"昭和34年、上野駅で名前を奪われた少女" 第16話
嘘をついたのは誰か
窓の職員は、都織布から届いた説をに見せた。そこには《佐藤澄子を名乗る者が、採用されなかったことをとしてへ繰り返し押しかけている》とあり、本確認ができないため対応を終したと記されていた。さらに《川鈴は当社の従業員ではない》ともかれていた。澄子はそのを読み、胸の奥がくなった。自分が来たことだけでなく、鈴が働いた々まで、なかったことにされている。
「このをいたは、私たちに度も事を聞いていません」。澄子は声をえて言い、学の採用記録と田辺の証をした。鈴は隣で、支度を受け取ったと、都織布の寮で眠った夜のことを話した。担当者はを別々に呼んで内容を確かめ、言葉が致するところと違うところをに記した。澄子は、違いがあることを恐れず、覚えていない付は覚えていないと答えた。
藤は、賃控除の件と職業紹介の件では確認する先が異なることを説してもらい、それぞれへ資料を提した。学の記録は採用経緯を、与袋は働いた対価を、寮の当番表は鈴の入寮を示している。職員はすぐに結論をさなかったが、都織布の方な説だけで終わらせることはしないと伝えた。澄子は役所をる、初めて自分の話が帳面のへたとじた。
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担当者は澄子たちへ、提した類の控えを持ち帰るよう勧めた。藤は受付を確かめ、どの窓に何をしたかを帳へ記した。澄子は学の証を度して終わりにするつもりだったが、控えがなければ次に別のへ話す、また最初から説しなければならない。役所の机のでがなるのを見て、記録は相を責めるためだけでなく、自分の話を途切れさせないためにもあるとった。
そのの夕方、野は子たちを堂へかせないため、寄宿舎の限をめた。さらにの掲示板には《部の者へ業務の類を見せたは処分する》というが貼られた。子は自分の与袋さえに見せられないのかとになり、同の幸枝と相談した。幸枝は「母ちゃんへ送るが減っている理由をりたいだけなのに」とつぶやき、初めて子の話にを傾けた。
澄子は友達にを辞めろとは言わなかった。辞めればその夜からむところを探さなければならないし、の族も仕送りを待っている。代わりに、各自が受け取った与袋を保管し、控除について説を求めたと相の名を覚えておくよう伝えた。自分が野駅で何もき留めなかったら、里という名さえ忘れていたかもしれない。さな記録が、あとで自分を支えることをっていた。
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週、幸枝がの帳で支度品費の説を求めると、係員は「皆同じだ」と答えた。幸枝は与袋をき、同じ部の子でも額が違うことを指摘した。係員は返事に詰まり、野を呼びにった。その夜、幸枝は寮母に呼びされ、「もう度騒いだら故郷へ帰す」と言われた。松井は鳴らなかったが、帰り際に「与袋は捨てないで」と、ほとんど聞こえない声で付け加えた。
その頃、静は勤止のまま、与の精算も受けていなかった。藤は静にも、働いた数と会社からの連絡を理して相談するよう勧めた。澄子は自分の事件が静の仕事まで奪ったことを申し訳なくったが、静は「帳面を見たのは私。何を話すか決めたのも私です」と答えた。女だけでなく、たちも自分の選択を始めていた。
末、澄子はの守からい伝言を受け取った。《末の帳簿を、に倉庫へ移す》。誰の指示かはかれていなかった。澄子は藤にを見せ、証拠が消えるにどうすればいいか相談した。勝に倉庫へ入ることはできない。だからこそ、正しい続きを急ぐ必があった。
藤は「燃やされる」と決めつけて騒ぐより、保管所と移の付を伝え、必な帳簿を確認してもらう方が確かだと言った。澄子は焦っていたが、守が職を失うような無理をさせたくなかった。
彼はの鍵を預かるだけで、事の帳簿を持ちせるではない。澄子は守への礼をいにき、渡すものの目につかないよう気をつけた。
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