"昭和38年、つなぐなと言われた救急電話" 第2話
なかったことにされた話
夜勤を終えた澄子が交換所をたのは、午をし過ぎてからだった。
はがっていた。
濡れた肌からいがち、商では先の板戸をける音がつずつ響いている。いつもなら豆腐のを通る頃には眠気でがくなるのに、その朝はだけが異様に冴えていた。
へ帰る途、駅の聞販売所にだかりができていた。
「事でがたらしいぞ」
誰かが言った。
澄子はを止めた。
先に貼られた朝刊。
方欄のさな見し。
《奥沢町事現で落事故 作業員》
澄子は聞を部買った。
脇でく。
したは、林勝雄。
歳。
学卒業、母親と歳の妹を支えるため、信濃建株式会社の請け作業員として拡張事に従事していた。
記事にはこうかれていた。
《午頃、夜の巡回をしていた作業員が崖で倒れている林さんを発見。診療所へ運んだが、すでにしていた》
澄子は同じ箇所を度読んだ。
午。
おかしい。
昨夜、藤沢は午1143分の点で言っていた。
歳の男の子。
血が止まらない。
まだ息がある。
記事のとは別なのだろうか。
しかし町で同じ夜に、歳のがもけがをするとは考えにくい。
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澄子は眠ることができなかった。
午を過ぎる頃には再び交換所へ向かっていた。
原は昼勤との引き継ぎを終え、事務机で類を理していた。
「主任」
「何だ。まだ帰ってなかったのか」
澄子は聞を机へ置いた。
「林勝雄君って、昨夜の患者さんですよね」
原は記事を瞥した。
「らん」
「奥沢診療所から話がありました」
「それがどうした」
「記事には午に発見されたっていてあります」
原のが止まった。
「聞のことまで俺に聞くな」
「でも午分には、もう診療所にいたんです」
「宮坂」
原がゆっくり顔をげた。
「昨夜、奥沢診療所からそんな話は来ていない」
澄子は息を止めた。
「何を言ってるんですか」
「聞こえなかったか?」
「回です。私が受けました」
「疲れてたんだろう」
「主任も横にいたでしょう」
「俺はらん」
原は勤務誌を取りした。
い表の帳面。
付ごとに、異常のあった回線や通話、特別な問いわせなどが記載されている。
1112夜勤。
澄子はページへ顔をづけた。
午1017分、松本方面雑音。
午1052分、町役から野方面。
午1121分、商から松本方面。
その次は午014分。
奥沢診療所の記録がない。
「そんな……」
「ほら」
原は帳面を閉じた。
「何もない」
「私が受けたんです」
「証拠は?」
澄子は答えられなかった。
「交換はの通話をで話してはいけない。
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それくらいってるな」
「救急だったんです」
「同じだ」
「がくなっています」
原の目が細くなった。
「だから何だ」
澄子は言葉を失った。
原はちがった。
「族を養いたいなら、忘れろ」
「主任……」
「それから、昨夜の操作について簡単な報告をいてもらう」
「操作?」
「の響で線が定だった」
澄子は顔をげた。
「線は正常でした」
「に定だった」
「私、確認しました」
「おが全部分かるのか」
原の声にはりより、警告があった。
そのから交換所の空気が変わった。
妙子は目をわせなくなった。
昼勤の先輩も、澄子がづけば話をやめた。
誰かが何かをっている。
だが誰もにしない。
夕方。
澄子は自宅のさなちゃぶ台で、聞をもう度広げた。
母の千代が湯呑みを置いた。
「何かあったの?」
「ううん」
「顔悪いよ」
澄子は答えず、聞を畳んだ。
の浩が向かいから記事を覗いた。
「この、ってる」
「え?」
「勝雄さんだよ。学のつ。妹が俺と同じ学にいる」
澄子の指が止まった。
「どんなだった?」
「働き者だったよ。お父さんいないから、く働くって言ってた」
「……そう」
その夜、澄子はさな学ノートを冊した。
表には何もかなかった。
最初のページ。
《 午分》
そこから、覚えている限りすべてをいた。
藤沢医師の言葉。
回の呼びし。
原にを押さえられたこと。
午1157分頃、配盤を見にかされたこと。
戻った、原が「話はなかった」と言ったこと。
最にだけいた。
《聞では午発見。わない》
翌。
勤務へた澄子は、昨まで自分が使っていた席からされた。
「今から昼の番号案内を伝え」
原が言った。
「夜勤は?」
「当分ない」
澄子は主任の顔を見た。
「どうしてですか」
「おには疲れがてる」
それだけだった。
救急話を受けた翌から、澄子は夜の交換台へ触れられなくなった。
そして。
原は澄子に、枚の報告へ署名するよう求めた。
そこには、彼女がらない来事がかれていた。
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