"昭和34年、上野駅で名前を奪われた少女" 第13話
帳の若い事務員
の初め、都織布から堂へ通の通が届いた。《採用に関する問いわせはすべて終したものとする》。署名は事主任の野で、理由はかれていなかった。澄子は通を読んで、ようやく相がこちらのを無するだけでなく、話そのものを終わったことにしようとしていると理解した。藤は「返事が来たのなら、次はこのも持って相談にける」と言った。
同じ頃、堂の昼の客に若い女が増えた。いの事務を着た藤原静と名乗る女で、いつも席を隅に取り、魚の煮付けを半分残した。度目に来た、静は勘定を払うふりをして澄子にさな封筒を渡した。「都織布の帳にいます。私の名はさないでください」。封筒には、番号だけをいたと、いくつかの額が入っていた。
静はで与台帳の清を任されていた。の帳面を閉じる、《甲》の欄だけが度消され、別の帳面へ移されているのを見つけたという。「私が見たには、佐藤澄子さんはに入寮して、に退職していました。なのにから、辰加所への移籍という記録がついていた」。澄子は、自分のらないうちにいた付を順番に並べた。
「なぜ教えてくれるんですか」。澄子が尋ねると、静はしばらく黙ってから「妹が来、学を卒業するんです」
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と答えた。妹も働きにるかもしれない。その、名のない帳面をに何も言えないでいたくないという。静は帳簿の原本を持ちしてはいなかったが、自分が清した控えの数字を、昼休みに覚えてき留めていた。
静の話によると、はしく入る女のための支度を、まとめて紹介へ渡していた。ところが与台帳では、同じが女個への貸付として計され、毎の料から返済されることになっていた。会社が本当に何を払ったのか、紹介が誰に何を渡したのか、つの帳面の数字はっていない。静はその違いに気づいたが、野に尋ねると「余計な照はするな」と言われた。
静は、会社の支欄に《規採用者支度費》とまとめられた額があり、別の台帳では女ひとりの《替》として記されていると説した。に取っているのか、どこかで帳尻をわせているのか、彼女にも分からない。ただ、同じ番号の欄がの途で別の名へ移されているのは、普通の与処理ではなかった。澄子は「分からないことは分からないままいてください」と頼んだ。静は初めてし笑い、そうすると答えた。
澄子は、鈴の母親へ送られたと、自分の名に載せられた千百円が同じものなのか尋ねた。静は「今ある数字だけでは断言できない」
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と答え、代わりに台帳のを指した。《甲 紹介費清算 古賀扱い》。そのには、女が借りたというよりきな額が、会社から古賀へ支払われたように記されていた。「なくとも、誰かが働くにを受け取っています」。
ハルは静へ麦茶をし、「あなたも無理をしないで」と言った。静は「無理をしなければ、誰も見ないまま帳面が閉じられる」と答えたが、帰るには顔が青ざめていた。澄子はその背を見送り、勇気だけではを守れないとった。静が職を失えば、妹の学のために貯めているも失う。証言を頼むなら、そのの暮らしまで考えなければならない。
その夜、澄子は静から聞いた数字を藤に見せた。藤は「本の与袋、学の採用記録、寮の当番表、帳の数字。別々のが同じを指している」と言った。だが静が翌週から堂へ来なくなると、澄子はになった。野が誰かのを閉ざそうとしているなら、次に消されるのは帳面だけではないかもしれなかった。
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