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"昭和38年、つなぐなと言われた救急電話" 第4話

夜ので鳴った音

澄子は診療所からの帰り、まっすぐへ戻らなかった。

町れから事現へ続くを歩いた。

はすでにのへ変わり始めている。濡れた落ち葉が肩へ張りつき、切りかれた斜面には製の柵と「入禁止」の板がっていた。

信濃建株式会社。

県拡張事。

事責任者、原敏夫。

板の名を見た瞬、澄子は胸の奥がくなった。

主任の息子。

歳。

町では「京の専学までた派な息子」とよく聞かされていた。父親の原蔵が何かにつけて自していた物でもある。

「宮坂さん?」

ろから声がした。

振り返る。

作業の男が、煙を持ってっていた。

浦定男。

代の削岩作業員で、交換所にも々話を借りに来る男だった。

「こんなところで何してる」

「ちょっと……」

澄子は迷った。

「林勝雄君のことで聞きたいんです」

浦の表が変わった。

「俺は何もらん」

「まだ何も聞いてません」

男は煙を元へ捨てた。

「帰った方がいい」

「事故は午じゃなかったんですよね」

浦が澄子を見た。

「誰から聞いた」

「答えてください」

「らん」

浦は歩きした。

澄子は追った。

「勝雄君は分には診療所にいました」

男のが止まった。

「だったら事故はそれよりです」

「……」

「夜に発破をしましたか?」

浦が振り返った。

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「声を落とせ」

その反応だけで分だった。

「したんですね」

「俺は言ってない」

「何ですか」

浦は周囲を見た。

誰もいない。

「分過ぎだ」

澄子は息を呑んだ。

「会社は?」

「そんなにやったことになってない」

「どういうですか」

浦は歯をいしばった。

「そのはが続いてた。斜面の状態も悪かった。俺たちはに延ばせって言った」

「誰が続けろと?」

「現が遅れてたんだ」

「原さんですか」

男は答えなかった。

「敏夫さん?」

「もう帰れ」

「勝雄君は発破でけがをしたんですね」

浦は突然、澄子の腕を掴んだ。

「いいか。この町でで正義ぶったって、誰も得しない」

「歳の子がんでいます」

「分かってる!」

声がへ反響した。

浦はすぐをした。

顔を伏せる。

「分かってるから言えないんだ」

「どうして」

「俺にも族がいる」

その言に澄子は何も言えなくなった。

自分と同じだった。

職を失えば族が困る。

だから黙る。

原が澄子に突きつけたのも、その恐怖だった。

浦は背を向けた。

「勝雄は発破点かられていたはずだった」

「はず?」

「点の確認がりなかった。あいつは具箱を取りに戻ってた」

「誰が点したんですか」

返事はない。

「原敏夫さんですか」

浦は歩き始めた。

「もう聞くな」

その夜。

澄子はノートへしい事実をいた。

《事故推定 2250分過ぎ》

《浦証言 夜発破》

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《会社記録では夜発破なし》

《2320分 診療所搬入》

《2343分 病院への話》

《2358分 警察への話》

聞の記事とは何もかも違う。

翌、交換所へ勤すると、自分の机から記具と私物が移されていた。

「宮坂」

原に呼ばれる。

さな事務。

机のには別の類があった。

《事故報告》

原は言った。

「昨の報告、まだ署名してないな」

「できません」

「ならこちらへ署名しろ」

澄子は読んだ。

途で指が止まった。

《午分頃、奥沢診療所より県病院への接続申込あり。担当交換宮坂澄子は回線状態を誤認し、接続を保留した》

「何ですか、これ」

「事実関係を理した」

「私が止めたことになってるじゃないですか」

「実際、つながなかった」

澄子は原を見た。

「主任が止めたんです」

「証できるか?」

「妙子さんもいました」

「瀬は何も見ていないと言っている」

澄子の顔から血の気が引いた。

原は類を指先で押した。

「署名すれば、軽い注で済む」

「しなかったら?」

「正式な調査になる」

「困るのは主任でしょう」

原は初めて笑った。

「本当にそううか?」

澄子は何も言わず、部をた。

廊で妙子とすれ違った。

「妙子さん」

相は目を逸らした。

「あなた、あの夜いたよね」

「らない」

「主任が私のを止めたの見たでしょう」

「見てない」

「妙子さん」

「やめてよ」

妙子は声で言った。

「私まで巻き込まないで」

そのの帰り。

交換所の玄関をると、見らぬ黒い乗用がの向かいにまっていた。

運転席の男が澄子を見ていた。

目がう。

はゆっくりりった。

へ戻ると、母の千代が言った。

「今、男のが来たよ」

澄子のが止まる。

「誰?」

「事会社のだって」

「何て?」

千代は困ったように笑った。

「昔の事故のことを娘さんが調べているなら、やめさせた方がいいって」

まだ事故から週しか経っていなかった。

それなのに男は「昔のこと」と言った。

澄子はその夜、ノートをのには置かなかった。

父が使っていた古い裁縫箱の底板をし、そのへ隠した。

翌朝。

番号案内の席へ座った澄子は、冊の古い接続控えに目を止めた。

そこには、事故の夜。

病院への救急話が拒まれていたのとほぼ同じに、別の本の話が町へ接続されていた。

発信元は――信濃建・奥沢事事務所だった。

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