"昭和34年、上野駅で名前を奪われた少女" 第14話
田辺先の返事
青森から通目の封が届いたのは、半ばののだった。差は転任先の田辺源で、封筒には学の公印の押された証と、田辺自のが入っていた。田辺はの就職斡旋でを都織布へ紹介し、に採用予定者名簿を受け取ったこと、佐藤澄子の辞退は度も聞いていないことを記していた。さらに、発に駅まで付き添った引率者の名と、乗した数もき添えられていた。
「先、覚えていてくれたんだ」。澄子はの最にある見慣れた字を指でなぞった。田辺は、の駅で女たちを送りした、学の戸棚に採用通の控えを残していたという。転任の慌ただしさで理が遅れたことを詫び、「あなたが自分の名を疑う必はありません」といていた。澄子はそのを読むと、ようやく胸の奥に溜まっていたものがし緩んだ。
だが同封の類には、もうつ見過ごせないものがあった。都織布から学へ届いていた《採用予定者変更通》の写しで、付は。そこには《甲 本辞退につき補充済》とかれ、補充者の氏名欄だけが空だった。田辺は異にその通を見ておらず、任教師が戸棚から見つけたという。学へらせるより先に、では代わりの女を決めていたことになる。
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藤は類を枚ずつ広げ、付の横に赤鉛で印をつけた。「、採用確定。、本のらない辞退届。、補充済みの通。、鈴ちゃんが入寮」。澄子はその順番を見つめ、野駅で里が名簿を閉じた理由が初めて分かった。あの男は数を数え違えたのではない。最初から番目を乗せないつもりで待っていたのだ。
同じの夕方、母フミからも返事が届いた。へ古賀の使いだという男が訪ね、澄子の支度をて替えたと説したが、母は学へ相談するまで何も払わないと答えたという。「配はしている。でもおが京へったも、名も、母ちゃんは違えない」とかれていた。弟たちは畑の取りを伝い、靴はまだ履けるから急がなくていいと言っているらしい。
母のには、田辺先が転任先からわざわざへ話をかけてきたこともかれていた。学の先たちが昔の席簿をき、引率した駅員にも数を確かめたという。澄子は、のたちが自分のためにを使ってくれていることをり、申し訳なさとありがたさでしばらく返事をけなかった。京ではらない名にされても、故郷には自分を覚えているがいる。その事実が、机のの類以に澄子を励ました。
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澄子は母への返事に、今度は堂で働いていることも、親切にしてくれるハルのこともいた。仕送りを送れないことが申し訳なかったが、ハルは「へ無理して送って、あんたが倒れたら何にもならない」と言った。澄子はの帳面を見せてもらい、自分の働いた数と受け取るを確かめた。ここでは名を尋ねられ、働いた分がかれ、本の目ので計算される。その当たりのことが、以よりずっと切にえた。
翌、藤は田辺の証を持って関係窓へ再び相談にった。担当者は学の記録と与控除の資料を照らし、側へ事を尋ねるための続きを案内した。澄子は、これで野がすぐ謝るとはわなかった。それでも相の机のだけにあった記録が、しずつのにも読める形になっていた。
堂へ戻ると、子がに濡れて待っていた。「澄ちゃん、静さんがを辞めさせられるって」。帳の数字を誰かに話したことが疑われ、翌週から勤しなくていいと言われたらしい。澄子はを畳み、ハルを見た。守るべきが、また増えていた。
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