"家族投票の三日後" 第10話
踏みにじられた祝宴
ドォォォンッ!!
鳴のような轟音が、広に響き渡った。 先の屈な警備員名が、箔の施された分い襖を、力任せにへ蹴りけたのだ。
広を包んでいた拍と嬌声が、を打ったようにピタリと止まった。 座の央、絢爛豪華な京友禅の着物を着てシャンパングラスを掲げていた結が、を半きにしたまま凍りつく。 その隣でふんぞり返っていた翔太も、グラスを取り落としそうになりながら目を剥いた。
「な……何だおたちはッ!?」 真っ赤な顔でちがったのは、父の昭夫だった。畳のに級ワインをぶちまけながら、号をげる。 「ここは砂楼の特別だぞ! 警察を呼ぶぞ、法侵入め!」
「警察なら、すでに目のにいますが」 制警官名が徹ににみる。 昭夫が「えっ……?」とたじろいだ瞬、執官が赤い腕章を掲げ、朗々と通告文を読みげた。
「横浜方裁判所執官である! 本、本産の正当なる所者の申に基づき、民事執法に基づく【産渡制執】を執する! 野昭夫、加代子、結、ならびに同席する占拠者全員、直ちに本敷より退せよ!」
「は……!? 制退……!? 所者だと!?」 母の加代子がヒステリックに叫ぶ。 「ふざけないで! ここはうちの旅館よ! 今は娘の結納なのよ!」
「そうよ! 翔太さんの会社がバックについてるのよ! あんたたちみたいな底辺の警備員、翔太さんに頼んで全員クビにしてやるわ!」
広告
結が狂ったように喚き散らす。
そのだった。 入りを塞いでいた警備員たちが、へと綺麗にをけた。
カツン、カツン、カツン。 静まり返った広に、質なヒールの音が規則正しく響き渡る。
現れたのは、漆黒のオーダースーツにを包んだ、私だった。 シャンデリアのの、堂々と歩みる私の姿に、昭夫が息を呑んだ。
「み……美緒……?」
「あんた……何よその格好! 数決で追いされたくせに、みっともなく戻ってきたわけ!?」 結が嘲笑を浮かべて指を差す。 「まさか、私の着物が羨ましくて覗きに来たの!? くその汚い顔を消しなさいよ!」
私は結の罵声を完全に無し、執官の隣へ並びった。 そして、え切った瞳で、座敷に座る族を見ろした。
「まだ、自分たちが誰の敷で酒をんでいるのか、理解できていないようですね」
その瞬、結の背でガタガタと震えていた翔太が、私の隣につ黒川弁護士の顔を凝し、絶叫した。
「く……黒川……弁護士……!? な、なぜあなたがここに……!?」
翔太の顔から、完全に血の気が引いていた。 彼だけが、このに現れた集団の「本当の恐ろしさ」を、瞬に理解したのだ。
「翔太さん、りいなの!?」結が訝しげに袖を引く。
「お、おい……嘘だろ……」 翔太は膝をガクガクと震わせ、私を指差して掠れた声を絞りした。
「お……まさか……あのエニシ・インベストメントの……園寺……社なのか……!?」
広の空気が、絶対零度に凍りついた。
広告
おすすめ作品
-
完結第23話
母の小さな食卓
三年ぶりに実家へ帰った直人は、母の誕生日の食卓に、ご飯と味噌汁、漬物しかないことに驚く。冷蔵庫もほぼ空なのに、玄関には弟へ渡す高価なりんごが三箱も積まれていた。 さらに母の通帳には、弟へ毎月八万円を送った記録が残されていた。弟ばかりを優先する母への古い不満がよみがえるが、その金は、直人が失業した三年前から、息子・悠人の学費として渡されていたものだった。裡の顔|親子関係|修羅場2.8万字5 16 -
完結第16話
離婚3か月後、元義母に300万円を要求された私
離婚から三か月後、美緒のもとへ元義母から電話が入る。事故で入院した元夫・達也のため、今すぐ三百万円を持ってこいというのだ。美緒は鼻で笑い、「新しいお嫁さんに頼んでください」と断る。 ところが、社長令嬢だと信じられていた新妻・優奈は、達也の金を持って姿を消していた。さらに達也は見栄を守るため借金を重ね、実母には内容を偽った書類へ実印まで押させていた。 しかも「命に関わる治療費」という三百万円には、滞納した返済やカード代まで含まれていた。美緒を再び財布として利用するための嘘だったのだ。嫁姑|夫婦|金銭問題1.5万字5 57 -
完結第20話
祖父の土地を勝手に道路にされたので、自販機を置いた
建設コンサルタントとして働く雪は、祖父の私有地が無断で舗装され、完成間近のタワーマンションの進入路として使われていることを知る。 開発を主導していたのは、学生時代から雪に異常な執着を見せていた川端武郎。彼は土地を「事実上の道路」として申請し、所有者の承諾がないまま建築確認を通していた。怒り|祖父母と孫|裡の顔|修羅場2.1万字5 18 -
完結第12話
私にだけハズレ料理を出す義母の誤算
月に一度の義実家での食事会。真希にだけ、焦げたご飯、肉のない煮物、殻付きのエビ、骨だらけの刺身が出される。しかし夫・隆は「偶然だ」「被害妄想だ」と、母親を庇い続けた。 妊娠を知った真希は、わが子を守るため、記録を残しながら静かに脱出の準備を始める。そんな中、義母は「誰がハズレを引くかしら」と、中身の違うメンチカツを食卓へ並べた。 真希が選んだ一つを切ると、中から現れたのは肉ではなく、形を整えたかまぼこ。長年「偶然」で隠されてきた嫌がらせが、夫と義父の前で初めて暴かれる。怒り|嫁姑|夫婦|修羅場1.3万字5 18 -
完結第21話
賞与0円を告げられたので、会社を辞めてイタリアへ
十七年間、海外調達を支えてきた玲奈に言い渡された年末賞与は、まさかの零円。評価は最高ランクのまま、翌年も重要なイタリア案件を任されていた。会社は住宅ローンを抱える彼女なら、どんな扱いをしても辞めないと考えていたのだ。 玲奈は怒鳴らず、記録を残して退職届を提出。家と車を手放し、亡き母の言葉に背中を押されてイタリアへ渡る。 ところが彼女の退職後、強引な一律値下げ交渉によって工房との信頼関係は崩れ、大型案件まで危機に陥る。三か月後、玲奈の携帯には人事、部長、社長から合計三百十二件もの着信が残されていた。職場逆転|第二の人生|金銭問題2.8万字5 33 -
完結第12話
夕飯のカレーを笑った友人が、私のレシピを欲しがった
「夕飯にカレーなんてありえない。家族がかわいそう」 友人・真理子の何気ない一言に傷ついた由美子。ところが後日、その真理子から文化祭で出すカレーのレシピ作りを頼まれる。 試作、材料計算、衛生管理まで担った由美子だったが、完成した料理はいつしか「真理子の家庭の味」として紹介され、自分の名前だけが消されていた。さらにそのレシピは、公民館の料理講座でも真理子の実績として使われようとする。 由美子は初めて「大丈夫」と笑って引き下がることをやめ、自分が担った仕事を記録とともに伝える。これは一皿のカレーをめぐる争いではない。親切と友情の陰で軽く扱われてきた女性が、自分の努力と暮らしに境界線を引き直す物語。怒り|裡の顔|修羅場2.3万字5 229