶然」で隠されてきた嫌がらせが、夫と義父の前で初めて暴かれる。怒り|嫁姑|夫婦|修羅場1.3万字5 18 -
完結第21話
賞与0円を告げられたので、会社を辞めてイタリアへ
十七年間、海外調達を支えてきた玲奈に言い渡された年末賞与は、まさかの零円。評価は最高ランクのまま、翌年も重要なイタリア案件を任されていた。会社は住宅ローンを抱える彼女なら、どんな扱いをしても辞めないと考えていたのだ。 玲奈は怒鳴らず、記録を残して退職届を提出。家と車を手放し、亡き母の言葉に背中を押されてイタリアへ渡る。 ところが彼女の退職後、強引な一律値下げ交渉によって工房との信頼関係は崩れ、大型案件まで危機に陥る。三か月後、玲奈の携帯には人事、部長、社長から合計三百十二件もの着信が残されていた。職場逆転|第二の人生|金銭問題2.8万字5 33 -
完結第12話
夕飯のカレーを笑った友人が、私のレシピを欲しがった
「夕飯にカレーなんてありえない。家族がかわいそう」 友人・真理子の何気ない一言に傷ついた由美子。ところが後日、その真理子から文化祭で出すカレーのレシピ作りを頼まれる。 試作、材料計算、衛生管理まで担った由美子だったが、完成した料理はいつしか「真理子の家庭の味」として紹介され、自分の名前だけが消されていた。さらにそのレシピは、公民館の料理講座でも真理子の実績として使われようとする。 由美子は初めて「大丈夫」と笑って引き下がることをやめ、自分が担った仕事を記録とともに伝える。これは一皿のカレーをめぐる争いではない。親切と友情の陰で軽く扱われてきた女性が、自分の努力と暮らしに境界線を引き直す物語。怒り|裡の顔|修羅場2.3万字5 229