"義母が倒れた夜、隣人が私を止めた理由" 第2話
切られた線
話は取らなかった。氷さんの指示に従ったというより、のの液体を見た瞬、達也の「今すぐ」という言葉が急に恐ろしくなったのだ。私は携帯話の画面を写真に撮り、着信刻を記録した。氷さんはに触れないよう私をしれた所へ誘導し、自分の携帯で通報内容を確認していた。夜気にさらされた首がえ、靴を履き忘れたことにようやく気づいた。
「救急で運ばれたなら、病院に話すればいいでしょう」。私が言うと、氷さんは頷いた。「そのとおりです。ただし病院が個の搬送報を話で教えるとは限りません。ご本かご族に直接連絡が取れるかも試しましょう」。私は義母の自宅へ話をかけたが応答はなかった。続けて達也の兄の番号を押しかけ、夜に何をどう説すればよいか分からずを止めた。
くからパトカーのエンジン音がづいた。警察官がりてきて、の周囲を照らし、氷さんから事を聞いた。彼は自分の名刺と分を示したうえで、私のにはづかないよう頼んだ。警察官のが私に「どなたかとのことで揉めていますか」と尋ねたとき、私は首を振りかけた。けれど、夫が先から検や点検の話を妙に気にしていたことをいした。
「主が、先ほどこので病院へけと言いました」
広告
。それを告げると、警察官は帳に刻をき込んだ。ブレーキの状態は専に確認させるので、絶対にかさないでほしいという。私はそこで初めて、をらせずに済んだことに堵した。もしあのまま鍵を回していたら、どこで異常に気づけただろう。峠のり坂には、夜にできる所がほとんどない。
警察官が管理を呼び、防犯カメラの映像を確認し始めた。管理は警察官に録画の保方法を尋ねた。私はその様子を見ながら、夫の言葉をい返していた。達也は先週、「夜にを使うことがあったら、鍵はいつもの棚に置いておけ」と言った。私が理由を聞くと、「急な用事ができたら困るだろう」と答えた。何の変哲もない会話だったのに、今は別のを持って聞こえた。私はそのことも警察官に伝え、いした刻と所を帳にき加えた。
の修理費や代のことがをよぎったが、氷さんは「まず原因を確かめるのが先です」と言った。私は自分が普段使っている備の連絡先を探し、警察に渡した。半の点検では異常がなかったはずだが、その記録だけで故の損傷を証できるわけではない。できることは、資料をそろえて専に判断してもらうことだった。
氷さんは私の隣で黙って待っていたが、やがて「しだけお話ししたいことがあります」
広告
と言った。彼の目はいつもの穏やかな隣のものに戻っていた。「私は偶然起きていたわけではありません。あなたの全を確認する仕事で、ここにんでいます」。私は言葉を失った。壇で季節のを育て、のには宅配便を預かってくれたが、何を言っているのだろう。
「誰に頼まれたんですか」「以、あなたが承認した警護契約です。担当者の名と居所はらせないという条件でした」。い当たることがあった。私は、自分のかられて暮らすにあたり、最限の警備だけは続けるという面に署名したのだ。担当者に会う必はないと、私自が言った。その契約を結んだとき、私の名字は佐伯ではなかった。
管理が持ってきた映像に、警察官が目を留めた。付が変わるし、私のへづくが映っていたのだ。画面を覗いた私は、わず管理の腕をつかみそうになった。そこにいた男の歩き方を、私は毎朝、玄関で見送っていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第12話
空港に置き去りにされた妻は、もう帰らない
欧州出張から帰国したゆりを、夫と義母は成田空港へ置き去りにした。「四時間歩いて来い」と笑いながら、彼女を貧しいラーメン屋の娘だと見下して。 彼女は、夫の不倫や会社資金四千八百万円の横領を示す証拠を、すでに揃えていた。 空港から一本の電話をかけた三時間後、取引停止が相次ぎ、夫の会社は大混乱に陥る。嫁姑|夫婦|修羅場1.8万字5 0 -
完結第20話
結婚翌朝、五分遅れの朝食が暴いた秘密
結婚翌朝、朝食が五分遅れただけで、夫から親族全員の前で平手打ちされた管理栄養士の美咲。彼女は謝る代わりに、義父の御膳を床へひっくり返し、「食べさせられません」と告げる。 美咲が遅れたのは、心臓病を患う義父のために味噌汁を作り直していたからだった。義母から渡された“秘伝のタレ”には、義父の薬と組み合わさると命に関わる危険な成分が含まれていた。 しかも瓶の底には、義母自身の筆跡で《服用厳禁/致死性不整脈誘発確認済》と残されていた。単なる嫁いびりではなく、八年前から続く恐ろしい企みが明らかになり、夫と親族の立場は一気に逆転する。怒り|嫁姑|夫婦|裡の顔|修羅場1.9万字5 13 -
完結第13話
夫が毎日3回トイレを磨く理由
結婚五年。紗季は、温厚で家事にも協力的な夫・玲央と、四歳の娘・莉乃と平穏に暮らしていた。ただ一つ奇妙だったのは、夫が毎日三回もトイレを掃除し、誰にも触らせなかったこと。 ある日、法医学者の親友・美代子が、トイレの排水設備から人間の歯と古い血痕の痕跡を発見する。調査を進めると、この家では六年前、玲央と同棲していた婚約者が突然姿を消していた。夫婦|真実|真相1.5万字5 253 -
完結第14話
七年後、屋上で見つかった妻の秘密
1993年、鹿児島。自治会の帳簿を整理していた主婦・ミキは、過去の火災復旧費に不自然な水増しを見つける。調査を始めた直後、彼女は遺書とバッグだけを残して姿を消した。 投身とされた事件から七年後、マンション屋上の封鎖された旧貯水槽から、ミキと一致する人骨が発見される。ミステリー|真相|行方不明2.1万字5 0 -
完結第12話
母に贈った家を狙う親戚夫婦
母への恩返しに建てた家へ帰ると、親戚夫婦が勝手に住み着き、食卓を囲んでいた。しかも二人は近所に「自分たちの新居だ」と触れ回り、家まで奪おうとしていた。 裕子は怒鳴らず、警備会社への一本の電話をきっかけに、入退室記録、録音、登記、映像を着実に集めていく。 これは家を取り戻すだけでなく、断れずに生きてきた母が初めて「ここは私の家です」と声を上げる物語。静かな反撃と、母娘が本当の安心を取り戻す再生の一篇。裡切られた|兄弟姉妹|裡の顔|親子関係|修羅場1.8万字5 2 -
完結第12話
二十六年目の告白
余命わずかな夫・浩司は、妻ゆみに衝撃の告白をする。二十六年前、ゆみが産んだ息子と愛人の子を、病院で密かにすり替えたというのだ。 だが、ゆみはすべてを知っていた。夫の行動を目撃し、名札を元へ戻していたため、浩司が愛人の子だと信じて溺愛してきた誠は、紛れもなくゆみの実子だった。夫婦|真相|親子関係|修羅場|不倫1.7万字5 10 -
完結第16話
赤いガーベラと私の家
母の形見の絵を嫁に勝手に売られ、家事を当然のように押しつけられてきた50歳の愛子。限界を迎えた彼女は、母の保険金で購入した小さな家へ一人で移り住む。 ところが長男夫婦は、新居まで「実家」と決めつけ、家事をしてもらうつもりで強引に引っ越そうとする。愛子は荷物の受け取りを拒み、専門家の助言を得て、同居を認めない意思を書面ではっきり示す。 やがて母の絵は親切な購入者の手によって戻り、愛子は長男夫婦に「この家にあなたたちの部屋はない」と告げる。彼女が去った古い家では、夫も息子夫婦も、これまで愛子が背負っていた家事の重さを初めて知ることになる。兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|相続|金銭問題1.6万字5 16 -
完結第14話
赤ちゃんの声が聞こえる姪が、夫の嘘を見抜いた日
生後一か月の息子を見た六歳の姪・美久は、「赤ちゃん、お父さんにひどいことをしないでって言ってる」と告げる。その言葉に、夫・徹だけが激しく動揺した。 育児をせず、暴言を重ねる夫に違和感を抱き始めた亜鳥。やがて美久が書斎で見つけた封筒から、亜鳥を被保険者、徹を受取人とする高額な生命保険の書類が発見される。 さらに調べると、徹には隠していた借金と別の女性がいた。夫婦|真実|真相|親子関係1.4万字5 1164